彼女と彼のこと
お待たせしました(土下座)
期間が空いてしまいましたが、ブクマを外さないでいてくれた方々に多大な感謝をいたします……!!
今回は少し短いですが、ぜひ御一読ください!
挿絵はヴィクテージの親御さん、natsukiちゃんに描いてもらいました!!左手前が龍くんです!!ありがとう!!!
「……うわっちょっと、なに……!?」
次の日の朝。
ヴィクテージが驚いた声をあげたところから始まった。
「……あんた、何かしたの……?」
「僕は何もしてないよ。施したといえば……」
話しかけてきたヴィクテージに対して、少し素っ気なく僕は返す。
そんな声を上げるのも仕方の無いことだと思う。
何故なら、龍がヴィクテージの上に乗っていたのだから。
じっとヴィクテージを凝視している龍。
『おはようございます、ヴィクテージ』
「!?!?」
「……うん、言葉を話せるように魔法をかけただけかな」
変わったところと言えば、人語を理解し、話す。
そんな『会話魔法』と呼ばれる魔法を、龍にかけたくらい。
しかし僕も驚いた。まさかこんなに礼儀正しく、そしてイケメンボイスだったとは。
CVを担当していただけるなら、梶裕貴さんがいいかな……との中の人の声が。
「降りて、重い」と龍を手でぐいぐい押して避けようとするヴィクテージと『逃げてはいけませんヴィクテージ、私はあなたとお話をしなくてはいけません』と意地でも退かないつもりでいる龍。
「ちょっとあんた! 待って助けて!!」
『いけませんヴィクテージ』
「重い! 分かった逃げないから!!」
『本当ですね?』
「私が嘘をつくとでも言いたいわけあんた……」
どうやら本当らしく、ようやっと龍はヴィクテージの上から離れた。
バッと布団をひけらかし、「どう言った風の吹き回しよ?」と僕に質問してくるヴィクテージ。
「どう言ったって……君と話がしたいって言い出したのはその龍君なんだぞ? というか名前なに? 龍君」
『あ、失礼しました。私に名前はありません故に、お好きにお呼びください』
「分かったわ、じゃあ食材って呼ぶから」
『その名前だけはどうしてもお許しできませんねぇ』
「まぁ後で僕達で決めようよ、流石にずっと龍君って呼んでるのも悪いし」
『有り難きことです』
「逆に礼儀正しすぎて私怖いんだけど」
とはいえ、これは二人の問題だ。僕は二人の話には入り込めない。
入り込まないと言った方が正しいだろう。あまり人のプライバシーに触れてはいけないと母に習ったから。
「まぁとにかく、朝食行こう?」
『はい、行かせていただきます』
「はぁ……まぁ、うん」
****
「まぁ、話せるようになったのですね!」
ハズコットさんが嬉しそうに声をあげる。
今日の朝食は、ちゃんと龍君の分も用意してある。
『はい、昨晩はお騒がせして申し訳ございませんでした』
「とんでもない! こんな礼儀正しくされてしまっては、私も怒ろうにも怒れませんし!」
「いや怒っていいですよ、そいつ本当に凄いことやらかしてますし」
『なんですかヴィクテージ、私の事を言っているのですか?』
「えぇそうよ、悪い?」
「まぁまぁ……」
二人が喧嘩になる寸前で僕は止めに入る。
合わないなぁこの人たち……いや、この人とこの一匹。
「それで? 今日は軍の方に情報を聞きに行くんでしょ?」
「あ、その事なんだけど……。今日もここにもう一泊して、その件は明日に回そうかなぁって」
「え、どうして?」
「だって君と龍君があまりにもお話しないし波長が合わないから……何とかしなきゃと思って」
流石にこの一人と一匹はなんとかして仲良くさせなきゃまずい。
お互い雰囲気が悪くなるだけだし。
「余計なお節介よ。私はこいつとは一緒にいたくないし」
『そこをなんとか考え直していただけませんかねぇヴィクテージ』
「うるっさいわね、窓から投げるわよ」
『たとえ投げられたとしても、私はヴィクテージとお話しなければなりません』
「気安く名前を呼ばないでよ」
『ではなんとお呼びすれば? ヴィクテージが私を食材と申しあげたように、私もヴィクテージを『人間』とお呼びすれば良いのですか?』
「それは……」
ヴィクテージが言葉に詰まり、同時に食事の手も止まった。
頭の回る賢い子だ。口喧嘩なら僕のように負けはしないし、状況を整理する事に向いているだろう。
人間で例えるなら、『事務』の仕事をするサラリーマンと言ったところだ。
そんな一人と一匹を見兼ねたのか、ハズコットさんはとある場所を教えてくれた。
「お二人さん、エズの頂上に行ってみてはいかがですか?」
ここ、フランスのエズ村には、海と住宅街全体が見渡せる眺めのいい所がある。
ただ道がとても複雑で、頂上まで登るのに一苦労なんだとか。
「僕はうーん……行かないでおこう。二人だけで楽しんできてよ」
「えっ」
『分かりました、がろー』
「え、いやいや。なんであんたまで納得してんのよ、普通疑問持たない?」
『持ちません。私も行きたいので』
「じゃあ決まりだね」
『食事終わりましたね? さぁ行きますよヴィクテージ』
「私の意見を聞けぇぇぇえ……!!」
ヴィクテージの言い分を聞かないまま、龍君は彼女を連れて部屋を出ていってしまった。
……まぁ僕も僕で流石に二人を放っておく訳にもいかないので、ハズコットさんの意見もあって、僕は透明魔法を使って二人のあとを追うことにした。
その時はヴィクテージも僕も彼のことをまだなにも知らず驚かされることになるのは……また次のお話。
御一読お疲れ様でした!!
更新はこれからも遅いですが、どうかよろしくおねがいします!!
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