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群れで生きる、人間という名の獣

作者: はなまる

 人間は1人では生きていけない


 よく聞くし、よく書いてあるし、言った事もある。他者と関わる事を必要とする生き物なのだろう。それは群れを作る本能に従い生きる獣から進化した『本能』。遺伝子に組み込まれた情報に他ならない。


 群れを形成し生き残る個体を増やす事を選んだ獣たちは2000万年後もなお、この群れる事に特化した本能に翻弄されている。


 群れの中で評価される事に価値を置く。

 評価されている者を羨み、妬む。良い言い方をすれば憧れる。


 評価された個体は生き残る可能性が高くなる。つまり遺伝子を次代へと繋げるのだ。強くなくても生き残る術を、人間は見出したのだ。


 だから、遺伝子がその存在目的と言える強い渇望を果たす為に群れを作り、そして群れの中で力を持つ事、あるいは有能であるという評価をを望む。


 機関車トーマスという児童向けアニメの中で、機関車たちは「お前は役に立つ機関車だ」という、機関車世界のボスであるトップハム卿の言葉を最上の賛辞として日々働き続ける。ある意味事実歯車である彼らの行動原理なのだが、子供相手の物語としては、なんとも世知辛い世界観だと言わざるを得ない。


 しかし、人間界を振り返って見るとたいして彼らと変わらないのでは、という思いに駆られる。インテリジェンスという武器だか枷だかを得た人類も、有能だという評価を受ける事が自己の存在理由である事は彼らとなんら変わらない。その判断を下すのがトップハム卿ではなく、最終的には自分であるというだけだ。


 若者が無意味に希望に満ちていられるのは、自分の可能性を否定するだけの判断材料がないからだ。





 少しでも長く存在し続けたいという、おのれに刻まれた太古の欲求。遺伝子の唯一の願い。歪んだ存在理由を与えられた私たちは、どこへ向かっているのだろう。


 群れの中での自己の立ち位置を把握する事も生き残る上では、大切なスキルとなる。群れに必要な存在であると思われるように立ち回る。空気を読めないニンゲンはレッテルを貼られ、排除されてゆく。


 獣たちが生き抜く為に研磨した本能は、全身の毛がなくなり二足歩行をはじめた今も、少しも変わらず人間の中にある。


 自分より弱いもの、群れの中で役に立たないものを廃除する事は、自分や群れを守る自浄作用なのだろう。群れ社会では、いじめや仲間外れは当たり前に行われる。


 人間社会において決して褒められた行いではないそれらは、本能として至極まっとうな行動と言える。故に、いじめは絶対になくならない。残念でならないけれど。


 こうして考えると人間は、本能に逆らっている人ほど、『高潔』という評価を受けるのではないだろうか。


 野性動物として、群れを形作る生き物として、生き残る事を目的として研磨されてきた本能は、進化した先で煩悩と呼ばれる。


 弱いものを切り捨てるという考え方は間違っているとおもう。そう思うことで、自分が弱いものとして切り捨てられないよう予防線を張る。


 どこまでも救われない生き物だ。気づいてしまっても、知らないふりをするしかない。


 そういう歪な進化を遂げた獣が地球という舞台のヒエラルキーの頂点にいる。これはこの舞台で生き残る上で正しい選択であったという証しなのだろうか。




 人間は唯一嘘をつく生き物なのだそうだ。ならばもっともっと嘘が上手になれば良い。是非とも自分にも嘘がつけるように進化するべきだと思う。


 どうやって納得すれば良いのか、誰か教えて欲しい。



 本能に抗う事を、本能として上書きされている。生き物としてどうしようもなく歪んだ存在だと嘆かずにはいられない。

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