第79話 真央と圭
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物音を聞きつけた衛兵たちが集まってくる。
王様たちはこの事態に困惑しているようで、言葉をなくしてその場に棒立ちになっている。
フランシスカはケーキを食べながら、圭のことをじっと見つめている。
魔王は魔力を練りながら、圭の方に歩み寄ろうとしている。
俺はその前に身体を滑り込ませて、立ち塞がりながら魔王に訴えた。
「おい、俺の首輪を外せ!」
「首輪を外せばうぬは料理を作らなくなるであろう。それは聞けぬ」
「馬鹿、そんなことを言ってる場合か!」
魔王の胸倉を掴んで俺は言った。
「あいつは俺が止める! そのためには力が必要なんだよ!」
肩越しに振り返り、圭を見る。
圭は突きつけられた衛兵の槍を剣で払いながら身を起こしているところだった。
もたもたしていると衛兵が圭に斬り捨てられる。もはや問答している時間はない。
俺は魔王の目を見据えて、言った。
「約束してやる、隷属の首輪が外れても俺は此処で料理を作る! だから外せ! もう時間がない!」
「…………」
しばしの沈黙の後、魔王の左手が真横にすっと払われた。
びき、と喉元で破砕の音がする。
俺の首に填まっていた隷属の首輪は、粉々になって床に落ちた。
途端に、ぐんと身体の底から力が湧き上がってくるのを感じた。
封じられていた俺の力が、元に戻ったのだ。
「圭!」
俺は駆けた。圭に向かって。
衛兵に斬りかかろうとしていた圭の肩を背後から掴み、そのまま身体を引っ張って引き倒す。
圭の腹の上に馬乗りになり、剣を持った手を上から押さえ込んだ。
「圭、やめろ! 戦う必要はないんだよ!」
「真央……何で止めるんだ! 邪魔するな!」
「お前たちも、此処から出ていけ! こいつは俺が何とかする!」
周囲の衛兵に怒鳴ると、衛兵たちは困惑の表情を浮かべながらも部屋の外に出ていった。
これで、無用な死人が出ることは何とか防ぐことができた。
後は、圭を説得するだけだ。
俺は圭の目をまっすぐ見据えて、言った。
「圭……人間と魔族は一緒に手を取り合って暮らしていけるんだ! 同じ世界で生きる仲間なんだよ!」
「真央、お前は魔族の味方になったのか!? どうして! お前は俺の親友だろ! 俺を裏切ったのか!」
「違う! 俺は、人間と魔族が戦うのは間違ってるって言いたいだけだ! お前が魔王を倒そうとするなら、俺はそれを止めなくちゃならない! 分かってくれよ!」
ぐん、と圭の全身が跳ねる。
圭は下半身を持ち上げた反動を利用して、俺の束縛を振り払ったのだ。
俺は圭の横に転がり、顔から床に突っ伏した。
その隙を突いて、圭は起き上がると魔王に向かって駆けた。
「来たれ、天の光! 鏃となって悪しき者を貫け! ライティングレイ!」
圭の言葉に応え、虚空に光が生まれる。
まずい!
咄嗟に俺は上体を持ち上げて叫んだ。
「全てを飲み込め、時空の孔よ! ダークホール!」
光が光線となって虚空を貫いたのと、俺が生み出した闇の渦が光線を飲み込んだのは同時だった。
闇の渦は光を飲み込んで、消えた。
魔法は不発に終わったが、圭の疾走は止まらない。
彼は魔王との距離を一気に詰めると、手にした剣を力一杯振るった。
「圭! やめろ!」
魔王が杖で圭の剣を受け止める。
俺は立ち上がり、右手に魔力を集中させた。
俺の手中に、一振りの光の剣が現れる。
これは、俺の体内に流れる魔力を束ねて形にしたものだ。鋼の剣と違って折れることはない、俺にとっての究極の武器なのだ。
圭とは全力でぶつかる。きっとそうしなければあいつを止めることはできない。
必ず、説得してみせる!
俺は切り結んでいる二人の元に駆けた。




