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第74話 ラザニア

 十五時を告げる鐘が鳴る。

 腹に響く重厚な音を聞きながら、俺は厨房に入った。

 いよいよだ。人間と魔族の未来を決める大切な晩餐会の料理を作る時間が訪れたのだ。

 晩餐会は十八時に始まるとシーグレットから聞いている。

 それまでに全ての料理を作り、会場に運ばなければならない。

 大丈夫だ。俺ならできる。

 必ず、皆が満足する料理を作ってみせる。

 俺は頬を叩いて気合を入れて、冷蔵庫を開けた。

 取り出したのは、挽き肉。シルキーたちに頼んで作っておいてもらったものだ。

 野菜箱から人参、玉葱、にんにくを出して調理台の上に並べたら、早速調理開始だ。

 ラザニアに掛けるミートソースから作っていくぞ。

 フライパンに油をひいて、みじん切りにしたにんにくを入れて炒める。

 にんにくの香りが出てきたら挽き肉を入れてよく炒め、肉の色が変わったらみじん切りにした人参と玉葱を加えて更に炒める。この時、焦がさないように注意すること。

 水分が飛んだら酒、醤油、コンソメを入れて軽く炒め、カットしたトマトの水煮を加える。

 トマトが馴染んだら水を具が隠れるくらい入れ、ソースとケチャップを加えてよく掻き混ぜながら一気に煮詰めていく。煮詰める途中でトマトを潰すように崩しながらよく混ぜ合わせる。

 水分がなくなってきたら塩と胡椒を加えて味を調える。これでミートソースの完成だ。

 続けてホワイトソースを作るぞ。

 鍋にバターを入れて溶かし、コンソメを加える。

 コンソメが溶けたら小麦粉を少しずつ加えて混ぜ合わせ、ダマがなくなるまで馴染ませる。

 小麦粉が馴染んだら牛乳を数回に分けながら加える。

 よく混ぜて、とろっとしたホワイトソースになったら塩と胡椒で味を付けて、出来上がりだ。

 次に、ラザニア生地に手を加えていく。

 生地を捏ねて滑らかにし、麺棒で一ミリの厚さに伸ばす。

 伸ばしたら器の大きさよりも少し小さめにカットする。これはきっちり測っていなくても、大体で大丈夫だ。

 生地をカットしたら鍋に水を入れて湯を沸かし、大匙一杯くらいの油を入れて、生地を茹でる。生地が浮かんできて透けてきたら茹で上がりだ。

 茹で上がったら生地を水で洗い、水気を切る。

 これでラザニアの材料は全て揃った。いよいよ盛り付けて焼いていくぞ。

 器にバターを塗り、ホワイトソース、ミートソース、生地の順に盛り付けていく。これを繰り返して重ねていく。

 最後にホワイトソース、ミートソースまで盛ったらチーズを載せる。チーズの量は好みだが、気持ち多めの方が美味いかもしれない。

 盛り付けが完了したら石窯に入れて焼く。様子を見ながら表面がカリカリになるように焼くのがポイントだ。

 全体の表面にこんがりと焼き色が付いたらラザニアの完成だ。

「チーズの香ばしい匂いがするな」

 羊皮紙の束を抱えたシーグレットが厨房に入ってきた。

 そろそろ他の料理人たちも集まってくる頃だろう。

 兵士たちの夕飯作りもあるから借りられる手は限られてくるだろうが、スープとサラダ作りは皆にも手伝ってもらおう。

 とりあえず、一番作るのが大変なラザニアが完成して良かった。

 これは会場に運ぶ直前まで魔法で保温をお願いしよう。

「ひょっとして休憩中もずっと料理してたのか? お前」

「ちゃんと休憩はしたよ。疲れた頭じゃ判断力も鈍るからな」

 俺は使った調理器具を流し台に突っ込んだ。

 一度片付けてから次の料理を作ろう。今のままじゃ調理台の上がぐちゃぐちゃだ。

「俺は晩餐会の料理を作るから夕飯作りの方は手伝えないけど、構わないよな?」

「別に構やしねぇよ。そうなってもいいように人数がいるんだからな」

 よし、許可は取った。これで心置きなく晩餐会の方に集中できる。

「いい匂いがするな。腹が減るよ」

「マオー、何作ったんだ?」

 休憩を終えた皆が集まってきた。

 洗い物をしながら、俺は彼らの方に顔を向けて尋ねた。

「誰か、魔法でその料理の保温を頼むよ。このままだと冷めちまう」

「分かった。僕がやっとくね」

 ラザニアをワゴンに並べて、リベロがぶつぶつと魔法を唱え始めた。

 これでラザニアは大丈夫だ。

 次はスープとサラダ、どっちを作ろうか……

 そうだな、保温の必要がないサラダの方が後々楽かもしれない。

 そうしよう。

 洗った調理器具を拭いて片付けて、調理台の上を整えた俺は、次の料理を作るべく足下の野菜箱に手を伸ばした。

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