閑話 満天の星の下で
空に満天の星が浮かんでいる。
四人で焚き火を囲みながら、圭はまるで宝石箱のようなそれを見上げていた。
クロエミナ王国を旅立って、一ヶ月。
遂に魔族の住むアラグレア国が目と鼻の先、というところまで旅は進んでいた。
此処に来るまでに経験してきた多くの魔物との戦闘は、圭を一人前の勇者に成長させた。
今や剣の腕前はアッシュを軽く凌駕し、魔法の腕前はゼフィールを大きく超えていた。
まさに召喚勇者の名に相応しい、誰もが目を見張る成長ぶりであった。
このままいけば、圭は必ず魔王を倒すだろう。彼の仲間たちは、それを僅かも疑ってはいなかった。
「近いうちに、魔族の国に入る」
皆の顔を見つめ、アッシュは真面目な面持ちでそう言った。
「最後の戦いの時が近付いている。気を引き締めていこう」
「そうだね」
焚き火に木の枝を放り込んで、アリアは圭に視線を向けた。
「あたしたちの前に魔王に挑んだ勇者……圭の友達だったんでしょ。その人のためにも、必ずこの戦いに勝たないとね」
「…………」
圭は答えなかった。
彼の様子を怪訝に思ったゼフィールが、彼に声を掛けた。
「ケイさん?」
「……ん?」
圭の視線が空からゼフィールへと向いた。
「何?」
「どうかなさいましたか? 空をじっと見上げたりして」
「うん……」
圭は相槌を打って、再度空を見上げた。
「星が、綺麗だなって」
日本にいた頃は地上の明かりでろくに見えなかった細かな星々の光が、今ははっきりと見える。
これだけ多くの星が浮かんだ空なら、流れ星のひとつも探せば見ることができるかもしれない。
流れ星に願い事なんて、幼い頃にやったきりだったが──
今願えば、願い事は聞き届けられるのだろうか。
「真央と、この空を見たかった。同じこの世界に召喚された人間として、この世界で楽しく生きていきたかったなって思って」
「その者の分まで、頑張ろうじゃないか。そのためにオレたちは此処まで来たんだから」
「うん」
アッシュの言葉に小さく頷いて、圭は呟いた。
「……頑張るよ」
まだ見えぬ街の明かり。それを目指して、彼らは広大な大地を歩む。
彼らがアラグレア国に到着するまで──後、少し。




