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第68話 勇者、思案する

 晩餐会の料理。

 魔王はそれに、目新しさと極上の味を求めているらしい。

 誰も見たことないような、それでいて一度食べたら忘れられないような、そんな料理を作れとシーグレットに命令したというのだ。

 主菜だけではない。副菜。デザート。全てに同じ課題を課したらしい。

 単純に材料に珍しいものを取り入れれば済む問題ではないため、シーグレットは困ってしまったようだ。

 誰も見たことないような料理──それはすなわち、来賓であるクロエミナ国の王様たちにとってもそうである料理でなければならないということであって。

 人間の作る料理など知らない魔族からしてみれば、まさに無理難題であると言えよう。

 シーグレットの話を聞いて、俺は考えた。

 俺が作る異世界の料理なら、その課題をクリアできるんじゃないだろうか。

 俺には異世界の調味料という最強の武器がある。それをふんだんに使って作った料理ならば、皆を唸らせることができるはず。

 問題は、何を作るかだ。

 異世界の料理なら何でもいいのかもしれないが、どうせなら見栄えもそれなりに豪華な料理を作りたい。

 この世界でも比較的馴染みのある洋食を作るか、それとも見た目からして珍しさが際立つ和食で攻めるか──

 ううむ、悩みどころだ。

「流石のマオも悩むか。そりゃそうだな」

 腕を組む俺を見て、シーグレットは短い溜め息をついた。

「大体、珍しくて美味い料理ってアバウトすぎんだよ。肉がいいとか、魚がいいとか、もう少し方向性のある希望を聞きたかったぜ」

 ぶつぶつ言いながら、羊皮紙を調理台の上に広げる。

「仕入れの問題もあるんだからよ……」

 そうか、せっかく料理を決めても肝心の材料がないと作れないんだよな。

 これは、何を作るか早めに決めておかないと材料調達で困ったことになりそうだ。

 欲しいものがすぐに手に入る日本とは違うからな。

 珍しい料理……珍しい料理。

 俺の目が石窯に向いた。

 石窯といえばピザが浮かぶが、ピザは大勢でぱくつく料理だし晩餐会の席に出す料理としては向いてないよな。

 他に焼き物といえば……グラタン。ドリア。ラザニア……

 ……そうだな。ラザニアだったらボリュームあるし晩餐会の席で出してもいいかもな。

 パンにも合うし。

 ラザニアを出すなら、一緒に出す料理はスープがいい。ミネストローネとかが合いそうだ。

 付け合わせにサラダを出せば彩りもばっちりだ。

 何だ、すんなり決まりそうじゃないか。

 無論、この世界で普通に食べられているようなスープやサラダを出すつもりはない。可能な限り日本の食材と同じものを揃えて、日本流の料理を作ろうと思っている。

 よし、イメージが沸いてきたぞ。

 俺は広げられた羊皮紙の山から、何も書かれていないまっさらな一枚を手に取った。

「シーグレット、何か書くものないか?」

「書くもの?」

 シーグレットは胸ポケットのペンを取り出して、俺の手元に放り投げた。

「何か思い付いたのか」

「まあな」

 俺は返事をしながら羊皮紙に案を書いていった。

 俺の書く字は日本語だから俺以外の奴には読めないが、それは別に構わない。これは俺が案を忘れないようにするためのメモだからな。

 紙面を覗き込んでシーグレットが眉間に皺を寄せた。

「……読めねぇ」

「これは俺が使うメモ書きだ。この紙貰うけど構わないよな?」

「ああ」

 よし、案がまとまった。

 早速、これらの料理が作れるかどうか材料の確認を始めよう。

 何だか楽しくなってきたな。

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