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第60話 ムースケーキ

 昼の休憩時間。食器の片付けを終えた俺と何名かの料理人は、休憩に行かずひとつの調理台を囲んでいた。

 これは、これから俺が作るデザートのレシピを彼らに教えるための集まりなのだ。

 簡単なものでもいいからレシピを教えるようにってシーグレットが言ってたからな。

「マオ、本当に僕たちでも作れるの?」

 調理台の上の材料を見つめながらリベロが小首を傾げた。

 他の料理人たちもうんうんと頷いている。

 菓子の材料は普通の料理と比べると見た目が不思議なものが多いからな。彼らがそう思うのも無理はないだろう。

 まあ、何でも慣れることが肝心だ。最初はできなくて当たり前なのだから、不安に思わないで挑戦してみてほしいって思う。

 俺は材料の山からグレープフルーツを手に取って、皆の顔を見回した。

「菓子を作る時は分量をきっちり計ることが重要だ。後は普通の料理とやることはそんなに変わらないから、そんなに身構えなくて大丈夫だぞ」

 これから俺が作ろうと思っているのはムースケーキだ。

 普通のムースを作るよりは手間がかかるけど、その分美味しいから皆には頑張ってレシピを覚えてもらいたい。

「それじゃあ、作っていくからな」

 まずはケーキ部分を作っていくぞ。

 ボウルに小麦粉、牛乳、油を入れて混ぜる。

 卵を割って黄身と白身に分けて、別のボウルに白身を入れて、砂糖を数回に分けて加えてしっかりとしたメレンゲになるまで泡立てていく。この時の泡立てる作業はリベロに頼んで、風魔法でやってもらった。

 メレンゲができたら先程小麦粉と牛乳と油を混ぜたボウルに混ぜ合わせる。この時メレンゲは一気に混ぜずに三分の一くらいずつ加えて馴染ませるように混ぜると上手くいくぞ。

 材料が混ざったら鉄板に広げて均し、石窯で焼く。大体十五分くらい焼けば十分だろう。

 焼けたら石窯から取り出して鉄板から外し、粗熱を取る。

 粗熱を取っている間にムース作りだ。

 グレープフルーツから果肉を取り出して、砂糖を加えて加熱する。

 温まったらゼラチンを加えて溶かしていく。

 ボウルに生クリームを入れて五分立てくらいに泡立てて、泡立ったらグレープフルーツに加えてさっくりと混ぜ合わせる。

 粗熱を取ったケーキを半分に切って、一方にムースをたっぷりと載せ、もう一方のケーキをその上に重ねる。

 これで、完成。後は冷蔵庫で冷やすだけだ。

 どうだ、そこまで複雑な作業じゃなかっただろう?

 冷蔵庫の扉を閉じて、俺は皆の方に振り返った。

「これで完成だ。どうだ、そこまで難しい料理じゃなかっただろ?」

「殆ど混ぜる作業でしたね」

 調理台の上に残った小麦粉に目を向けてシルキーがそう感想を述べた。

「これなら、私たちにも作れそうです」

「今作った料理はいつ頃食べられるの?」

 ちらちらと冷蔵庫を見ながら尋ねてくるリベロ。

「大体一時間もすれば固まるから、そうしたら食えるぞ」

「一時間かぁ」

 そっか、と彼は言った。

「それくらいの時間でいいなら王様に出せるね。せっかく作った料理だもの、王様にも食べてもらいたいじゃない?」

 ……そうか、一時間後っていえば丁度おやつの時間だったな。

 厨房のおやつにするつもりだったけど、魔王に出してやってもいいか。

 フランシスカも甘味甘味って騒いでたし、丁度いいや。

「今回はマオが作るのを見学してただけだけど、次からは自分たちで作るよ。その時になったら、また作るコツを教えてほしいな」

「おう。いいぞ」

 彼らは真面目に作り方を学んでたみたいだし、多分俺の助言がなくても同じように作れるようになってるんじゃないかって思う。

 俺以外にもデザート作りができる奴が増えるのは有難いね。

「さて、片付けるか。休憩時間全部を菓子作りで潰すわけにもいかないからな」

 使用済みの道具を流し台に放り込んで、俺は皆に声を掛けた。

 後片付けは皆で協力してやったお陰ですぐに終わったよ。

 後は、ムースケーキができたら皆で味見するだけだな。楽しみだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 図々しいフランシスカさん。 マオの料理は一体おいくら万円?
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