第32話 兵士を鼓舞する料理
その日は朝早くから料理に追われていた。
朝早くから料理をしているのはいつものことなんだけど、今日は普段以上に忙しかった。
屋外演習に出る兵士たちのための弁当を朝飯作りと平行して作ることになっていたからだ。
厨房は、朝飯を作る奴と弁当を作る奴とに分かれて動いていた。
俺が担当したのは弁当の方だ。
と言うのも、カーミラが俺に弁当を作れと言ったからなのだが。
兵を鼓舞するような弁当……って、具体的にどんなものを作ればいいのやら。
大体、アバウトすぎるんだよな。
肉料理にしてほしいとか野菜料理にしてほしいとか、ある程度の指標があればメニューもすぐに思い浮かぶのに。
「何作るか決めた?」
鍋の様子を見ながらリベロが俺に尋ねてくる。
少しは自分でも考えるとかしてくれよ。頼むから。
「うーん……」
俺は腕を組んで唸るばかりだった。
先手を打って米だけは炊いてもらっているので、米を使った料理にすることだけは決まっている。
米、米、米……おにぎりにするにしても、普通のやつを作ったんじゃカーミラは納得しないだろうからな。
手軽に食べられて、それでいて満足するような料理は……
朝飯組は肉を使った料理にするとか言っていて、さっきから肉をひたすら焼くことに従事している。
肉と、米。味付け次第だが合わないことはないんだよな。
肉……醤油があるし、肉巻きおにぎりなんてのはどうだろう。
肉を巻くだけの簡単な料理だし、手をちょこっと加えれば十分に食いでのある一品になる。
手伝いの奴にはひたすら塊肉を薄く切ってもらって、俺ともう一人くらいでおにぎりを作っていけばいいか。
そうしよう。
俺は冷蔵室に行って、豚肉っぽい肉質の塊肉とチーズを取ってきた。
調理台の上にそれらをどんと置いて、弁当作りを担当している料理人たちを呼ぶ。
彼らに薄切り肉を作るよう指示を出して、動いてもらっている間に俺は調味料作りに取りかかる。
今回作る調味料はみりんだ。
用意するものは、酒と砂糖。
本当は日本酒があればいいんだけど、この世界には日本酒なんてないから料理用の酒を使う。
作り方は簡単、酒に砂糖を入れてひたすら混ぜるだけ。砂糖のざらざらがなくなるまでよく溶かせば完成だ。
みりんは和食作りには欠かせない調味料だし、代用品は簡単に作ることができるから、いざという時のためにレシピを覚えておくと便利だぞ。
みりん作りを終えたら、おにぎり作りの準備をする。
チーズを削って細かくしたものを大量に作ったら、下準備は完了だ。
さあ、握っていくぞ。




