表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/87

第27話 コンソメ、完成する

 冷蔵庫から取り出したざるの中を見下ろして、俺は頷いた。

 ざるの中にあるのは、一週間前に俺が干した野菜だ。

 どれもからからに乾いており、力を加えるとぱきんと折れる。

 これだけ乾いてれば、十分だろう。美味しいコンソメを作ることができるぞ。

 俺は調理台にざるを持って行って、調味料の準備をした。

 塩。胡椒。ローリエ。

 できたコンソメを入れるためのガラスの瓶も用意した。

「あれ、その野菜干すのはもういいの?」

 洗った食器を棚に戻しながらリベロが尋ねてくる。

 ああ、と俺は頷いた。

「十分に乾いたからな。ようやく続きの作業ができるよ」

 後は乾かした野菜を細かく砕いて調味料と混ぜるだけなのだが、この細かくするという作業が大変なのだ。

 ミンサーがあれば簡単にできるのだが、此処にはそんな便利な道具などない。

 そこで。

「リベロ、手伝ってくれるか? この作業、俺一人だと時間がかかって大変なんだよ」

「うん。いいよ」

 リベロに頼んで、風魔法で材料を粉微塵にしてもらった。

 俺は包丁を使って細切れにする要領で材料を刻んでいったよ。

 材料を全て細かくし終えたら、塩と胡椒、野菜同様に細かくしたローリエを加えて、よく混ぜる。

 混ぜた材料を瓶に入れて──

「よし、完成だ」

「これがコンソメ?」

 瓶の中身を覗き込んで、リベロはふぅんと鼻を鳴らした。

「これを使うと料理がもっと美味しくなるんでしょ? どんな料理にも使えるの?」

「大抵の料理には使えるよ」

 和食に使うことは殆どないが、この世界ではポピュラーな洋風の味付けの料理の大半には使えると思う。

 よく使うだろうと思って大量に作ったから、すぐになくなることはないはずだ。

「晩御飯が楽しみだなぁ」

 リベロは笑ってそう言いながら、ざるを洗い始めた。

 そうだな、早速次の料理から使ってもいいかもしれない。

 シーグレットが作ると言った料理に使えるかどうかを見て、使えそうなら積極的に使っていくことにしよう。

 俺は瓶の蓋を閉めて、調味料が並んでいる棚にそれを置いた。

「何だ、またお前たちか。休憩時間なのに仕事熱心だな」

 羊皮紙の束を抱えたシーグレットが厨房に入ってきた。

「ほれ、料理してねぇんならさっさと出ていけ。しっかり休憩するのもプロの料理人の務めだぞ」

 しっしっ、と手を振って俺たちを追い立てるシーグレット。

 俺はリベロの肩を叩いて、言った。

「休憩しろってさ。行こうか、リベロ」

「うん、これだけ片付けるから待って」

 洗ったざるを拭いて、調理台の下に片付けるリベロ。

 歩き出した俺を追って、ぱたぱたと小走りで厨房を出てきた。

「お待たせ。休憩時間は何する?」

「特に何も考えてないな」

「あ、それなら蔵書室に行こうよ。この前、凄く面白い本を見つけたんだよ」

「本はパスだな。俺、魔族の字読めないし」

「そっかぁ……あ、それならさ、字の勉強しない? 僕教えてあげるから」

「えー?」

 この遣り取り。魔王城は今日も平和だなって思った。

 この瞬間にも、外では人間と魔族が激しい戦いを繰り広げてるんだろうけど──

 つい、戦いのことを忘れたくなる。そんな雰囲気が此処にはあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ