helloWorld!
思い付きで書き始めた作品です。
スマホ買い替えたら思いつきました。
まったく、人生とはままならないものである。
俺は今、無職だ。
29歳、無職のおっさんだ。
そして今、お先真っ暗闇なのだ。
普通に高校を卒業して、普通に企業に就職して、普通の生活をする。
そして普通に一生を終える。
そんな人生プランは1か月前にぶっ壊れてしまった。なんとまぁ、就職した企業が倒産したのだ。小さな会社だったが、居心地は良かった。社長も上司も良い人ばっかりだったが、不況の煽りを受けてそれはまああっさり潰れちゃったよ。
退職金は、雀の涙ほどしか貰え無かった。まあ、社長が泣きそうな顔してたから少ししか貰わなかったんだけどな。
しかも、毎日遊びまくっていたせいで、貯金なんかあるわけがない。通帳に書かれた数字を見るのすら恐怖だ。おお、怖い怖い。
そして、頼る人もいない。
家族からは、遊び過ぎて勘当された。
唯一、俺の兄貴だけは俺を家族と思っていてくれたのだが……。
1か月前、死んだ。心臓麻痺らしい、確かに兄貴は生まれつき体が弱かったけど、こんな最後になるとは想像もつかなかった。
最後に話くらいしたかったなぁ……どうでもいい話がしたかった。最近何食ったよとかあのAV嬢いいよねとか、ほんとくだらない話が。
もう、できないんだよなぁ……。
金無し、職無し、家族無し。
そして唯一心から信頼していた兄貴まで無くした。そのせいか、最近は何しても全く楽しく感じない。何を食っても味がしない。見える景色は全て灰色に見えた。
もう、疲れた。気が付くと、100均でビニールの紐を買ってきてドアの手すりに結んでいた。ああ、首吊ろうとしてたのか。
まあ、いいや。死んでも悲しむ人はもういない。いたっけ?そんな奴は誰一人思いつかないや。
「じゃあ、お疲れ様。俺よ」
そう呟いて、ビニールの輪っかに頭を通したその時。
俺のスマホの着信音が鳴った、SNSアプリ『ラドン』の着信音だった。
はて?俺に連絡とな。俺と連絡取りたい奴なんてまだいたのか。誰だ?
死ぬ前に見てみるか……そんな軽い気持ちでスマホを確認する。
画面を見た瞬間、息をのんだ。
「……兄貴?!」
死んだはずの兄貴からだった。なんでだ?家族の誰かが兄貴のスマホでも使ってるのか?だとしたら何故だ。
急いで内容を確認すると、
『渡したいものがある、ここに来てくれないか』
死人からのメッセージは、実に簡潔なものだった。
家族の奴らだと、こんなメッセージは送ってこない。あいつ等が送ってくるのは大体罵詈雑言ぐらいだ。こないだなんて姉貴から『まだ生きてんの?未練たらしいわね』って送られてきたし。
じゃあ、兄貴は死んでなかった?
いや、ありえない。
この目でちゃんと見たんだ。
棺の中で、眠る様に死んでいる兄貴を。
火葬され、骨になるまで見届けたんだ。
兄貴の骨を拾う時、涙が止まらなかった。
きっと誰かが、兄貴のアカウントを乗っ取ってるんだろう。
そう思うと、俺の胸の奥底で何かがカッと燃え滾った気がした。
死人への冒涜、それも俺の身内であり俺の一番の理解者である兄貴を、誰かが冒涜しやがった。
そう思うと、体は自然に動き出していた。
自殺何てしてる場合じゃない、兄貴を冒涜したやつをぶっ殺してやる。
気が付くと、台所から包丁を取って、ジャケットの内側に隠して部屋を飛び出していた。
送られてきたメッセージには、ご丁寧に住所まで書かれていた。スマホの地図アプリに住所を打ち込み、急いでその場所へ向かった。