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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第5章 VRのその先へ
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彼の帰還

「な「御免なさいねぇ、でも此処で死んでくれない?」」


誰かが言おうとした「何をしてるんだ」という台詞を言わせぬまま、女は唐突に靴を地面に叩き始めた。


トン トン トトン トン トン トトン


一定のリズムに合わせて鳴るそれは、彼女がテンポを取っている事が分かる。


大きく手を振りながらターン。3歩ほどのステップと共に再びターンを決める。

そんな動作から始まったそれは、誰の目から見てもダンスだと分かった。それに攻略班が困惑する中、広い空間にタップ音が鳴り響く。


そして一通り踊り終わったその瞬間、彼らは驚きに目を剥く事になる。


「武器が……浮いている⁈」


そう、彼女の周辺に浮いて居た無数の武器が浮いているのだ。種類も大きさも関係なく、少し離れた所にうずくまっている二人組みが持っている物を除き全てが、

まるで重力を感じさせない様に浮き、浮遊し始めたのだ。

更に女性がアイテムボックスから取り出した様々な剣も浮き始めた結果、倒れるプレイヤー達の中心に立つ、周りに無数の武器を浮遊させる女性の図がそこにあった。


「アン」


肩より上の位置に構えていた右手を、横に払う。そしてそれに反応するように、彼女の右側周辺に浮遊していた剣群も動く。


「ドゥ」


くるりとターンすると共に、周辺の武器も円を描いて回り出す。


「トロワ‼︎」


どうやら彼女の動きに連動しているらしい浮遊しているそれは、一通り回った後に攻略班に向けられた指先に反応し、動き出す。


ビュッと音を立てながら向けられた指先に、まるで矢の様に飛び出す剣群。しかもその数は尋常ではなく、恐らく一発一発が致命傷レベルの攻撃。


「っ、回避‼︎」


少し遅れての回避運動。しかし剣群の移動速度は早く、かなりの数に直撃する。


「アン」

ある者は腹を貫かれ


「ドゥ」

ある者は四肢に深く突き刺さされ


「トロワ」

またある者は無残にも頭部を貫かれる。


独特のステップと共に、華麗な足捌きで繰り出されるそれは、見る人の目を奪う程で。しかしそれと裏腹に、繰り出される攻撃は鋭利で、ダンスに連動して動いているとは思えない程の正確さを見せる。

掛け声と共に、身振りそぶりに反応して動く武器は一定の間隔で並び、射出、又はカーブを描きながら放たれる。


「っ、近づく事さえ出来ないとはーー」


今まで100層もの敵を共に蹴散らしてきた攻略班の仲間が次々と倒れていく中、タケルはタケとヤマト、レン、ディクヌ、バウレン達と必死で迫り来る武器を撃退していた。しかし、射出される武器のスピードは並大抵の物でなく弾く、又は弾道を逸らすだけで精一杯で近づく事すら難しい。

メカタ達が後ろからスキルで支援してくれているが、このままではジリ貧だと歯噛みする。実際、最初は無造作、無差別に放たれていた武器が、タケルたち攻略班の数を減らし始めた事で、未だ残っている彼らに集中して撃たれ始めている。

故に、タケルは覚悟を決める事にした。


「全てを焼き尽くす……」


武器を弾いていた手を止め、胸の前に掲げる。剣先は真っ直ぐ上へ、騎士が剣を捧げる答礼の様に。

そしてそれを見たバウレンもまた、出し惜しみしない様に、スキル『瞬装者』を使ってある武器を取り出した。


「それは……」


太陽のレリーフが施された、銀色の刀身を持つ聖剣。青領土での一悶着の結果、青領土に進呈される事になった太陽聖剣(ガラティーン)の姿が、そこにあった。

空を見上げれば、そこには空中回廊の透明な床を貫通する、サンサンと降り注ぐ太陽がある。つまり、アビリティ『太陽の加護』による恩恵が受けられるという事。

おそらくはこの場で最高の戦力だと思われる二振り。


「あんな事件を起こし俺だが、これで償いになると良いんだが」


申し訳なさそうな顔でそう言うバウレンに、タケルはフッと微笑むと、気にするなとばかりに頷く。


「『都牟刈大刀(ツムガリノタチ)』」


伝承に置いて、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)の別名とも言われるその名を口にしながら、剣を掲げる。


「『太陽聖剣(ガラティーン)起動(ウェイクアップ)‼︎」


太陽のレリーフに手を添え、スイッチを入れる。それに反応する様に銀色の刀身を黄金に輝かせるそれを、同じく掲げ。


振り下ろす。


「塵と化せぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

全てを焼き尽くす炎が


「焼き果てろぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

太陽フレアの如き炎熱と共に


放たれた。

辺り一帯が焦土と化してしまいそうなレベルの熱量が、二人から放たれる。


直前まで射出された武器を溶解させ、二つの炎は女性目掛けて放たれる。威力的に申し分ない、それどころか過剰威力とも言える熱力に、大技を放った事で息を乱しているタケルとバウレンは手応えを感じていた。


そう、恐らくこの場で放てるだろう最大火力を使ったのだ。これくらいで終わってもらっては困る。

しかし女は、


「ふん」


それを一瞥すると、他人には見えないアイテムボックスを弄る。一体何を、と思うタケル達を他所に、女は。


天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ) 展開

太陽聖剣(ガラティーン)」 展開


突如として放たれた、それと同等、又はそれ以上の熱量を持った攻撃。


一拍の爆発と共に、エネルギーが相殺される。爆発の際に発せられた煙が晴れたその先にいる女の目の前には、タケルバウレンが持っている物と瓜二つ、いや。


「私は全ての武器を持っている。

業物も、神剣も、宝剣も、名剣も、妖刀も、呪剣も魔剣も全て。

あなた達が持っている物とはまた別に。私は踊る武器庫。全ての(つるぎ)は、私の手元にある」


浮遊する剣を操り、壁を作る様に一面に展開。まるで見せびらかす様に浮くその中に、タケルが使っている天叢雲剣、ナナシが使っていた太刀、更には白領土の勇者だけが持っている筈の黄金の聖剣、エクスカリバーの姿もある。


「改めて自己紹介させて貰うわね。

私の名前はフランソワ。神から無限の武器を貰い賜った者よ」


浮遊していた武器がジャキっと音を立てて、その剣先を彼らへと向ける。演説めいた自己紹介と共に放たれたのは、強力な攻撃でも、精神的な何かでもない。聞くだけで「彼女には勝てない」と思わせるたった一つの事実だった。






「かはっ」


うめき声をあげながら、また一人倒れていく。しかもその倒れた人物がタケルなのだから、未だ奮闘中のタケは驚きと悔しさに襲われる。


あれから数分。

戦う意思をへし折られそうな事実の露見から、女改めフランソワの攻撃は更に過激化していった。

無数に放たれる、終わりの見えない武器の射出攻撃。奇妙な軌道を描いて放たれるそれを、タケル達は弾いていったのだが、時間が経つたびに一人、また一人と倒れていったのだ。


周りを見渡せば、気付けば立っていたのはタケ一人だった。後ろには後方支援に徹していたサヤ達が倒れ伏せており、横ではレンやタケルが事切れるように倒れており、一種の地獄絵図とさえ思える様な景色だ。


「あら、貴方が最後? さっさと終わらせてあげる」


フランソワの言葉と共に、頭上に10本程の剣が浮遊する。

ああ、終わりなんだな。とタケは確信する。無限に放たれる武器に、恐らく全ての神器を所有している。

これに勝つくらいなら、RPGのラスボスを倒した方が早いだろう。と思いつつ、既に弾こうとする意欲さえ湧かない身体に鞭を入れる。


「あら、まだやるつもり?」


膝はガクガクと揺れ、立つ事すらおぼつかない。構えた大剣を持つ手も震えており、疲労で倒れる一歩手前という所。

それでも尚、倒れない。消え掛ける意識をどうにか留め、目の前のフランソワを睨む。


「さっさと終わりなさい‼︎」


それが気に入らなかったのか、声を荒げるフランソワ。共に放たれたのは、10本にも満たない武器の射出。

放たれたそれに歯噛みしながらも、大剣をもう一度構え直す。

絶体絶命のピンチ。そこに


「良く耐えた。後は任せろ」


一陣の風が吹く。

冷たくも心地良いそれと共に、タケの目の前に現れたのは。


新しく見繕った黒いマントに身を包み、鐔のない抜き身の刀を構えた、タケの戦友だった。

どうも、気まぐれです。

今回も少なく感じますが、どうかご容赦を。2月からはもう少し暇が出来るので、少しづつストーリーを進めたいと思います。


それでは次回更新はまた来週

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