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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第5章 VRのその先へ
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二歩目を進み、三歩目へ

時間は少し遡り、イベント開始から5分程前。

タケは一人、サブアカウントでログインしていたヤスと会話していた。

前回の戦争でアカウントが凍結された代償は大きく、サブアカウントがあったとは言え最前線を張れるわけではないヤス。

故に攻略組に入る事は出来なかったものの、その前にタケと話がしたかったと足を運んだのだ。

そしてその内容とは


「それで、彼がそのダンだと」


そう言いながら目線をズラし、サヤ達と談笑する老人をみやるヤス。あの後、ナナシに言われて老人に付き合う際、名前が無ければ不便だと『ダン』と名乗った老人。

当初の目的通り残り2つのアイテム探し始めた一行は、戦争システム開始までの時間で2つ目を発見。最後の一つは未だ見つからずだ。

ダンによれば、最後の一つは今まで行ったことがない場所にあると言う。その結果、その最後のアイテムは繋がりの塔、又は空中回廊にあるのではないかと言う結論に至った。故にダンも同行しているのだ。


タケに視線を戻すヤス。そして発した言葉は……


「空中回廊に僕も連れてってよね」


期待を込めた眼差しで、タケを見やる。それに苦笑を漏らしつつタケは、


「分かってますよ」


なんの迷いもなく、約束と共に拳を合わせるのだった。



それから数分後、


『イベント開始(スタート)


宙に上がった合図と共に、攻略組が塔に入る。これから手筈通り居残り組に領土の守りを任せ、自分達は攻略に専念する様になっている。


「それじゃあヤスさん。言ってきます」

「うん。気を付けて」


そう言うタケを、笑顔で見送るヤス。約束を忘れないでよねと言い加え、それにはははと返したタケを見ながら、


「やっぱり、僕も行きたかったなぁ」


名残惜しそうに、そう呟くのだった。






塔に入るが、既に人の気配はない。

どうやら上の階に登ったらしいと走るスピードをあげれば、上へと繋がる階段の途中にタケを待つサヤ達の姿が見えた。


壁に背中を付き、その長い髪を弄るシズ。腕を前に、後ろにとウロウロさせるサヤ。そして、数日前からナナシの勧めでパーティを組み始めた老人、ダンの三人だ。


タケルは領主としてレンやメカタ達と最前線を指揮している為、そこには居ない。近付くタケの姿に「早く来~い」というサヤの声にクスッと微笑みを零しながら、タケは階段を登っていった。


これから待つ戦闘への緊張と、その果てに待つ景色を夢見て。



攻略は、思ったより楽な結果となった。

それもその筈、赤領土と青領土の精鋭達が一同に介しているのだ。並のエネミーが叶うはずもない。更に調整の影響か難易度も少し変更されており、前の繋がりの塔よりも難易度は比較的に低い。

故に攻略組は軽く突破していったのだが……


繋がりの塔、50層。

そこに居たのは、かつて繋がりの塔攻略にて24層で出会った異形の怪物。虎とライオン、そしてチーターの三つの顔を持ち、人間の胴体からは大蛇の尾が伸びる。


GuuoooooooooooooOOOOOOOOOOOO!!!!!!


かつての25層で戦い、為す術もなく散った相手。マンティコアが、咆哮を上げていた。


「戦闘用意っ‼︎」


タケルの声に全員が武器を取り出す。そしていざ始まろうとしたその時ーー


「此奴は待ってくれ。タケルさん」


タケからの制止に、全員が足を止め、彼を見やる。タケの脳裏に映るのは、初めての死亡時の事。何も出来ず、ただ蹂躙されただけの記憶は今でもトラウマに等しい。


だからーー


ーーだから何だ?


いつまでも引きずってはいけないと、心を奮い立たせる。

トラウマが何だ。呑まれるな。逆に呑め。


ーーふと、心の奥底を縛っていた鎖が、音を立てて千切れた気がした。


「動きを止めるよ‼︎」


タケル達が止まったのも関係なく、サヤが矢を放つ。

前はその皮に弾かれたそれは、今度こそマンティコアを捉える。放たれた矢は三本。

矢はそれぞれ大蛇、虎、チーターを射り、その動きを止める。


「行って、タケ‼︎」


出来た隙を、見逃さずにスキルを撃つ。放ったスキルの効果は、次に与えるダメージを1.8倍にする『確殺印』。


そしてトドメは勿論。


「食らいやがれ、オラァ‼︎」


タケが、肩に背負った大剣を振り下ろす。その一撃は、マンティコアの胴体を見事に捉え、到達。肉に食い込む。しかし、これだけでは終わらない。


「『過剰発動(オーバーロード)』‼︎」


スキル『過剰発動(オーバーロード)』。

幾たびの戦いを得てタケが習得したこのスキルは、対象に斬りつけると同時に内蔵したエネルギーを放つと言うもの。

青の領土で放った『幻想大剣 アニヒレーター』が広範囲のレーザーである事に対し、これは全エネルギーを一体に収束させて放つスキルだ。


それが今、放たれる。

斬りつけた際に生まれた傷口から光が溢れ、飛び散る。それはまるで、大地から命が芽吹く瞬間の様。斬撃と共に放たれたエネルギーは、溢れんばかりの光となって放出された。


Ooohhhhh.....


弱った声と共に、崩れ落ちる巨体。放たれた光に、肉体が消滅する際に発する光が混じる。スキルを併用したとは言え、事実上たった一撃でマンティコアは倒された。

その事実に全員が驚きを隠せない中、スキルディレイにより息が少し上がっているタケが振り向く。


「どうよ?」


援護をしてくれた二人に向けるのは、トラウマを克服した事から生まれた、今までにない程のドヤ顔。

それに二人は、


「んっ‼︎」

「よっしゃー‼︎」


これまた盛大な笑みを見せ、ハイタッチを交わす。パンッといい音を鳴らし、喜び合う3人。いきなりの展開に周りが付いていけなく、ただ立ち尽くす事しか出来ない中、タケルは感慨にふけっていた。


「リベンジおめでとう」


周りには聞こえない程の小声で、タケ達に賞賛の声を掛ける。

タケルは、彼等がマンティコア相手に初めての死を味わった事を知っている。故にタケの静止の声に即座に理由を察し、マンティコアの戦闘に介入しなかったのだ。


人間は、成長したという事を自覚する必要あるタケルは考えている。それが例えしょうもない事でも、成長したのだと自覚すれば精神的にも変化が現れ、それが必ずプラスに行くのだ。


一歩しか進めなかった次の日、二歩進めた事を実感すれば、それは三歩目への自信に繋がる。


だからこそ、タケ達が前へと進めた事にタケルは嬉しさを感じたのだ。それは我が子の成長を見守る父親とはまた違った、兄貴分の様な感覚。


そんな謎の感覚に驚きながらも、それが事実なのだと理解するタケル。そして今だ喜び合う3人に向かって歩き出した。


まだ攻略は終わっていない。

先に歩き出す為に。

その三歩目を踏み出す為に。




それから1時間程。

疲労感を交代交代で回復させつつ、タケ達は遂に100層のボスを倒す。光になって消えたボスの後ろに現れたのは、目指す空中回廊へと続く階段。


それに歓喜の声を上げる攻略班のメンバー達。うなぎ登りのテンションのまま階段を昇った彼らは、


「全く、少しは骨のある子も居たけど、結局は雑魚ね……あら⁇」


絶句した。

階段を登った先にあったのは、広い円形状の部屋。その中心には一人の女性が立って居た。周りに無数の倒れるプレイヤーに囲まれながら。その中から、1組の支え合う男女を残して全員が瀕死。


余りにも非現実的な景色。

中心に立つ女性は鉄色のプレートメイルを着込み、茶の掛かった長い髪をその細い指先で弄りながら、そんな事を言う。そして攻略組の存在を確認した瞬間。


「あらあら、あらあらあら。あららららららららららら⁇」


嗤った。

その口の端をニカァっと吊り上げ、三日月になった口元を隠そうともせずに笑みを見せる。


出た微笑みは可愛らしく、狂気すらも感じさせるその笑みは、正直言って可笑しいを通り越して狂っているとすら解釈出来る。


「さあ、宴を始めましょう。簡単には壊れないでね⁇」


狂気が、絶望が今、その姿を見せた。

どうも、気まぐれです。

やっと描きたかった所まで書けました。予定では後6話以内には完結させたい所です。

まぁ、ここ最近は忙しいので6話で描ききれるのか怪しい所ですが。


とりあえず、これからも最後まで宜しくお願いします

次回更新は来週に。

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