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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第1章 物語の始まり
6/70

現れた理不尽の体現者

ー1ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

--Monster skill: pressure howl--

叫びと共に放たれる重圧。敵を怯ませ、動きを止める『強者の咆哮』が、ナナシ達の動きを止めた。

動きを止めた時間は体感時間にして約1秒。

だが、そのたったの1秒が命取りになる事をタケは身をもって知っている


「やべっ」

声が出るが、もう遅い。

一瞬にしてタケに肉薄したマンティコアの3つの頭に光が溜まり、スキルの発動を予知させる。


--Monster skill: triple bite--

3つの頭を持つと言うアドバンテージを活かした、三連撃の嚙みつきがタケを襲う。


「なろっ」

大剣を振るい、先ずは一発目を弾く。

「『パワースラッシュ』‼︎」

そして間入れずスキルを発動、二発目を半ば強引に弾いた。

だが相手は三連撃。残り一発を弾けず、その牙がタケの肩に食い込む。


「痛ってえええええ‼︎」

流石に痛みを完璧にフィードバックはしないが、やはり肩を丸ごと食われる痛みは想像を絶するらしい。

しかしマンティコアは声を上げることすら許さない。続く腕の一撃がタケに触れた瞬間、


Name: タケ

HP:0000/3540

Status:正常


タケのHPが0になり、光となって消えた。

そう、この瞬間、タケはこのゲームで死んだのだ。


目の前の光景に、ナナシの動機は早くなる。

脳に過剰な血が流れ、思考が停止する感覚。

初めて感じた『怒り』という感情が、ナナシに正常な判断を怠らせる。

そしてそれが頭で分かっている。

だが何故なのだろうか。自分が大声を上げながらマンティコアに突撃するのは。


このゲームで人は実際に死なない。

後でリスポーンポイントである宿で復活するだけなのに。

何故だろうーーー


マンティコアを殺したくてしょうがない。


ー2ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

余りのマンティコアの強さに、シズ達の顔が驚きに歪む。強くなったと思っていた。勝てると思っていた。

しかし現実はどうだろう。

目の前にはタケをたった数手で倒す化け物。

勝てるはずが無い。

そう思った。


--Monster skill: pressure howl--

再び雄叫びが放たれ、もう一度シズの動きを止める。

そして駄目押しの一撃。回転する様にして放たれた致命の一撃は、タケより防御力が低い2人のHPをーーー


Name:シズ

HP:0000/2304


Name: サヤ

HP:0000/2098


容易く切り裂いた。


「ああああぁぁぁぁああぁぁあぁあぁ‼︎」

ナナシの叫びが木霊する。

怒りのボルテージは更に高まり、遂に前に一歩を踏み出した。


迎撃する様に繰り出された一撃を、最小限の動きで放たれた拳が止める。

刀から鞘を引き、距離感を狂わせる居合の一撃が放たれる。

刀身がマンティコアにあたりそのHPを削るたび、その強靭な皮膚に弾かれるのを利用して、返しの一撃を与える。

一瞬の交錯で2撃を入れ、続く3撃、4撃を撃ち込む。



「吹き……飛べぇ!」

まるマシンガンの様に、刀による攻撃が終わらない。そして駄目押しとばかりに力を貯めた回転斬りを放つ。



余りの数の連撃に、マンティコアの身体が吹き飛んだ。

ガラガラと音を立てながら、一部の壁が崩れるほどの衝撃。

しかし………


「GgguuuooioooioooioiiOOOOOO!!」

マンティコアは、理不尽を撒き散らす


ー3ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ナナシは宿のベッドに仰向けになって倒れていた。どうやってそこまで行ったかは本人は全く覚えていない。マンティコアとの戦いで繰り出した、シズから学んだものを自分の力で進化させたあの技、あれはナナシの努力の結晶であり、同時に 彼の自信そのものだった。

疲れを知らない身体とはいえ、長時間の鍛錬とその結果は彼に大きな自信と、これで落ちない敵はいない、という剣士としてのプライドを持たせた。しかしーーーーーーーーーーーー


「何が元NPCだ、何が抜刀術だ、仲間を守れないだなんて、俺は、俺はー」


現実は残酷だった。自分は敵の攻撃を受け止める最強の盾の筈なのに、あっけなく仲間を死なせ、挙句の果てに放った最強と自負していた剣技は敵のHPを半分削っただけ。

あのマンティコア相手にたった一発で半分のライフを削った事実は他からすれば圧巻の一言。逆に良く1人であそこまでやった物だと褒めれるレベル。しかし彼のプライドがそれを許さない。


このゲームでの死は一定時間後に最後に利用した宿での復活、アイテムの喪失と装備の弱体化というデメリットを与える。しかし、このゲームにて死は只死んだ、では済まない。

現実での死出来るだけ近づけたい、という謎の理由から死はとてつも無い喪失感を覚えさせる。自分が自分じゃ無くなる感覚、そしてもう一度、自分という存在が作り直されるという、現実では味合う事が無いだろう感覚。

それがプレイヤーを絶望へと堕とす。この喪失感を理由に、何人かのサーバーがゲームを止めたぐらいだ。


タケ達も味わっているであろうこの感覚。ナナシが恐れている事はその恐怖に耐え切れず、彼らが辞めていく事。そして二度と彼らと会えない事。それがナナシにとっての1番の恐怖だった


「1人にはなりたく無いな…」


シズ達が去って行く幻影を見て、ナナシはただそうならない事を願うしかなかった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

途端に私のHPは消え、私の視界に「you are dead」の文字が浮かび上がる。

そう言えばこのゲームで死ぬのってこれが初めてなのよね。どうなるんだろう?結構キツイらしいけど、あの宿で復活するのよね。


ナナシは大丈夫なのかな?そんな事を思いながら私の意識はシャットダウンするのだった。


気づけば私は闇の中にいた。音も何も無い、ただ暗く、何も見えない、感じない。


「ーーーーーーーーーーーーー」


声を出そうとしても何も出ない。これって私は死んだのよね?でも直ぐに私の体に変化が訪れた。


ボロボロ………


え?何これ。私の身体が崩れていってる?


そんな事を思う間にも私の身体は崩れ続け、遂には頭も崩れ始めた


何これ、怖い、怖い、


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


辞めてーーーー

そう思いながら、私の意識は再び闇に閉ざされた。


どれくらい経ったのかな、私が私じゃ無くなる感覚。端から少しずつ消えていく感覚。「切咲静香」という存在が消えていくという感覚からどれだけ経ったのか分からない。


でも少しずつ自分がもう一度作られていくのが分かる。自分が一度壊されて、また作られていくこの感覚。聞かされた通りだけど、私には確かにその通りだと、否応なしに感じさせられた。


こんな事を考えている間にも私の体の再構築は続く。骨格ができ、その周りを私の血肉が覆っていく。


私ができた途端、意識がまた消えていく。私、生き返るんだ。皆はもう居るのかな?ナナシは大丈夫ーーーだよね?


意識が浮上する。起きた私はベッドの上にいた。皆はーーー寝たままだ。あれ?ナナシがいない


「ナナシーーどこ?」


お礼を言わなきゃ。死んだけど、ナナシに守られたのは本当の事だし。

宿にはいない。だから外に出てナナシを探す。ナナシはーーー居た。宿の裏庭、刀を一生懸命降っている。汗が見えないから分かりづらいけど、長い間降っていたに違いない。


「シズーーーーー」

「ナナシ、ごめんね?死んじゃったーーー」


声を掛けようとしてーーー抱きしめられた。


え? え? どうしたの?私、抱きしめられてる?この前に知った乙女ゲームとやらで見るハグ?


えええええええええええええええええええええええええええ!???????

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