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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第5章 VRのその先へ
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開幕直後のサプライズ

管理者からの説明から数時間後、領主館にて対策会議が行われた。タケ達にとっての2回目の会議。何時もと違うのは、前回はいたナナシが不在な事、そして青領土関係者としてやってきたディクヌが同席している事か。


「では、第2回戦争会議を開始する」


その言葉と共に、中央に映るディスプレイから膨大な量の書き込みが記されていく。前回も使用した、首都以外の赤領土プレイヤー達が使用するユニバーサルチャットが開始したのだ。


これにより、赤領土の全プレイヤーと連絡を取る事が可能になる。

こうして、青領土の関係者も交えた会議は始まった。


「今回はどう戦力を割くか」


会議はこの課題からスタートした。

今回は団体戦では無く、タイムアタックなのだ。しかも、各領土間の見えない壁は取り除かれる為、他領土から襲撃される可能性もある。

繋がりの塔攻略チームと防衛チーム、この二つの戦力をどう分けるかが、最初の疑問だった。中央のチャットから様々な案が出る中、同席していたディクヌが立ち上がる。


突然立ち上がったディクヌに視線が集中する。その中、ディクヌは青領主であるダミアからの伝言を伝えた。


「こちらは繋がりの塔を一緒に攻略しようと言っている」


それはつまり、二つの繋がりの塔を同時攻略する訳では無く、一つの塔を共に攻略しようと、赤と青の混成チームを作ろうと言ったのだ。


その提案に成る程そういう事か、という概要のコメントが書き込まれていく。そもそも新エリアに入れるのは三箇所のみなのだ。その内二つを取るよりも、一箇所に絞り込めばスピードは格段に上がる。


例えディクヌが言わずとも、いつかは出ていた結論だった。ただディクヌがそれを早めただけで。

一度効率の良い案が出れば、後はそれに沿って作戦を立てるのみ。ディクヌと情報のすり合わせを行いつつ、繋がりの塔攻略チームのメンバーが選出されていく。

結果、


繋がりの塔攻略チーム メンバー

赤領土:タケルと部下達、タケ達のグループ、その他数名

青領土:ディクヌ、バウレンとその部下達数名


となった。後は補充メンバーも入れつつ、最強メンバーで一気に駆け上がる方針だ。ちなみに、ダグラスは神器の性質から防衛チームに入っている。


そのまま話は進み、ダミアともう一度会話する方向で会議は終了。解散となったのだった。



それから3日後。事前情報の通りに戦争イベントが開始する30分前。各領土に他領土の進行具合を確認するウィンドウが現れた。恐らくこれでお互いに何処までの階層を登ったのか分かるようにしたのだろう。


そんな赤領土の首都ハナは、今までにないほど賑やかだった。その理由は、繋がりの塔付近にたむろする青領土のプレイヤー達だろう。

3日前の会議の結果、赤領土側の繋がりの塔にて行う事に決まったのだ。多々あるのだが、主な理由はその地理にある。


始まりの街を中心に、6つの領土が囲むように分けられているこのアナザースにて、赤の領土はリベルタ平原にて青領土と、テンガン山脈にて黄領土と繋がっている。

しかし青領土は反対側が白領土と繋がっている。


つまり、領土間の壁が消えれば即攻め込まれる可能性があるのだ。

それを考慮した場合、繋がりの塔攻略場所をそこから遠ざけたいという考えは当然だろう。

ちなみに、黄領土と隣り合うテンガン山脈はこの際捨てる事が決定された。

この場合の"捨てる"は黄領土に侵攻されても何もしないという意味だ。あくまで自領土の有利な場所だけを守る事で、その守りを確実にする。

この"小を捨てて大を守る"戦術は一部からの反対があったものの、結果的に採用される。


結果赤領土の首都ハナに集まった戦力は、青領土プレイヤーを含めて三千人。その内繋がりの塔攻略に挑むのは入場制限数ギリギリの100人。残りは万一を考えた首都防衛と援軍の控え戦力だ。


時刻は朝9時。

繋がりの塔周辺にて攻略組の100人が今か今かとテンション高めに待つ中、その集団の中にいたタケ達はある人物と相対していた。


「貴方も来たんですね」

「ああ、俺も…だ」


そう言うタケの目の前で罰の悪そうに苦笑いを見せるのは、後に「青領土の大版逆」と呼ばれる事になる事件の犯人にして、改めてディクヌの良きライバルとなったバウレンであった。

間接的とは言え白領土に利用されていた彼。全てが終わった後、自分のやった事を後悔し一時は首都を離れる事を考え、彼を慕う部下達を見て留まったのだが、それはまた別の話。


かくして赤領土の助けになれればとやって来たのだが、いきなり敵対したタケ達に出会うとは思わなかったのだろう。何を話せば良いのか分からず、狼狽えるばかり。

ディクヌから後の事を聞いたタケからすれば「もう気にするな」と言いたい所なのだが。


(だからと言って急に馴れ馴れしく出来るわけでもないしなぁ)


難しいもんだねぇなどと考えながら、タケは目の前で気まずそうにいるバウレンから目を離す。するとニヤニヤとした笑顔を浮かべながらこちらを見るディクヌの姿が。


恐らくディクヌがワザと2人が出会う様に仕向けたのだと想像し、お前の仕業かっ⁈ と声にならない叫びをあげながら犯人を凝視するが、元凶はニヤニヤとした笑みを変えることはない。


「取り敢えず、今回は宜しく」

「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれ」


故にバウレンに挨拶程度の言葉を投げかけた所に、相手は前に見せた態度を一変させて返す。

取り敢えず険悪な空気になる事はないと、少し離れた場所で見ていたディクヌは頷くのだった。





同時刻、場所は変わり白領土の首都にそびえる繋がりの塔付近。そこに集まったプレイヤー達は困惑の表情を浮かべていた。その答えの主は、繋がりの塔の門の前で今か今かとイベント開始の時を待っていた。


白領土を表すかの様な白亜の鎧。

黒と金色の装飾が入ったそれは、擬似太陽の日差しを弾き輝きをより一層際立たせる。

白亜鎧(キャメロットスケイル)と呼ばれるそれを着込むのは白領土の皇帝、アルベルトとアレックスだ。細部に違いがあるものの同質の防具を来た2人は、色々な意味で目立っていた。


人々の関心は、何故この2人が一緒に待っているかだ。

元々、他プレイヤー達に姿を見せる事がなかったアルベルトがこうして姿を見せる事自体が珍しい事な為か、初めて彼等を見たと言う折の会話を繰り返す。

その一方で、注目の的となった2人は……


「で、どうするよ相棒。なんか注目の的になっているけど、彼等と一緒に攻略するの?」

「足手まといにならなければ、それでいい。俺はただ蹂躙するだけだ」

「OK。俺はただ付いていくだけさ」


短く言葉を交わし、意識を集中させる。そこには1人の王と、それに付き従い共にいる1人の騎士がいた。





元黒の領土は、他領土と打って変わって少しばかり地形が変わっている。前にも言った通り、始まりの街を囲む様に連なる6つの領土。この中で黒の領土のみは最小の土地があり、そこから広がる海を挟んだ向こう側に本土がある。

つまり、黒領土はその殆どが巨大な島国だったのだ。


そして戦争にて白領土に本土を占領されれば、彼等はそこを離れるしかない。

結果、彼等が何処に言ったかと言うと……


未開地フィールド『オケアンタ』。

そこは南に位置する茶領土の更に南に位置する荒野だ。

あちこちに崖が連なっており、草木を感じさせないそこは人間が住める様な場所ではない。そんなオケアンタの北一部に、黒領土の仮拠点であるエトラは存在する。


そこから更に北。茶領土との境界線は、巨大な亀裂によって出来ている。まるで地面がパッカリと割れたかの様に出来たそれ。地殻変動の結果かオケアンタ側の地面がより高くせり上がっている為、茶領土側からこの峡谷の向こう側を確かめる事は不可能であった。


しかし彼等は知らない。知る由もない。

黒領土のプレイヤー達は海を介して向こう側にいる事を。彼等にこの峡谷を超える手段がある事を。


朝7時。イベントが始まる2時間前の峡谷で、オケアンタ側から反対側を除く影が一つ。更に数人がひょっこりと顔を出し、周辺の調査を行う。

数分後、誰もいないことを確認したのか、影はその全体像を見せる。


全身黒装束の怪しい格好。

詳しい者が見れば忍装束だとわかるそれを着ているのは何も1人ではない。次々に姿を見せる影が全員、同じ衣装を身に纏っているのだ。

やがて、忍集団の中から1人が前に出る。

そしてそのまま跳躍‼︎


重さなど微塵も感じさせない、見事な跳躍を見せた彼は、そのまま反対側に着地。手に持っていた杭を振りかぶり、地面深く突き刺す。


それを確認した仲間が何かを投げた。

それは綱だ。かなりの太さを持つそれを受け取り、杭の反先端に付いた丸取手に括り付ける。そしてそれを反対側でも行えば、簡易ロープウェイの完成。


V字型の鉄棒を使い、仲間が移動し始める。それを数箇所で行う事で、30分程で集団の全員が茶領土への密航を果たしたのだった。


そのまま影に隠れるように移動し、ものの数十分で茶領土の首都に到着する。

離れた距離から首都を確認し、その集団は動くべき時を待ち続けるのだった。



それから数分後、時刻は9時半。それは訪れた。


「それでは、イベント開始‼︎」


それを合図に、森に隠れていた彼等は動き出す。体重を感じさせない速さで走る者、壁を垂直に走る者、ワイヤーを駆使して動く者、実に多才な方法で動く彼等は、1分もせずに繋がりの塔に到着する……


一歩前に跳躍。

宙を浮き、足音を消した彼等は、繋がりの塔入り口付近を眼下に補足。未だ茶領土プレイヤーが屯するその中心に、颯爽と降り立った。


「いけぇ‼︎」


100を優に越える集団の、突拍子もない襲撃。それらに頭が追い付かず反応出来ない彼等を尻目に、当初から計画していた様に合図を出す。それに答える様に、集団の1人が一歩前に出る。


「『|我、立ち入りを禁ずる(keep out)‼︎』」


そのまま地面に手をつき、一言。スキルのトリガーを引く。

刹那、閃光‼︎

放たれた光はそのまま壁となり、繋がりの塔の入り口を隠す様に拡張。


結果、一瞬にして誰も通さない無敵の壁が出現した。

それを確認し、奇襲を仕掛けた集団は纏っていた装束を脱ぎ捨てる。


そこから現れたのは……


「我ら黒領土プレイヤー。

繋がりの塔は頂いたぁ‼︎」


正体を現した叛逆者達が、遂にその牙を見せる。その中で一際目立つ、真っ黒な剣を持つクロは、その第一歩を歩み始める。

どうも、気まぐれです。

やっと始まった。うん。

これから色々と話を盛り上げつつ、ラストへと持っていきます。

とは言いつつも、後10話くらいは続きそう……

これからもよろしくお願いします。


それでは。次回更新は来週

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