説明、そして
アインシュタインが消えた。
その事実は管理者である共馬に衝撃をもたらした。調べても手掛かり一つ見つからず、誰がやったか、それともアインシュタインが自分の意思で脱走したのか。
それすらも分からないのだ。
取り敢えずそれを保留とし、管理を共馬達を始めとしたグループが受け持つ事で話は付いたが、謎が多過ぎる。
故に、共馬は今日もゲームシステムの管理に勤しむ。消えたアインシュタインの手掛かりも探しつつ、だ。
そしてある日、とあるダンジョンに不正なデータが出現したのを確認した。場所はアウト鉱山。赤の領土、その首都ハナの付近に存在する、小規模のダンジョンだ。
確認して見れば、翼竜型の違法データ。何時もなら直ぐにそれを消去してから管理を続ける筈だったのだが、共馬は近くにいた、見知ったデータを確認する。それは自分が送り出したAI、ナナシであった。
そう言えばあれから会ってないな、などと思いながら転移の準備を始める共馬。死に物狂いで違法データから逃げるナナシを見ては苦笑しながら、それを消すためのシステムをインストールする。
そして準備が終わったと画面を確認してみれば、いつの間にか鉱山の外に出て居たナナシ達がピンチではないか、と焦る。しかもナナシの近くに居た別のデータも何かしら怪しく、面倒事の匂いがすると溜息を吐く共馬。
まぁアインシュタインが居なくなっているから今更か、と思いながら外して居た眼鏡を掛けなおし、白衣を翻しながら転移する。
転移が終了する直前に、消去のプログラムを起動、先手を打つ。
違法データの目の前に転移し、起動していたプログラムを実行。
後はプログラムが全てをこなすのみ。如何なるデータの存在も許さない、全てを0に還す牢獄が、違法データを捕まえて離そうとせず、それを完璧に消去していく。
意外と早くカタがついたと安堵しながら、プログラムの余波によって衝撃波が流れる中、共馬は久し振りに会うナナシに声を掛けるのだった。
「な…なんで共馬が⁈」
ナナシの心からの仰天に満足そうな笑みを浮かべると、パチンっとフィンガースナップを一つ。その音に反応してアイテールを捉えていたシステムが作動。四角型のそれはどんどん縮んでいく。質量は圧縮され
小さく、更に小さくなっていき、遂には跡形もなく消えた。
「「………………………」」
思わず無言になる二人。自分達があれだけ苦労して逃げた相手を一瞬にして消滅させられたら、そうなるのも仕方がないのかもしれない。そんな二人に、共馬は話を急かすかの様に振り返った。
「それじゃあ話なんだけど……」
「「ちょっと待とうか」」
「ん? どうしたかね」
何事もなかったかの様に話を続けようとする共馬に、見事にハモりながら話を遮ろうとする二人。我が眼を疑いたくなる様な光景を前に、二人はツッコミを入れる。
「今のあれ何。アイテール一発で消えたぞ」
「私が管理者なのは知っているだろう。アレは俗に言うゴミ箱だ」
「あの…儂の攻撃でもちょこっとしか傷が付かなかったんじゃが……」
「そりゃあアレはエネミーではないからだ。不正データの塊だぞ。お前らに倒せる訳がない」
二人の質問にさも当然とばかりに答える共馬。どうやらアイテールは不正データだったらしく、それ故にダメージを負うこともないらしい。老人の攻撃を受けての平然とする理由を漸く理解するが、更にこの世界で共馬を敵に回してはいけない、と今更ながらに恐怖するナナシ。
「取り敢えず、場所を変えよう」
ズレた眼鏡を掛けなおしつつ、少し離れた場所に広がる草原を指差して言う共馬に頷き、ナナシは老人と共に共馬の後をついていくのだった。
「このゲームの管理者の一人が姿を消した。だから……」
「「いやいやいや。説明せいや」」
座れそうな場所に腰を落ち着かせ、ナナシ達が少々の休息を取った後の共馬のいきなりなカミングアウトに、ジレンマを感じつつツッコミを入れる二人。それに共馬本人も感じつつ、改めて説明を入れる。
初めて見た共馬の真剣な表情に、耳を傾ける二人。それに頷き、共馬は話を始めた。
「君も知っての通り、このコネクトオンラインを管理しているのは3人。
一人はVR技術研究の第一人者の僕、共馬。
次に、有名な学者の脳細胞から生まれたAI、アインシュタイン。
最後に、VRの現実応用研究の第一人者、柳 恵子。
数日前から、アインシュタインが行方不明なっている。元々データのみの存在だ。居なくなったのは即座に分かるよ。お陰様で戦争システムの運営やら管理やらで忙しい毎日さ」
「犯人に目星は?」
「そもそも、アインシュタインは特殊な個別回線に居た。多重のブロックと専用回線、ハッカーすらも手出しできまい領域に、そう簡単に入り込めるとは思わない。
だから同僚を怪しむ事にした結果ーー」
「「結果?」」
「怪しい物は存在しなかった。たった一人を除いて」
その言葉に、思わず唾を飲み込む。身を乗り出しつつ聞くあたり、話をしっかりと理解していると納得した共馬は、この話の本命を言い放った。
「残ったもう一人の管理者。VRの現実応用研究の第一人者の柳 恵子。彼女だけが未だに連絡がつかん。いくら政府のお偉いさんと繋がりがあろうと、伝言すら残さないのはおかしい。故に私は彼女を探す……筈だったのだがな」
急に言動がおとなしくなった事に、二人は首を傾げる。
「今は戦争システムが忙しくて彼女を探す暇がない。おかげで私の考えた案を使用できるが、忙しい事は変わりないのだからな。だから近日中に戦争システムが変わった事を全プレイヤーに知らせなければならない。だが管理者が居なくなった事に対策を打たなければならないのもまた事実」
そう言い終わって、溜息を一つ。眼鏡の奥の瞳がナナシを捉える。注目された事に「え、俺?」とあたふたするナナシに、共馬はある提案をもちかけた。
「俺と共に来い。奴らの対抗策を教えてやる」
それから2週間の時が経ち、予め決めて居た時間にログインしたシズ、タケ、サヤの3人。首都ハナの中心に現れた彼等を、一人の老人が出迎えた。
「はい、何でしょう」と返す3人に微笑みながら、老人は2週間前にナナシから言い渡された伝言を、一字一句間違える事なく伝えた。
「ナナシからの伝言じゃ。「ちょっくら修行してくる。俺の事は気にせず、この爺さんに付き合ってやってくれ」との事じゃ」
突然の伝言。しかし冗談を言っている顔ではなく、騙そうとする気配もない。
「しかし、いきなりこんな事を言われても納得できんじゃろう。
説明するから領主館に一緒に来てくれんかの?」
そう言って歩き始めた老人を見て、3人は事態を理解するためについていくのだった。
場所を移して領主館。
何が何だか分からない3人をタケルは受け入れ、ゆっくり話せる部屋に案内する。
全員が着席してから、タケが口を開いた。
「それで、ナナシの伝言ってどう言う意味ですか?」
その答えに「うむ」と頷き、老人は2週間前に起きた事を話し始める。
自分が特定のアイテムを欲している事。
ナナシに付き合ってもらい、アイテールに出くわした事。
その際に共馬に助けてもらった事。
そしてーーーー
「それで、ナナシは共馬博士について行って未だ帰らず、と」
「そう言う事じゃよ」
話の結論をいい、はぁとため息をこぼすタケ。いつもナナシはいきなりだ、と愚痴を唱えたくなるが、それをグッと堪えながら老人を見れば、当の本人は目の前に出された紅茶をすするのみ。
得体の知れない老人ではあるが、タケルに知られているので邪険に扱う訳にもいかない。それに、例え騙されたとしても、現実で彼等に悪いことが起きる訳でも無し。故に……
「で、何が必要なんです?」
それに乗る。共馬が絡んでいるのなら、子事では済まない。ナナシがそれに対抗するために頑張っているのに、自分達が何もしない訳にはいかないじゃないか‼︎
ふむ、と老人は頷く。ここに居ないナナシに、彼らと出会わせてくれた事に感謝しながら、老人は声を上げた。
「よし、頼んじゃぞ‼︎」
「「「はい‼︎」」」
どうも、気まぐれです。
遅ぇよ‼︎ あと短ぇよ‼︎、とい皆様。すみません。
いや、こっちの予定とか色々重なりまして…少ないのです。
一応、今回は繋ぎとしての部分もあるので、来週の更新でしっかりとした物を更新します。
本当にスミマセン。
次回更新は来週に




