ディクヌ対バウレン
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「面白そうな事やってんじゃねぇか⁈」
必殺の槍を振るい、百年の恋も冷めそうな獰猛な笑顔を見せながら、ダグラスが乱入する。
ニイィィィ、とつり上がった口の端から見えるはまるで猛獣の乱杭歯。この時だけはその不敵な笑みが天使の笑顔に見えただろう。それだけギリギリの状況に居たと言う事だ。
「バウレン派の騎士を捕らえろ‼︎」
「一人も逃すな‼︎」
先に出たダグラスを追う様に、ディクヌ派の騎士達が攻撃を仕掛ける。ナナシ達は状況が分からずじまいであったが、これだけは理解出来た。
「ああ…助かったんだな、俺たち」
そう言ってナナシは倒れる。
どうやら精神的にも限界だったらしく、助かったと気を抜いたらしい。
倒れたナナシ達を介抱する為にディクヌ派の騎士達がナナシ達を運ぶ中、バウレン派の一人がダグラスに話し掛ける。
「なんであいつらに味方する?」
そう、元々ダグラスはバウレンの舞台に付いているのだ。つまり、ダグラスが自分達に攻撃し、敵を助けるのかが理解出来ないのである。
その問いにフッと笑うと、ダグラスはまたもや恐ろしい笑みを浮かべながら言い放った。
「そっちの方が面白いから」
…………………………は?
だれも口に出さなかったが、今の彼らの心境を一口で表すならコレだろう。それ程、ダグラスの言ったことが理解出来なかったらしい。
「いやな? 俺はお前らみたいにバウレンに忠誠誓っている訳じゃないぜ? というかバウレンに付いていた理由はそっちの方がもっと暴れられたからであって。
それに、多対一でどちらの仲間になるか聞かれたら普通一の方選ぶだろ?もっと多くの敵と戦えるし」
ダグラスらしい理由に、バウレン派の騎士は空いた口が閉まらない。何人かは「このバトルジャンキーめ‼︎」とか言っているが、それだけの理由で敵対される彼らからすれば笑い事では済まない。
何故なら……青の領土で実力では5本の指に入る、しかも神器持ちを相手にしなければならないのだから。
「タノシモウゼェェェェエェ⁈」
言動が完全にバーサーカーのそれである。
言葉がカタカナ、眼から理性が消えては「眼が逝っちゃってる⁈」と言われても仕方がないだろう。
ダグラスが槍を振るって暴れ始め、ディクヌ派の騎士達は「また始まったよ」とか、「放っておこうぜ十分もすれば終わるだろ」などと投げやり気味。
ディクヌ派が呆れる中、バウレン派の皆さんは仲良く悲鳴を挙げるのだった。
「ギャアアアアアアーーーーー‼︎」
「痛ぇよぉ‼︎」
「俺、なんか扉が見える……」
「俺も、なんか目覚めそう…」
「やめろ⁈ その扉を開くんじゃない‼︎」
……若干、危ない扉を開きかけた者も居たが、全員はスルーする事にした。彼らのスルースキルは高いらしい。
ダグラスが暴れ始め、自体が収束しそうな雰囲気が街に流れ始める中、領主館があった場所では、バウレンとディクヌが一騎打ちをして居た。
お互いに武器を打ち合い、ガンッといういい音が何度もなり、お互いに五分五分と言ったところか。
ただし、お互いに何度も武器を持ち替えつつ戦うという、変わった戦いであったが。
「『造武者Lv.4』スピアー」
振り終わった剣を手放し、スキル名と武器を唱える。その瞬間、光と共に現れたのは無骨な長槍。手放した事で落ちた剣は地面に落ち、一回跳ね返っては粒になって消えていく。
一瞬にして武器を入れ替えたディクヌはそのままひと突き。タルヴァール(長剣)を構えるバウレンはそれを縦に構え、スキルを発動する事で応じる。
「こい、『シェールドゥ(大盾)』」
バウレンが持つレアスキル『瞬装者』により、持っていた長剣を消しシェールドゥ(大盾)を展開。此方もノータイムで武器を入れ替えて応じる。
槍による一撃は盾に塞がれるが、ディクヌは止まらない。そのまま盾を足場に上に高く跳躍。盾を駆け上がる瞬間に槍を手放した為に手ぶらではあるが、バウレンが油断しない。そればかりか、盾をそのまま上に向け、迎え撃つつもりだ。
「『造武者Lv.4』 バスターブレイド」
警戒する事に心中で正解だ、と答えながら、両手にバスターブレイドを出現させる。
いきなり現れたそれに反応し、ディクヌの身体は今更とばかりに重力に引っ張られて落ちていく。
そのまま大剣を振りかぶり、重力による落下の衝撃を加えるように振りかざし、
「『城壁』‼︎」
防御強化のスキルを掛けたバウレンのシェールドゥ(大盾)に叩きつける。エネルギーで出来た見えない壁に阻まれるのもお構い無しに、弾かれた大剣を手放し再びスキルを唱える。
「『造武者Lv.4』スピアー
『爆発突』‼︎ 」
長槍を造り出し、行く手を阻む見えない壁に突き立てスキルを発動。突き立てられた箇所を中心に爆発を起こし、駄目押しとばかりに長槍をかかと落としで更に突き立て、そのまま離脱。衝撃によって生まれた砂埃がバウレンの周りを包む。
流れるような綺麗なコンボを見せたディクヌであるが、内心では焦っていた。
(やっぱり硬ぇ‼︎)
そう、向こうがディクヌを傷付ける決定打を持たない様に、ディクヌもまた切り札らしい切り札を持たないのだ。
多種類の武器を扱う故の、器用貧乏になり兼ねない者の宿命とでも言うのか。
とにかく、二人とも似た様なタイプの戦闘スタイルが仇になった訳だ。
しかし、そんなディクヌにも勝機がある。それは「スキル名を唱える必要がない(・・・・・)」という部分だ。
スキルを唱える際は必ず先に『造武者Lv.4』と言ってから武器を出しているが、実はこのスキルは念じ型だったりする。
スキル名を唱えるのは念じる際のイメージを明確にする為なのだが、Lv.4まで育てた結果、唱えずに造る事が可能になったのだ。
なら後は簡単。隙を突いてスキルを念じるだけだ。それだけでカタがつくのである。
なら何故それを実行しないのか。
それは相手もそれ(・・)を考えていないか? という考え故だ。
効果が似ているスキルだ。本当はバウレンも来い、などという必要は無いのではないか?
そんな考えが頭を横切る。
もし自分が仕掛け、相手がそれを利用して返してきたら目も当てられない。
ディクヌが息を整える中、砂埃が晴れていく。そこからは同じく息を整えるバウレンが立っていた。
「こい、『タルヴァール(長剣)』」
ディクヌの重いコンボを耐えきった大盾を長剣に持ち替え、構え直すバウレンを見てディクヌは、
「来い」
持続時間を超えた事でチリになって消えていく大剣を捨て、素手で手をクイッと引っ張る。
それは単なる挑発。スキルでもなんでも無い、唯の仕草だ。 が。
「ふぅんっ‼︎」
バウレンは敢えて(・・・)突っ込む。それはバウレンもまた、自分のスキルが念じ型であり、それはディクヌも同じであろうと推察した結果だ。
両腕を交差する様に構え、横切りの動作を極限まで短くする為に先に貯めておく。
「横切りをするよ!」と自己申告する様な構えではあるが、関係ないと一蹴する。
走り始めて2秒、彼らの距離があと4mといった所でディクヌが動いた。
「『造武者Lv.4』 ロングソード」
右手にロングソードを造り、振り下ろす。それに応える様にバウレンは貯めた一撃を繰り出し、ディクヌの攻撃を受ける。
ガキィ、音が鳴り、当然の如く剣は弾け、ディクヌは右手万歳状態に、バウレンは右手を大袈裟なほど後ろに持っていくことになる。
その瞬間、
ディクヌの、バウレンの左手が前に出た。
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咄嗟に前に出た左手に、二人は動揺を隠しきれない。
元々、今切り札を使う気はサラサラ無かったのだ。しかし、お互いに第一撃を打ち合った瞬間、無意識の内に手が出てしまう。
(今がチャンスだ)
頭の中で自分が言う。
(これ以上ないほどの好機だぞ)
それは、悪魔が人を誘惑するかの如く。
(勝負を付けろ‼︎)
遂に頭の中で声が叫んだ時、本能に従う様に念じた。
何も持たない左手からナイフを造り、突き出すそれを、槍に切り替えた右手が止める。
用済みのナイフを手放し、挙がった右手に大剣を造り振り下ろすも、槍から大盾に持ち替えた両腕が防ぎ、
すぐさま長剣に持ち替え攻撃に入るが、造った盾に阻まれ踏みとどまる。
盾を押しつける様に手放し、盾の影に隠れる様にしゃがみ拳銃を造る。それで撃つも大盾に持ち替えた両腕がそれを許さない。
それは正に一進一退の攻防。既に手札を晒し、隠していたジョーカーも見せた互角の戦いは止むことなく進む。度々落ちては持続時間を超えて消えていく武器が、その戦いの激しさを物語っていた。
これはお互いが気付かなかった事だが、お互いに全力を使い、スキルの限界を併用した別次元の戦いは、二人の見えないある数値を劇的に上昇させていた。
それは「熟練度」。
これは前にも話した通り、武器やスキルを使っていく事で知らず知らず上がっていく数値。Lv.4にまで上がった事でこれ以上のレベル上げが難しくなったディクヌ達だが、ハイレベルな戦闘により今迄上がりづらくなっていた熟練度が上がり始めたのだ。
そして鍔迫り合いになった瞬間、それは来た。
ーー造武者レベルアップ‼︎ Lv.5に到達、新スキルを取得しました
ーー瞬装者レベルアップ‼︎ Lv.5に到達、新スキルを取得しました
それはレベルアップの合図。ウィンドウに映るのは新スキルの名前と効果の詳細。敵との戦いでいきなり出現したそれに流石のディクヌも驚きを隠せず、遠目に新スキルの確認を行う。
その結果に、ディクヌとバウレンは目を見開いた。それも仕方がない。何故なら、今一番欲しがっていた切り札をたった今手に入れたのだから。
ーーご都合主義? 知ったこっちゃない。
ーーテンプレ? 好きなだけ言ってろ
欲しい時に欲しい物が手に入って、使わない馬鹿は居ないのだからーー‼︎
「『鍛える刹那の鍛冶』‼︎」
「『無限の瞬装場』‼︎」
その瞬間、世界に新たなルールが刻まれた。
地面は見渡す限り更地の地平。地面を薄く覆い尽くす鉄の砂は一瞬にして無数の武器を造り、鍛える。
虚空に広がる無限の武器庫。虚数空間のそれは武器を保持者に確実に渡し、手放した物を回収する。
お互いの長所を限界まで突き詰め、それを実行する為だけに作られた、新しいルール。
一方は複数の武器を無限に造る地平線
一方はいつでも取り出せる無限の武器庫
二つのルールが一箇所に生まれ、更地という殺風景な世界とミステリアスな虚数の武器庫がバウレンをズラリと囲む。
動いたのは、ほぼ同時だった。
両腕にロングソードを二つ、同時作製。虚空から取り出した大剣がそれを迎え、弾いた隙を槍に持ち替えて追撃する。
高さ3m程の盾を造り、地面に突き立て壁にする。隠れた視界を利用しないはずがなく、横に伸ばした右手に、造った事のない武器を作製。
鉄の砂は一瞬で形を整え、質量をもって姿をあらわす。材料は鉄ただ一つ。故に全身鉄製の武器を作り出す。
造ったのは鎌。1m半にも及ぶ刃を持ったそれを、横薙ぎに斬りはらう。そしてーー
それを遮る様に、空から盾が落ちてくる。
ドスン、と重い音を立て鎌を迎え撃つ。同時に鎌はチリになって消え、盾は再び空を飛び武器へ戻る。
それからは各武器入り混ぜた、最早言葉にし難い戦いが始まった。
一撃一撃が交差する度に、ディクヌの武器は塵になって消えては生まれる。
一撃一撃が交差する度に、バウレンの武器は飛び武器庫と手を行き来する。
いままで使った事のない武器まで作り、触らずともある程度武器を操る彼らの戦いは、このまま終わりが見えない。
そしてそれを見逃しまいと、隠れた殺意は動き出す。
突如、バウレンの胸を黒い腕が貫いた。
「な、何だ……?」
ディクヌが呟く中、バウレンの胸を貫いた、いや生えたそれは穴を広げる様に大きくなっていく。
「………ア、アルベルトォ‼︎」
バウレンが叫ぶ。それは白の領土の帝王となった男の名。それはつまり、裏で彼と繋がっていたという証。
これ以上ないほどの証拠を見せつつ、バウレンの胸に生えた腕は更に大きく、禍々しい光を放ち始める。
それはまるで今にも爆発しそうな雰囲気で……
「アルベルトォォォォ‼︎」
もう一度皇帝の名前を叫んだ瞬間、光が爆ぜた。
ーオマケ&補足ーーーーーーーーーーーー
サヤ 「また作者の厨二病が再発したね〜」
マキ 「更新した後で頭抱えて後悔するのに懲りないよね〜」
タケ 「だからメタなのは辞めようぜ……一応名前とか意味があって付けたんだから」
シズ 「たしか、バウレン関係のスキルと武器名は全部ヒンドゥー語なんだっけ?」
タ 「そうそう、だからこれ以上作者を叩くな…… 見ろ、部屋の隅でエクトプラズムを吐いているじゃねぇか」
気まぐれ 「ヤッチマッタ…… オロロロロ……」
タ 「しっかりしろ‼︎ 傷は浅いぞ‼︎ 衛生兵‼︎ 衛生兵‼︎」
ナナシ 「結局ネタに走るのか……」
どうも、気まぐれです。
知っていますか皆さん、遂に総合PVが1万超えたんですって‼︎
まぁ数週間前の話なのですが、遂に1万超えました。
今回も厨二病全開で書いたんですが、後で頭を抱えております。ですが4章を終わらせ、6章で完結するまで書くつもりです。
これからも、そして最後まで生暖かい目で見守ってください。
次回更新は来週に




