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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第4章 青の領土訪問編
51/70

足掻け、最後まで

ー1ーーーーーーーーーーーーーーーーー

いきなりだが、弓の攻撃スキルは2種類存在する。

一直線に敵を射抜く射線型と、弧を描くように上空から敵に落ちる狙撃型だ。


射線型は威力が強い分、光のエフェクトなどで敵に勘付かれる可能性があり、狙撃型は敵に悟られにくい分、ダメージに期待出来ない。


いったい何故こんな話をしているかと言うと、狙撃型でよかったと心から安堵するナナシが居たからだ。

今ナナシは空に浮いている。いや、正確には跳んだと言った方が正しいか。


上を見上げれば無数の光が弧を描いて此方に向かってきている。

そしてたった一方向からではない。

ナナシの下を歩くタケ達の背面を覆うように、それは向かってきているのだ。


そして今更ながらに、ナナシは気づけて良かったと安堵している。


事の始まりはつい数秒前。

先んじて青の領土を一通り回ったナナシは、シズ達を連れて観光に洒落込んで居た。

ある時に空が一瞬光ったのを確認し、警戒してレーダーを最大出力で展開して居なければ、今頃シズ達は一歩間に合わず、HPを0にして死亡して居ただろう。


シズ達の背面全方位から無数の反応があるのを確認したナナシは、そのまま背面跳びの要領で30m程跳び、今に至る。


空を見上げれば、無数の走る光が見える。

それは余りにも幻想的で、余りにも無慈悲。

射線はシズ達を狙った物だと分かった瞬間、バウレンが行動するかもしれないと言うディクヌの話が脳裏に蘇る。


「以外と早いな」


口に出たのは結論でも驚きの声でもなく、ただ今回の事に対する感想だけ。かつ驚いてみせたが、ナナシはそんなことはどうでもよかった。


近い内に襲われるだろう事は分かって居たのだ。それが今起きただけであり、ナナシが狼狽える理由にはならない。

罠を掛けてきたのならば……


「やるか」


罠ごと踏み抜けば良いだけの事。



腰にぶら下げた刀を、ゆっくりと引き抜く。シャラン…といい音を立てながら、ナナシの相棒が姿を現した。


鍔の部分を持たず、普通の刀よりも数十センチ長い刀身を持った、居合いに特化したそれの名は「居天」


鍔によって武器の距離感を掴ませないために、そして軽量化の為にそれらを消した、居合い斬りの為の刀だ。



抜いた居天を腰に構え、跳んでくる雨を向かい打つ。

そしてナナシが目を付けた部分が、そのスキルの特性。


確かにスキルによって放たれた矢は驚異だ。しかし、そのスキルは矢があってこその威力である。

つまりーーー


「まずは一本」


無数の矢の中から、一番ナナシに近い矢に回り込むように身体を回転させ、その腹を一刀両断。

矢を失った事でスキルの影響は消え、光が消えて無くなっていく。


その瞬間、ナナシの身体は重力に引っ張られ地面に向かって落下し始める。

結果的に無力化した矢は一本のみ。

だが、充分だ。何故なら。


「『レインアロー』‼︎」

「『マルチショット』‼︎」


頼れる仲間達に奇襲を気付かせるくらいはできたという事だ。


サヤとマキが放った矢と弾はそれぞれ分裂し、早い段階で無数にやってくる矢と当たり相殺させる。


そうすれば余裕もできるというもので、彼らの行動は速かった。


「『急速区域(ヘイストテリトリー)』‼︎」

「手に入れたばかりの新スキル、試させてもらうぞ‼︎」


最早お馴染みとなった開戦一発目の補助スキル。身体能力と共に知覚が大きく上昇した世界で、タケは阻みの孤島での戦いで新しく取得したスキルを発動する。


柄をバイクのハンドルに見立て、アクセルを蒸すように捻る。その瞬間、本当にエンジンが入ったかのように震える剣。モーションをセンサーが感知し、手に入れたばかりのスキルに発動の合図を送る。


そして大剣を包み込む程の光が輝き始め、少しづつ光が収束していく。


光を従えた大剣を持つタケの姿が、そこにはあった。光を浴び、大剣を構え立つその姿はまるで勇者の様。


身体から力が沸く感覚を覚え、タケは剣を構える。

未だタケ達を狙う光の雨は健在。それら全てを破壊するべく、タケは光を帯びる大剣を大きく振りかぶった。


「『幻想大剣 アニヒレーター』ぁぁ‼︎」


空中一閃。


大剣から放たれた光は一条の閃光となり、遅れて放たれた光の雨全てを打ち消していく。破壊された一つ一つが爆破エフェクトを見せ、空に無数の花火を作っていく様はまさに幻想。


一際強い光を放ち、ナナシ達に迫っていた雨は一瞬にして姿を消した。



バウレンの部下がこれで終わるはずもなく、各々武器をだして襲いかかる。


「迎撃開始‼︎」


マルクス迎撃戦、ここに開始。




ー2ーーーーーーーーーーーーーーーーー

敵側の数が圧倒的に多い集団戦に置いて、少数側が取れる戦法はお世辞にも多いとは言えない。

そもそも、幾ら技術などがいいとは言え、数に圧され負けるのは道理だ。


ラノベであるようなチート無双なら話は別だろうが、生憎ここはゲームの中。

単騎無双が出来るような仕組みはそうそうない。精々高レベルのプレイヤーによる低レベルプレイヤーの蹂躙ぐらいだろう。


例外としてタケルの炎などがあるが、それらを除いての場合、少数側が取れる選択は主に二つ。


一つはわざと囲まれる事で背後を取られる心配を無くし、それぞれの全力を出す。もう一つは一点突破で戦場を離脱し、自分達に有利な戦場へと誘導、そこで戦う。


どちらもどちらで欠点を持ち、そもそも物量戦で勝てる方が逆に勝てる方がおかしい。


まだ3千対9千など、そのレベルであれば有能な指揮官なら逆転出来るだろうが、残念ながらナナシ達は8人。対して彼らは百を優に越す一部隊。


これだけで無理ゲーに見えるが、ナナシ達は諦めない。メカタの自己強化を受け、襲いかかる隊員を迎撃する。

時折降ってくる矢の雨を円の中心にいるサヤ達が迎撃し、ナナシ達が各個撃破に奮闘する。






「『急速区域(ヘイストテリトリー)』『強化区域(パワードテリトリー)』『防壁区域(ディフェンステリトリー)』‼︎」


もう何度目か分からない効果の途切れが起こり、メカタが疲労した身体に鞭を打ちながらも強化スキルで再度掛け直す。


各員も疲労が溜まり、唯一疲れないナナシを除いて全員が、既に満身創痍だった。

攻撃しても攻撃しても、敵軍の数に任せた戦意が消える訳もない。

その証拠に…


「HP三割以下‼︎」


既に瀕死だと言う者が続々と出てくる。

それを言ったのはレンであり、ヤマトとメカタ、そしてレンに続く4人目の宣言でもあった。


前線を張る二人は既に瀕死。

強化スキルを使う援護役も共に瀕死。

投げるナイフも底を付き、瀕死の遊撃手。


誰もがナナシ達の敗北を予想するだろう戦場にて、休まず戦場を駆けるナナシもまた、精神的に満身創痍だった。


幾ら身体が不死身とは言え、人としての心と自我を持つナナシ。勿論、精神的な苦痛も感じない…筈だった。

それは常人を遥かに超えて、の話であり、おおよそ30分強に渡る乱戦。精神的に参らない方がおかしい。


疲れはしない。だが存在しない脳が囁くのだ。


「もう勘弁してくれ」


と。

そして頭が身体に追いつかない場合、いつか崩れるのは勿論の事で。


「イテッ⁈」

反応出来ないほどのスピードで動き続けた身体に脳の疲れが影響し、足を挫けさせる。結果、ナナシは盛大に転ぶ事となった。


そのまま大の字に寝転び、出るはずのない疲労による激しい息継ぎをする。


ハッ、ハッ、ハッ

今まで経験したことのない、盛大な疲労感がドッと押し寄せる。


身体は動く(・・)。

しかし何故か動けない(・・・・)。


そんな矛盾を抱えながら、ナナシは戦場を見渡す。

そこには、ナナシが止まった事で更に劣勢に陥った皆がいた。


シズは鍔迫り合いになり圧され気味。

サヤ達は矢や弾薬がそろそろ枯渇しようと言う所。

このままでは全員のHPが枯渇。

自分は謎の存在として捕獲、どうなるか分からない。


ただ言える事は一つ。


「まだだ、まだやれる‼︎」


自分を鼓舞し、最後まで反抗する事‼︎


何故なら自分はまだ、自分から進んでやりたいと思った事も、それに対する答えを一つとして手にしてないのだから……‼︎



「確かにそうだよなぁ⁈ ナナシィ⁈」

「まだ終われねぇよなぁ⁈」



果たして願いは届いたのか。

瀕死のタケとレンが痛みと疲労で動かない筈の身体を引きずり、叫んだナナシに答えるように声を上げる。


「食らいやがれ、『幻想大剣 アニヒレーター』ぁあぁ‼︎」

「奥の手をご覧あれ‼︎ 『鉄血錬成』‼︎」


一体どこに力があると言うのだろうか。

疲労でクタクタだった精神に鞭を打ち、力を振り絞って出した広範囲攻撃(アニヒレーター)を敵が密集した場所に落とし、レンは二刀流の短刀で己の腕を切り裂く。


腕から血しぶきが上がり、レンのHPを削ると共にステータスに「出血」のバッドステータスを与える。

その瞬間、飛び散った血は驚きの変化を見せた。


血から色が抜け、抜けた色は集まって凝縮されていく。それらは形を作り、結果的に数本のナイフへと変化。レンがそれらを投入する(・・・・)。


「『暴走投入(バーサクスロー)』‼︎」


命中精度を引き換えに威力を何倍にも上げた投入スキルが炸裂、物凄いスピーディで肉迫する。

元々密集して居た故に当たったそれは、多数の敵を薙ぎ払っていった。


その一方で張り詰めたエネルギーは爆発を起こし、密集した隊員達を一網打尽に吹っ飛ばす。


最後の足掻きとでも言う様な二人の広範囲攻撃に、一瞬でも歩みが止まる隊員達。



しかしてそれは、二人脱落を意味する。

只でさえ疲労困憊で動けなかった筈だったのだ。アニヒレーターを地面に叩きつけた後、タケは眠る様に崩れ落ち、出血による簡易的な眩みと疲労から、レンも事切れた様に倒れた。


そして、幾らタケとレンの渾身の一撃が通ったからと戦局が変わるわけではない。

未だ劣勢、更に動けないお荷物を抱える事になり、撤退すら難しい状況。


シズ達が半ば諦めかけた時……


「面白そうな事、やってんじゃねぇか。俺も混ぜろよ」


空から、声が聞こえた。

刹那、放たれるは無数の鏃。

無慈悲に、かつ正確に投げられたそれは、ナナシ達に近づいていた隊員達に降りかかる。


既にナナシ達によってHPを削られていた彼らは反撃する暇もなく、光になって消えていく。


音の出所であり、鏃を投げた人物はそのまま別の場所に着地。隊員達が迎撃すべく包囲する中、男は息をする様に呟いた。


「舐めんな。 『破壊の天災(ブロークンディザスター)』」


破壊の風が吹き荒れた。

男を中心に、全てを破壊するエネルギーの風が荒れ狂う。


その威力は圧巻の一言。

ナナシ達が言葉を失う中、メカタだけがその男の顔を見てある人物を思い出した。


西洋の甲冑を見に纏い、女性受けする整った顔立ち。前に会った時は甲冑で見えなかった金色の髪を靡かせ、それを見れば千年の恋を冷めそうな、それはもう獰猛な顔立ちをした青年。


神器 ゲイボルグ所持者、ダグラス乱入。





ーオマケーーーーーーーーーーーーーーー

シズ「ここ最近、私が完全に空気な件」

サヤ「仕方ないよね。シズってどこか突出したスペックあるわけじゃないし」

マキ「それを言うなら私達も後方支援に付いてちょこっと出ただけでほぼ出番ないよねぇ〜」

シ「書かれてるだけマシでしょ……と言うかリア充は黙りなさい」

マ「シズが怖いよ⁈」

サ「と言うか、作者もナナシとレンとタケが主人公だって言ってるし…」

ナナシ レン タケ「「「………」」」

シ「そもそも、作者が余りにも恋愛物を書くのが下手くそだから私の出番下がった訳だし……」

ナ レ タ「「「取り敢えずメタ発言辞めようよ、3人共……」」」

どうも、気まぐれです。

今回は余裕を持って投稿。

作者のこの余裕は果たしていつまで続くのか?

あとオマケでメタ発言してるけど気にせずに。


それでは次回更新は来週に

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