革命を
遅れました。 すいません
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俺はいつでも青の領土の事を考えている。
とバウレンは自負している。
何時でも青の領土を最優先に、青の領土にとって利益になる様に。
それがバウレンのゲーム内に置いての行動原理さと言ってもいい。
一見、誇り高い騎士を連想させる原理だが、それは同時に危うさでもあった。
「全てが青の領土の為ならば、例え現領主を殺してでも、自らの手で青の領土をいい方向に導こう」
それがダミアが半ば危惧していた事であり、時間を掛けて忘れかけていた可能性だ。
そして、それは最悪のタイミングで、計算された計画と共に『叛逆』という形で、ダミア達に襲いかかる。
予め調べて置いた、領主館に配備された兵の位置から死角になる場所に兵を集め、視界を奪う閃光弾を放つ。後はスキルによって強化した矢で蜂の巣だ。
領主館が崩壊していく様を、20m離れた場所からバウレンは見ていた。
最強装備を身に纏い、顔色一つ変えず、領主館を見つめる姿は恐怖すら感じさせる。
その瞬間、バウレンの目の前に二つのウィンドウが現れた。
一つは『反逆者』のウィンドウ。
領主館を攻撃した事からシステムが起動し、バウレンはステータスに『反逆者』の称号を刻まれ、これが外れるまでシステムに造られた騎士達に攻撃される事となる。
もう一つはスキル取得の合図。
ウィンドウに映る、新しく手に入れたスキルの名前を確認したバウレンは、そのスキルの特性を理解した途端、クックックと小さく嗤い部下に命令を出した。
「全員に通達。パーティを組み、小隊編成で俺の下に付け。そして各自散会、騎士達を退けろ‼︎」
部下達は指示通り、決められた場所に散らばっていく。その様子を見ていたバウレンは一度息を整えると、残った小隊長達にドスの効いた声で発破を掛けた。
「これは反逆では無い。青の領土をより良い状況へ導く為の下ごしらえだ。繰り返し言おう。これは反逆ではない‼︎ これは……」
そして眼を大きく見開き、
「革命だ‼︎ 総員、全力を尽くせ‼︎」
そう言い放つ。ハッと声を揃えて返事をする小隊長達を見て、バウレン達は別れた。
小隊長達は先に向かった隊員達の援護に、バウレンは今や瓦礫と化した領主館へ、足を運ぶ。
こうして、後の記録に残る「青の領土、最大最後の叛逆」は幕を開けた。
青の領土、その首都マルクスは今、戦火に包まれている。バウレンが起こした反逆により、彼に仕える騎士達は二つの仕事に回っていた。
一つはシステム騎士を退ける事。
彼らは「反逆者」の称号が付いたプレイヤーを攻撃し、街の外に追い出す仕事を持っている。
これでは輝青騎士団(きしょうきしだんはいらないのでは?と考えるプレイヤーも多かったのだが、そこはフランス人。
元々騎士の子孫が多く暮らし、その文化すら廃れ掛けていた当時の彼ら達からすれば、
「ゲームの中だけでも、我らの古き伝統を復活、続けさせることができる」
と言って輝青騎士団(きしょうきしだんが出来上がった。つまり、今の彼らは今は亡き古き伝統であり、それを続ける事は名誉な事だと考えているのだ。
閑話休題。
もう一つの仕事は、青の領土に居るナナシ達の排除、ないし追放。やはり青の領土所属ではないプレイヤーが首都で歩き回って居ることが気に入らないらしく、ナナシ達を血眼になって探して居る。
この二つの大きな問題を、彼らは人海戦術を駆使して行っていた。
そして本来、システムによって造られた騎士を退ける事はほぼ不可能に近い。
何故なら彼らは圧倒的ステータスを持って居るからだ。
一度、有名なプレイヤーが「システム騎士がどれほど強いのか」という題材で検証ビデオを動画サイトに投稿したのだが、その結果はある意味悲惨であった。
そのプレイヤーはかなり強いと有名だったのだが、ある程度剣を交えただけ。5分もせず、システム騎士に蹂躙されたのだ。因みに、その動画により騎士はプレイヤーから「システム騎士」というあだ名を付けられることになる。
それはともかく、その強さは今もなお健在。バウレンと小隊編成によってパーティを組んだ事で『反逆者』の称号を共有した隊員達は、現れたシステム騎士を前に蹂躙されていた。
盾で攻撃を受け止めるも、盾ごと粉砕され、剣で攻撃してもその剣は砕け、放った矢は強靭な鎧に阻まれる。
一人、また一人と隊員が倒れていく。身体は光に包まれ、粒になって消えていく。
因みに、システム騎士に倒された者は直ぐに街の外へ強制転移される仕組みであり、『反逆者』の称号が消えるまで青の領土のどの街にも入れなくなる仕組みだ。
そんな絶体絶命の危機に、隊員は諦めない。彼らは隊長を信頼している。
「我らが隊長は、きっと策を持って居るに違いない」
他の者から見ればバウレンは異様であり、またその通りでもあるのだが、隊長からは大きな信頼を得ていた。
そして、隊長達の予感は良い方向で命中する事になる。
突如として、システム騎士達の動きが止まり、元いた場所へと帰っていくではないか。
それも唐突に。
「我らが隊長がやってくれたぞ‼︎ このままディクヌ側の兵を向かい撃て‼︎」
ここまでくればもう関係ない。隊長への信頼をより一層強固にさせ、彼らはディクヌに付く兵達を向かい打つべく準備を急いだ。
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小隊長達と別れたバウレンが向かう先は崩壊した領主館。完璧な奇襲であったとは言え、ディクヌ達も隊長とその領主。そう簡単に倒れたとは思えなかった。
エフェクトにより未だ瓦礫の残骸が残って居るが、それを気にせず突き進む。目指すは執務室があった場所。バウレンの調べではそこにダミアとディクヌ、そしてタケルが居たはずだ。
ウィンドウを操作し、武器を取り出す。
出現したのは彼の主兵装であるロングソード。彼と共に何度も戦いを勝ち抜いた相棒だ。『タルヴァール』と名付けられたそれを腰の鞘に収め、バウレンは瓦礫に埋もれた執務室を見渡す。
そこには面影のなくなった、凄惨な光景が広がっていた。
執務室は瓦礫で原型を留めておらず、机や本棚などのオブジェクトは破壊され見えない。
あちこちに瓦礫が散乱し、酷い有様だった。
しかし、ディクヌ達の姿は見えない。
腰のタルヴァールに手を伸ばしつつ進むバウレンに、背後から影に潜んだ誰かが襲いかかる。
ナイフ(・・・)を片手に影から現れたのはディクヌだ。スキル『潜伏』を使用しているのか、音も立てずバウレンに襲いかかる。
一度潜伏で姿を消した際、自分から姿を見せるか、音を立てるなどしなければ到底見つからない。
……そう、例外がなければ。
「見られていないと思ったか?ディクヌ」
タルヴァールを背中に構え、
「こい、『シェールドゥ』」
そう唱えた瞬間、背中に構えたタルヴァールが消え、代わりに巨大な盾が現れた。
端にデコボコの凹凸が付いたそれはバウレンのナイフを受けきる。いくら勢いに乗せたとはいえ、ナイフ一本で盾を弾ける訳がない。キンっと軽い音が鳴ると、ディクヌは盾を足場に背後に大きく跳躍した。
出現させた盾を消し、タルヴァールを出現させ背後を振り返る。
そこにはいつの間に消したのか、武器を持たず手ぶらのディクヌが立っていた。
「一応言い訳を聞いておこう」
それだけ言うと、手に光る線を引かせる。
暗闇すらも照らすようなまばゆい光はスキル発動時独特の光だ。
「『造武者Lv.4』 ロングソード」
ディクヌが持ち、タケル達にすら隠し通した自分のスキル名を今、唱える。
『造武者』。
新たに実装されたスキルレベルに応じた、自分が熟練度を持つ武器を文字通り造りだす、ディクヌが持つレアスキル。
造る故に武器は名は持たず、僅か10分程で散りになって消えるが、そのスキルレベルが高ければ高い程、武器はその性能を高めていく。
つまり、自分がどれだけ武器に手を伸ばしているかで、造り出せる武器の種類も増えていくのだ。
万能、又は器用貧乏にもなれるスキルであるが故に、扱いづらいスキルである。因みに、ディクヌが造れる武器の種類はロングソード、大剣、刀、大楯、ナイフ、銃の6種類である。
Lv.4に到達した造武者で造り出したロングソードを片手に構えるディクヌを見て、バウレンはクックック、と小さく笑うとディクヌに言う。
「俺がこんな事をしてシステム騎士の事を視野に入れていないとでも思ったか?」
右腕を大きく天に向かって向け、叫ぶ。
発動するのは少し前に取得したばかりの新スキル。その時はなんて皮肉だ、と思ったバウレンだが、その効果は今まさに彼が欲していた物だった。
「ガアアァアアッァァアアァアアア‼︎」
『革命の狼煙』
それがバウレンが手に入れたばかりのスキルであり、システム騎士に対して講じた新しい策だ。
当初は仲間にシステム騎士を足止めして貰い、主戦力全てを投入して一刻も早くディクヌを潰す予定だったのだが、このスキルで賭けに出る必要性は失った。
何故なら、このスキルの能力が
「自分を含めたパーティメンバー全員に付いている『反逆者』称号を隠蔽、更に敵と認めたプレイヤー相手に全ステータスを強化する。但し、前半の効果が適用されていなければならない」
と言うものだからだ。
これにより、今頃はシステム騎士が退却してある頃だろう。
つまり、バウレン達はシステムからの妨害なく反逆できると言うわけだ。
「成功させて貰うぞ。この革命を」
どうも、気まぐれです。
遅れました。すいません。
今回はちょっと駆け足気味です。
さっさと4章を終わらせたいという一心ですが。
前にも言った通り、4章で一回休みを頂きたいのでよろしくお願いします。
次回更新は来週。




