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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第1章 物語の始まり
5/70

首都ハナへ

ー1ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

土曜日の朝10時、この日条件付きでほぼ一日中ゲームに繋がる事を許されたシズ達はナナシに会いに来ていた。ナナシが起こした「エッチな装備」事件から一週間。あれからどうなったのかといえば、一部は受け入れられ、一部は拒んだといえよう。具体的にはーー


「シズはすっかりその巫女衣装が板に付いたねー」

「サヤだって気にいっているんじゃない」

「そうだねー、最初はこんな物着れるかー!って感じだったけど、結構動きやすいし、性能も良いもんね」

「ほー、つまりサヤは露出狂の一端があると」

「こら、タケ‼︎私は露出狂じゃないっ」

「はいはい、わーったよ。俺は改めて別の買ったから良いけど」

「タケはなんか騎士って感じだよね、ナナシはポンチョにマフラーとか……なんか厨二病っぽいよ?」

「うっさい、気に入ってるんだよこれ…」


と、いう訳である。

むしろ良く受け入れたものだ。シズの巫女装束モドキはともかく、サヤのエルフが来そうな衣装はちょっと、いやかなり露出があるものなのだから。本人曰く、「ファンタジー実感できるから」らしいが。しかし実際、この装備はかなり使える。肌の面積が少ない事で動きやすく、少しだが俊敏力を上げる効果がある為、装備者は体が少し軽くなった様な感覚を覚えるのだ。このゲームにて装備は動きを阻害する様なものであれば体を動かしにくくなるし、寒くも無いのに厚着の装備にすれば汗が出るなど、そういう細かい所に拘っているのだ。


話が逸れたが、ナナシは今充実した毎日を送っている。朝は昨日の成果を売りに出し、シズ達が学校なら1人で、たまには他のプレイヤーと狩りをする。昼飯を食べたらシズ達が来るまで装備を整え、みんな来たらレベル上げをし、強くなったと思えば別の街に映る。


それらを繰り返して早1週間、今ナナシ達はキョウの首都 ハナの一つ前の街、トーウにいる。今日はレベル上げをし、昼にはハナを目指す予定だ。

そして只今彼らはダンジョンのボス攻略の真っ只中である。


彼らを迎え撃つのはスケルトンキング。巨大な装備に身を包んだガイコツだ。2mの巨躯のスケルトンキングに向かってタケの大剣が振り下ろされる


ガッ‼︎ガッ‼︎


鉄と鉄がぶつかり合い鈍い音が生まれる。何度かの斬撃のぶつけ合いの末、タケはスケルトンキングの腕をバンザイ状態にする事に成功した。そこにすかさずサヤの矢が放たれる


流れる様に決まった見事なコンビネーションに、スケルトンキングの動きが一瞬止まる。

だが仮にもボス。


Monster skill: power atack

手に持った大きな棍棒に光を迸らせ、スケルトンの王が大技を放つ。例えダンジョンの中ボスでも、一撃で沈みかねない協力な技だ。

紫色の美しい輝きを持った棍棒を上から思いっきり振り下ろした。



「オラぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ‼︎」

しかし、ナナシがそれを許さない。

ナナシのテレフォンパンチが放たれる。大した速度も威力も無い筈のそれは、大きな音を立てて棍棒の一撃を真正面から止めた。

そして生まれた一瞬の隙をタケとシズは見逃さない。


「『パワースラッシュ』‼︎」

「『旋風』‼︎」

幾たびの戦闘を重ね更に威力の上がったタケの一撃と、シズの回転斬りが放たれる。それはスケルトンキングのHPを大きく削った。


Boss:Skeleton King

HP:450/2500

Status:正常


後一発。そこにナナシが現れる。その腰には刀が下げられていた。この1週間の間に貯めた金で買った、ここ最近のナナシの愛刀だ。


そして腰を下げ、居合の構え。

腕を引き鞘を(・・)刀から引く。

その間に鞘に角度を付けて引っ掛けるのを忘れない。鞘に引っかかった刀を貯め、十分に力が溜まった所で一気に引き抜く。


音無(おとなし)


デコピンと同じ要領で強化された高速不可視の一撃は、


Boss:Skeleton King

HP:0000/2500

Status:正常


文字どうり音を立てる事なくスケルトンキングの残り僅かなHPを全て削った。



スケルトンキングの体が光に包まれてきえる中、ナナシは技を放った事でその黒い刀身が剥き出しになった愛刀を鞘にしまう。

その仕草は正に侍。未だに使用して離さないポンチョに目を瞑れば、百戦錬磨の刀士に見えなくも……ない。


「すっげー、何だ今の⁈」

「ホント‼︎ 私ビックリした」

初めて見た居合い斬りに興奮気味のタケとサヤがうるさい女子高生の如くナナシに問いただし始める。


「まぁ、今はダンジョンの中だから、首都を目指す途中で、な」

まるで子供に言い聞かせる様に言うナナシ。

だがそれにブーブーと駄々を捏ねる子供の様な仕草をサヤがするから、余計シュールだ。


「よし、じゃあさっさとダンジョンから脱出してナナシを問い詰めるか」

そう言うタケに同意しながら、ナナシ達は外へ向けて歩き出した。


ー2ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トーウを出たナナシ達はキョウの首都、ハナに向かっていた。道中エネミーは出現する物の、他のダンジョンで鍛えた彼らを止める事など出来ない。お互いに信頼しあって居るからこそ生まれる連携で瞬殺して行く。


「なぁ、お互いどれだけ溜まった?」


タケが話しているのはエネミーを倒した時にドロップするアイテムの事である。決してやましい事では無い。決して。


「うーん、そんなに溜まってないね。みんなは?」


サヤの質問に残りの全員が首を横に振る。どうやら彼らも大した物は無い様だ。ちなみに彼らのメニュー、実はかなり簡潔に出来ている。ゲームでメニューを開くと大体こんな感じだろう


ステータス

装備

アイテム

オプション


しかしこのゲームのメニューは、


ステータス

アイテム

ログアウト


これだけなのである。因みにアイテムは只リストを見て、欲しい物を出現させるだけの簡単な作りになっている。つまりもしアイテムを渡したければ、まずアイテム欄から出したいアイテムを顕現させ、それを渡したい相手に手渡しするだけ。つまり、他のゲームみたいに面倒臭い手順を踏む必要は無いのである。


装備も同じく、只装備したい防具を着け、使いたい武器を持てば、それだけでシステムが装備したと判断するのだ。これは戦闘中の急に必要な行為を簡潔化する為である。

想像して欲しい。自分は瀕死、アイテム無し。そんな状況で、仲間が面倒臭い手順でアイテムを渡そうとして、間に合わず死ぬのを。シャレにならない。向こうが出して手渡しで渡された方が確実にやり易いのだ。


他のゲームならば、アイテムを選択、そして譲渡のコマンドを押して更に相手の名前を探さなけらばならない。他の人ならこういうだろう、すなわち、


めんどくさっ!


である。


閑話休題

改めてアイテムの確認を終えたナナシ達が歩き出す事30分。遂に赤い塔が見えてきた。キョウの首都、ハナ立つダンジョン『繋がりの塔』である。


「おぉ!見えてきた!」

「着いたー!」

「高いわねぇ」

「あれが繋がりの塔…」


見えてきた事の嬉しさか、喜びの声が上がる。更に歩く事5分、門に着いた。やってきた者を拒まない巨大な門。日本人からすれば鳥居にも見える。門をくぐるとそこは別世界だった。


赤を主とした街並み。江戸時代末期のそこそこ偉そうな人が住んでた様な家が所狭しと並べられている。あちこちにはエレベーターや馬車があり、まるで過去と現在の複合されたかの様である。


ナナシ達がポカンと口を開け、見惚れているとゴホンっ、と後ろから咳払いが聞こえた。どうやら立ち止まっていたらしく、馬車の動きを止めてしまっていた様だ。


「すまん、見た事無かったから見惚れていた」

「そうかい、いや、そうだろう?この昔と最新技術の調和、これがハナの見所なのさ。昔ながらの街並みに、まるで最初からあったかの様に技術が組み込まれている。」

「へぇ、面白そうだ。ありがとよ」

「おう、楽しんできな。繋がりの塔もここの醍醐味だからな」


そう言って馬車は去っていく。改めて見るとやはり目を奪われる街並みだ。これから更に驚かされるのかと思いながら、ナナシ達はハナの街を探索しに歩き始めるのだった。



ー3ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「繋がりの塔」それは各領土に一つずつ存在するダンジョンである。変わった装飾も無く、トラップも無いが、様々なエネミーが出現し、25層毎に強力なボスが出現する、経験を積む為にはうってつけ。


それがプレイヤーが持つ「繋がりの塔」へ対する知識である。ナナシ達はハナに着いて少し観光してからで翌日、昼にログインしナナシと合流した全員は繋がりの塔の入り口にあたる門の前にいた。


「さて、皆。繋がりの塔攻略の前に話したい事がある」


タケの言葉に首を傾げる全員。タケは続ける


「オレ達は今までの戦いで腕を上げた。しかし今回はこの繋がりの塔だ。一筋縄じゃぁ、行かないだろう。だからこそ、一階一階を全力でいく。分かったな‼︎」


「いくよ〜!」

「ええ!」

「おう‼︎」


皆、気合は十分。彼らは門を開け、繋がりの塔攻略に挑む‼︎ーーーーーーー


30分後ーーーーーーーーーーーーーーー

「なぁ、今何階?」

「24層じゃ無いかなぁ」

「じゃあ次が強いのか、行くぞおおおお」

「おおおぉぉうぅぅ……………」


ダラダラである。最初の威勢はどうしたのか、全員がつまらなさそうである。まぁ、その原因はエネミーにあるのだが、話は30分前に遡る。


威勢良く入った一層目。奥には4体のオークがいた。まだ気が付いていないのをいい事に、タケが好機!とばかりに突っ込む。


踏み込む一歩目で準備をし、

続く二歩目で力を溜め、

最後の三歩目で全力前進!


コレは別にタケがおかしくなった訳では無い

この1週間でタケが手に入れた高速移動用スキルの『俊足』だ。

踏んだ三歩目でスピードは上がり、タケに高速の壁を越えさせる。『ブースト』をも多用する事でタケは高速どころか音速すらも越えそうな勢いで間合いを詰めたのだ。


「『パワースラッシュ』‼︎」


スキルの発動条件である叫びと共に、振り下ろされる大剣は光を帯びる。


大剣専用、発声型攻撃スキル ーパワースラッシュー


声に出す事で発動され、インパクト時の衝撃を何倍にも膨れ上がらせる攻撃スキル。それに伴って帯びた光は、インパクト時の轟音と共に消えていった。


太刀筋が見れなかった、いや、攻撃にすら気付けなかったのか、仲間の一匹が倒れ、光になって消えていくのを見る事しかなかった他のオークを、シズによる薙刀の一刀とナナシの居合い斬り、そしてサヤの正確で無慈悲な矢が襲う。


「はっ‼︎」

実家で培われた薙刀の突きが


「音無」

音を聞こえさせない、不可視の一撃が


「パワーショットッ‼︎」

光を帯びた矢が、

それぞれ担当していた敵を穿つ。この間僅か5秒。スキルを用いた高速の奇襲を前に、オーク達はなす術を持たなかった。


して始められた繋がりの塔攻略。この奇襲が成功した事で彼らのテンションはうなぎ登りになり、彼らの攻略に手を貸す。


このまま行くかと思いきやーーーそうはいかなかった。まず、エネミーが弱すぎた。『俊足』と『ブースト』を用いたこの奇襲。実はこの奇襲、初心者にはまず真似出来ない。何故かと言うと、初心者がスキルを習得する事自体、あり得ないからだ。


そもそも、スキルの習得条件は様々だが、代表的なのが


-スキルの元に成る動きを何度も行い、見えない熟練度に寄って発現される

である。そして通常、初心者が早々にスキルを覚える事なんて無い。つまり、グレテフレーゼとの戦いと言う、初心者が受ける筈が無いだろう洗礼が、タケ達に一足早く上のステージに上がらせたと言えるのだ。

しかしここで疑問発生


ナナシは?


そう、ナナシの存在である。ナナシはその存在故に、ステータスを持ってはいるものの、スキルを覚える事は無い。共馬に貰った『覇王の眼』が例外なだけである。

ではどうやって『俊足』を発動しているのか。


答え 肉体の限界を超えればいい


肉体は鉄の如く、痛みも感じなければ疲れ知らないその体。数々の原理を応用し、疲れ知らずの肉体で動きを体に覚えさせる。多少の無茶も彼には効かない。故に、長時間の特訓の末、彼はシズ達と共に居る。


鍛え抜いたその力、今ここで使わずしていつ使う。今でしょ‼︎ーーーーーーーーゲフンゲフン

閑話休題


とまぁ、色々あって敵を軽く、そう、軽〜く倒すものだからみんなのテンションも下がっていくのだ。そして今に至る。


しかし彼らは気を引き締める。次の回は25層。そう、強さが桁違いのボスがいる階層だ。覚悟を決めて彼らは降り立つ。


繋がりの塔

攻略 25層目


そこに居たのは異形の怪物。虎とライオン、そしてチーターの顔を持ち、蛇の尻尾と人間の胴体。『マンティコア』の名を冠する怪物が叫びを上げた。


GuuoooooooooooooOOOOOOOOOOOO!!!!!!




ー4ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

場所は所変わって電子の海。そこには3人の人影がいた。内1人は共馬、もう1人は乱れたシャツを纏い、相当年を食っているのが分かる。最後はスーツ姿の女性だ。共馬が面倒臭そうながらも話す。


「んじゃ、ユーザーも増えてきたし、そろそろ「アレ」やって良いんじゃ無いか?」

「確かに、このゲームの本質が繋がりでありながらも、それに矛盾する様なこのシステム。彼らはどう動くのか、実に楽しみだ」

「でも、プレイヤーの批判は大丈夫なの?」

「それをどうプレイヤーが受け止めるかは本人の自由だ。それに今回の実験で手に入るデータ確実にオレ達にとっての得なる」

「分かったわ。私は落ちるわね」


そう言って女の方は消えた。どうやらログアウトしたらしい。続いて男も消える。


「さてナナシよ、お前はこのシステムで何を見る?俺に何を見せてくれる?」


1人残った共馬の囁きが木霊する。しかしそれを聴く者は誰1人として存在しなかった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

オマケ

タケ「よし、何か食べようぜ‼︎」

サヤ「そうね、ゲームで食べ物がどんな味するか知りたいし」

ナナシ「じゃあ、俺外で待つよ」

シズ「ちょっと、貴方の食べるのよ」

ナナシ「だけど俺、NPCだから食べる必要無いし…」

シズ「はいはい、それでも食べなさい。良いわね?」

ナナシ「分かったよ。じゃあ…」


1時間後

タケ「お前、どんだけ食ってんだよ…」

ナナシ「ん?30杯目だけど」

タケ「数の事聞いてんじゃねぇよ!」

シズ「そうか、NPCだから食べる必要が無ければ、食べれる上限も無かったのね…」

サヤ「これ全部でいくらすんだろ…」


これにより、パーティは一時期一文無しになったんだとか…

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