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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第4章 青の領土訪問編
47/70

遺した物

ー1ーーーーーーーーーーーーーーーーー

神隠しというものをご存知だろうか。

ある日人が忽然と姿を消し、そのまま戻ってこないというアレである。


(神隠しに会うってこんなかんじなのかね)

デントは円陣を組み直しながらそんな事を考えていた。


お互いに死角を消し合いながら進んでいた彼らは、一瞬にしてアンと呼ばれたプレイヤーを失う事で瓦解し、今まさにその現象に遭っているのである。


理由は不明、対処法も分からず、歯向かう事も出来ない。


ありのまま起こった事を脳内で反復しても訳が分からず、半ばポルナレフ状態に陥るデント。

放っておけばその内「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!」とか言いだしそうな雰囲気だ。


しかし事態はデントを待ちはしない。

唖然とするデントの耳に、続いて報告がされた。


「シン…シン⁈ クソッタレ、ヤられた‼︎」

新たな犠牲者の報せ。

また一人、仲間が消えた。

そしてそれに驚く事すら許されない。


次の瞬間もう一人、姿が消えた。




10人いたのが、たった数分で7人にまで減った。全くの予兆なしに、だ。

声にならない悲鳴を上げるが、それで仲間が戻ってくる訳でもない。

中には錯乱しかけた者までいる。デントが取り合う事で落ち着かせようとするが……


「落ち着けッ……ン⁈」

「クソッタレ‼︎ 『超電磁(ボルテック)エリア』ぁ‼︎」

2mにも及ぶ巨大な斧を背中に背負った男が錯乱したように暴れ始め、駄目押しとばかりに広範囲の敵をスタン、麻痺させるスキル『超電磁(ボルテック)エリア』を発動させる。


錯乱からの無差別な攻撃。

戦略的には赤点を貰いそうな、手を読めない敵に対しての軽率な攻撃。

しかしそのスキルが発動した瞬間、常人より数倍聴力が優れたデントの耳が、ある音を拾った。




それは草が擦れた事で起きた音。

過去4回に渡って意味不明の死を遂げたデントが聞いた事が無かった、常人なら気にも止めない様な小さい音。


その音の原因が何なのか、捉えたデントは長年の経験と知識を元に探り始める。

脳内時間にしておよそ30秒、脳の情報処理能力に身をまかせる事で現実時間の倍以上の時間を脳内で過ごしたデントは、意外と答えが簡潔だった事に気付いた。




今までデント達は自らの死因が何かしらのイベント、又は即死系のトラップだと決めつけていた。

しかしたった今聞いた、普通なら聞き逃す様な僅かな音が、デントのその考えをひっくり返したのだ。


仲間が放ったスキルはスタン系。

対象を取らず、範囲内に居るパーティメンバーを除いた全てにスタン、且つ僅かな速度低下のデバフを強制的に掛ける強力なスキルだ。


そして擦れた音が起きたという点を踏まえ、デントは確信した。


(潜伏系のスキルを持ったエネミー‼︎)


まず、潜伏が何なのかを説明しよう。

潜伏系のスキルはシズが使用していたような、敵に視覚的に認識されない様にするスキルだ。

しかし、そのスキルは視覚的に透明になる(・・・・・)だけであって、存在そのもの(・・・・・・)を消すスキルでは無い。


デント達を襲ったナニカは、偶然(・・)にも仲間が放ったスキルの範囲内におり、スキルの性質上、移動速度が低下。

偶然(・・)近くにあった草に擦れ、その音をデントの聴覚がとらえた、という訳だ。


偶然に次ぐ偶然、幾つものそれが重なった結果、デントは謎現象の正体を見破ったのである。



しかし、謎現象が姿を隠すエネミーによる者だと分かったとしても、一丁前に対策が出来るわけもない。姿を消すと分かったところで、一体何が出来るというのだろうか?



答えは否、である。


「ダンジー‼︎」

また一人、今度はガッと鈍い音を鳴らしながら消えた。『超電磁(ボルテック)エリア』の影響を受け続けているのか、今回は攻撃と衝突の衝撃が音になってデントの耳に届く。


今までは余りの速さに衝撃すらもデント達の認識を置いて行っていたのが、デバフを受け移動速度が低下した結果、デントの耳にしっかりと届く程弱体化したのだ。


しかし、それでも把握出来ないほどのスピードを持ち、潜伏スキルによって視認すら不可能。

はっきり言って無理ゲーである。


しかしそこで諦めるデントでは無い。

先程まで絶望的な状況だった所に、一筋の光明がさしたのである。


「『サーチ』‼︎」

デントの身体から波が生まれ、辺り一帯を走る。その瞬間、デントは姿を消したエネミーの反応を感知した。


(よしっ‼︎)

目論見が上手くいった事にグッと拳を握り締めるデント。

では何故、今までエネミーが『サーチ』に引っかからなかったのか?


その答えは同じく、潜伏系のスキルよる物だからだ。

潜伏系のスキルはその性質上、敵に物理的に視認されない限りは他因の方法 (ナナシのデータごと分析するレーダーを除く) で捕捉される事がないスキルだ。


それが何故レーダーに捕捉されたのか?


その答えは速度低下のデバフによる物である。

デバフは幾らかのパフを弱体化する。

つまり、偶然あたったデバフがエネミーの潜伏を弱体化、デントの『サーチ』に反応したのである。


なんて偶然だ、とデントは思う。

偶然に次ぐ偶然も驚くべきだが、それらを引き寄せたデントも何かしら天運でも持っているのかもしれない。


しかしデントにエネミーを倒す力は無い。

探索系のスキルばかりを手に入れた事に今だけ後悔し、デントは残された力を振り絞ってあるスキルを発動した。


「『情報(データ)拡散(スプレッド)』‼︎」

支援系スキルは2種類存在する。

パーティメンバーにのみ効果があるパーティ型と、

それ以上の人数、俗に言うレイド型の二つだ。


30分前からこの阻みの孤島に別の集団が入ってきたのは知っている。その内の一人がディクヌだという事もデントは知っている。

そして今のデントの仲間の中に奴を倒せるプレイヤーはいない。


(手柄をやるぜ、ディクヌ‼︎ だからあいつを倒してくれよ‼︎)

つまり、デントはエネミーを倒せる可能性があるディクヌに後を託し、自分が持つエネミーの情報を発信したのである。


(後は頼ん…だぜ)

ディクヌ達に情報が行き渡った事を確認した瞬間、デントの意識は闇に沈んだ。


デントが最後に見たのは、闇に浮かぶ赤い電光を迸らせた眼だった。




ー2ーーーーーーーーーーーーーーーーー

森に入ったナナシ達の眼前にそれ(・・)が現れたのは、ナナシ達が森に侵入してから10分程の事だ。


眼前にウィンドウが開き、阻みの孤島の全体図と共にある一帯のポイントととあるエネミーの反応が映される。


ここ何度か阻みの孤島に入っているグループが誰のかを把握していたディクヌは、数秒ほど思案してから言い放つ。


「これはトレジャーハントで有名なデントのだな。今まで4回も失敗し、俺たちにこれを託した。

つまり、このマップに映るエネミーが恐らく彼らが失敗し続けた原因なんだろう。

恐らく姿を消す潜伏系スキル持ち、こちらでは対策が立てられるからな。

よし、仇は取ってやるぞ、デント」


どうやらディクヌは物分りが良いらしい。


それは一旦置き、そのポイントに着くまでいつも通りに行こうと決まり、ナナシ達は森を進む。


ここで彼らは一つ間違いを起こした。

ここでデント達のジャングル内での進み方を思い出してみよう。


彼らは一列に並び、足音を均一化する事で耳の良いウルフジャンガーから姿を消していた。


しかし、ナナシ達は無造作にジャングル内を進んでいる。グループを組んで移動しているとはいえ、無警戒とはどういう事だろうか?

勿論、ディクヌはウルフジャンガーの存在を知っている。なら何故忠告しなかったのか?


ジャングルを進むナナシ達に向かって複数の影が進む。強靭な身体をしならせながら進むのは、阻みの孤島の住民であり、デント達がやり過ごしたウルフジャンガーだ。

影に上手く紛れながら進む姿はまさに狩人(ハンター)


しかし、データ毎分析し全てを把握するナナシを前に、姿を隠せるはずも無い。


「前方20m、10体のエネミー集団」

素早くウルフジャンガーを発見し、全員に通達する。

すかさず放たれる、サヤとマキによる狙撃。『進化』によって強化されたクロスボウとスナイパーライフルから放たれるのは2条の光。

『パワーショット』によって強化され矢と弾丸だ。スキルによって強化され、物理法則を超越したそれは、少しのズレもなくウルフジャンガーの先頭を行く2匹の眉間目掛けて飛んでいく。


しかし、デント達が戦う事を躊躇するウルフジャンガーは一筋縄ではいかない。


--Monster skill: energy shield--

先頭の2匹は盾になる様にスキルで盾を作り、それぞれに放たれた遠距離攻撃を防ぐ。


そしてその瞬間、ウルフジャンガー達の中でスイッチが入った。

先頭を走る2匹は盾を維持し、背後に続く8匹はそれぞれ口や爪から風を放出させる。


これぞデント達がウルフジャンガーとの戦闘を避けた理由。まるで打ち合わせていたかの様に、自然に決まった陣形を組み確実にこちらのHPを削ってくる戦法。

強力な盾で接近を阻み、遠距離(ロングレンジ)からの一方的な攻撃。

初心者は勿論、上級者も倒しかねない戦法だ。




但しナナシ達に道理が通れば、の話だが。


「『バレットストライク (狂化駆動(バーサクドライブ)限定発動、移動速度強化付加』‼︎」

「『城砦崩し (移動速度強化付加)』‼︎」


メカタの移動速度強化を併用しつつ、突進する様に突進突きを繰り出す。タケは狂化駆動(バーサクドライブ)を使用し、ナナシお得意のデータ探知により見つけた盾の脆い部分を、体重移動と常人離れした身体能力で突いたのだ。


そしてウルフジャンガーは連携が強いのであって一体一体はさほど強力では無い。

続くナナシとタケの一撃によって、先頭の2体は呆気なくHPを減らした。


そして攻撃は止む事を知らない。

背後に控えたサヤ達の的確な援護射撃が、残ったウルフジャンガーを殲滅しようと空を裂いて飛ぶ。


そして3分もしない内に、ウルフジャンガーの群れは殲滅されたのである。



ナナシ達は進み始める。

デント達が遺した、謎を暴く為に。

どうも、気まぐれです。

余り話が進んでいませんが、次回で動かせるつもりです。


では次回更新は来週の何時もの時間に

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