阻みの孤島
1週間おきの投稿、すみません。
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取り巻きはレンに任せ、メカタは船長目掛けて走る。
お互いに手の内を知らず、先程の『シザーアンカー』からフックを使ったスキル構成だとしか判断出来ないメカタは、
「先手必勝!」
最初の一撃は最速で、こちらの手の内を晒さない。ナイフを逆手に持ち肩目掛けて袈裟斬りを放つ。
しかしそれを読んでいたのか、ナイフの軌道上には船長のフックが添えられる様に待ち構える。
「当たらんわぁ!」
「それはどうかなっ⁈」
このままではフックに引っ掛けられる事を察したメカタは、ある技を試す事にした。
それはメカタが持つナイフが船長のフックと接触したその瞬間。
「『小突き』!」
ふと、スキルを発動する。
使用したスキルは前に向かって3歩ほど突きながら移動する『小突き』。
余りの威力の少なさに使うプレイヤーが少ないスキルだが、フックとの接触を避ける為には最適なスキルだった。
ナイフが黄色の光を浴びて、攻撃の最中だったメカタを強制的に動かす。
スキルの利点は、例えどんな体勢だろうと発動すれば身体を動かしてくれる所にある。
それが例えどんな体勢だったとしても、だ。
「はっ!」
フェンシングの突きの様に左手を背後に動かし、目に見えぬ速さでナイフを突き出す。その際に足を前に運ぶ事で前に強制的に出る事も忘れない。
スキルで動くのでは無く、動く為に(・・・・)スキルを使う。
その動きに、船長すらも驚愕した。
元々は斬りつけてきたナイフをフックに引っ掛け、そのまま自分のペースに引き込もうとしていた所に、虚を突かれた形だ。
当然ながらそんな動きをしてくる事を想定していた訳でも無く、船長には隙が生まれる。
そしてその隙をメカタが見逃す筈もない。
『小突き』は威力は低いが、スキルディレイによって生じる疲労もまた少ない。故に、メカタの追撃は速かった。
軽い疲労感を感じながらもナイフをそのまま横薙ぎに払う。腰を回しながらの攻撃ながらも、力はそんなに入っていない。
だが隙を見せた船長を攻撃するには十分だ。放たれたナイフは船長の胴を切り裂き、少なくないダメージを与え「出血」の状態異常を与える。
「痛っ⁈」
以外と痛かったのか、船長から声が出る。
が、メカタはそれを気にする余裕はない。
先手を取ったとはいえ、まだHPは削りきれていないのだ。更に気を引き締めるメカタは、
「もうやめだ。撤収、撤収ー‼︎」
「……へ?」
船長が放った言葉に気の抜けた声を出した。
今、なんて言った? 撤収?
言葉がメカタの脳内で何度も再生される。
そして
海賊達は船長からの命令に忠実に答えた。
「撤収ー‼︎撤収ー‼︎」
口々に撤収の意を唱え、ロープとフックを巧みに操り海賊船へと戻る。その姿はまさにターザン。
それを見てはハッと気づいた様にメカタは船長を捕まえようとするが、
「戦力的にはもう負けたも同然だからな。これ以上の損害は意味ないと判断した結果だ。」
それは事実だ。
損害だけで言えば圧倒的な敗北。
全滅しないだけまだマシと言えるレベルといえよう。
「あばよ、てメェら。
次は金目のモン根こそぎ取ってやる」
そういって船長はフックを駆使して海賊船に戻る。
予め帆を張っていたからか、船はそのまま颯爽と海域を離脱していった。
あまりの潔さと手際の良さに、メカタ達は唖然とすた態度を取らざるを得ない。
「……ふざけるなっああああ⁈」
……ふと全ての状況を理解したメカタがそう叫ぶのはその数分後であった。
海賊の襲撃から5分、船の応急修理を終えて再び進み出した一同。
メカタがやるせなさからムスッと機嫌を損ねるなどの事態はあったものの、途中からシステムによるショートカットを多用しつつ進む船は遂に目的の島へとたどり着く。
船頭に立つナナシ達を、海に囲まれた島が出迎えた。
大部分を樹海が生い茂り、所々から聞こえる呻き声や唸り声が緊張感を際立たせる。
その中心には小規模ながら山が聳え立つ。
いままで見た事がない景色におぉ、と驚きを隠せない一同。自分の領土が驚かれている事に満足しているのか、船員達はうんうんと首を傾げるがそれを気づかれる事はない。
ここは青の領土、その北の最果てに位置する絶海の孤島。
血に飢えた獣達が群れる樹海と、中心にそびえる山の内部に建つ神殿が冒険者達を待ち受ける島。
かつ、いままで何人ものプレイヤーの進みを阻み未だ開拓されない唯一の島。
その名も「阻みの孤島」
帆を畳み、碇を下すナナシ達を受け入れる様に、一際強い潮風がナナシ達の頬を撫でた。
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予め用意してあったボートに乗り込み、ナナシ達は阻みの孤島に上陸する。
ボートが流されない様に固定しいざ出発、といったところで、既にこの島を経験済みらしいディクヌが注意事項を述べる。
「いいか、今からこの「阻みの孤島」攻略に挑む訳だが。お前達も見ただろうが、この島には既に先客がいる」
そういって沖を見るディクヌに全員で視線を背後に向ける。
そこには二隻の船があった。
一つはナナシ達が乗ってきたレス ピオニア号、そしてそこから少し離れた所にもう一隻、別の船がある。
砂浜を良く見れば、自分達がボートを固定した場所から数メートル離れた所にボートが三隻程固定されている。
つまり、誰かが自分達よりも先に来たという事だ。
「この場合、俺達はその先客と鉢合わせする可能性もある。そういう時は先客優先で通すのがマナーってやつだ。
後は助け合うこと。
例え仲が悪かろうと、誰かがピンチな時は必ず助け合う事、以上だ」
そういってディクヌは樹海に入っていく。
ディクヌの注意事項を頭の中に入れつつ、ナナシ達はあとを追って樹海へと足を踏み入れるのだった。
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草木が生い茂り、蔓や葉が太陽の日差しを遮る事でそこは涼しく、暗い。
見た事がない虫や植物が蔓延るそこは、自然の宝石箱だ。時折流れる微風が葉にあたりササァ〜と気持ちの良い音が辺りに流れる。
そこに聞こえるザザッ、ザザッザ、ザザザッという音。地面まで生えた大量の草と蔓が踏まれる事に寄って音が鳴っている。
小刻みに、かつ不規則に音がなるのは数人のグループで移動している証拠だろう。
そのグループは十人に及ぶ大所帯だったのだから無理もない。
そのグループの先頭を行く、頭に工事現場で使う様なヘルメットとヘッドライトを身に付けた男、デントはもう見慣れた光景にため息を吐きつつ前に進む。
デントは青の領土では有名な、知る人ぞ知るトレジャーハンターだ。
ヘルメットにヘッドライトという、戦いには全く使えない装備をトレードマークにするデントは、仲間を引き連れ行く日も行く日もトレジャーハントに出かける。
何時しかそのトレードマークと幾多の島を開拓してきた実績から「石頭の探索者」という二つ名が付いた時は、その恥ずかしさに地面を転がったものだ。
既に消えた筈の厨二病が再発しつつ、デントは今日も仲間と共に宝を探す……
なんてモノローグは置いといて。
デントが阻みの孤島を見つけたのは約一ヶ月前の事だ。
自信満々で島に突入したは良いものの、デント達の攻略は必ず決まった場所で終わる。
遺跡に入る手前の樹海、その終盤でデントは必ず攻略を止める事になるのだ。
原因はデントを含めた全員の唐突な死亡。
死因は……不明。
余りにも呆気ない、かつ不可解な死亡。
それを調べる為にデントがこの阻みの孤島に入った回数は数知れず……とまでいかないが、5回目の挑戦である今回は目、つまり数を増やしての突入だ。
既に5回目となると目的の場所への最短距離も良く分かる為、一直線に突き進む。
周りに生い茂る草木を掻き分け、僅かに鳴る音を頼りに敵との接触を避ける技術はデントの十八番と言っても良い。
ふと僅かに聞こえた音に反応し、腕を横に伸ばして進行停止の合図を出す。
デントの後を付いていた仲間達が合図を見ると、歩みを止めて息を殺し始めた。
仲間達は知っているのだ。
デントの敵察知能力は幾度となく彼らを助けている事を。故に、デントの妨げにならない様に音を出さず、ただジッと動かずに息を殺すのだ。
ある種の信頼関係がそこにあり、またデントも彼らの期待に応えるべく耳を澄ます。
ザザザッ、ザッザッザザ
地面を踏みしめる音が、彼らから一時の方向より発せられる。
その不規則さから相手が集団だと推測したデントはハンドシグナルを駆使して仲間に身を屈める様に指示する。
そして仲間達がそれに従って姿を隠したその数秒後、更に音がハッキリと聞こえる様になりその正体がかろうじて見える所まで近づいた。
異様に発達した脚に身体を覆う銀色の皮。
目は軽く血走り、口から見える鋭利な牙は全てを裂く。
半人半浪のその姿はまさに狼男。
彼らの名は「ウルフジャンガー」。
樹海を徘徊する、阻みの孤島の住人だ。
システムにて定められた場所を徘徊し、見つけた敵を倒すという住人と言えたほどでもないのだが、その力は脅威の一言に尽きる。
ウルフジャンガーの一番厄介な所はその数と連携の良さ故だ。
彼らは最低でも10匹の集団で活動する。
個体がそれぞれで自立した行動を取らない為に各個撃破していくという戦法が取れず、見事な連携を取る集団を引き離して戦うといった事が出来ないのだ。
幸い、嗅覚は狼の様に発達しておらず、こうして息を殺せばやり過ごす事が可能だ。
数秒後、足音が少しづつ小さくなっていく。ウルフジャンガーの姿も消え、デント達は彼らと接触する事なく事を終えた。
やがてウルフジャンガーが完全に消えた事を確認すると、再び彼らは進行を開始する。
ザッ、ザッ、ザッ
極力音を立てず、全員で一定の歩幅で同時に進行する。
全員が一緒に動き、地面を踏み締める音を均等にする事で音を勘付かれずに進むのだ。
そうして進む事数分。
草木を手で分けた先に、木に括り付けられた赤い布を発見する。
これはこの先に謎の死が待っているという合図である。
統合スキルである『探索者』の中から『マーク』のアビリティを発動し赤い布を括り直すと、腕を横に伸ばして後ろの仲間達に合図を出す。
その合図を確認した仲間達は一直線に並んだ陣形から一変、互いの背中を内側に回す様に円陣を組み始める。
一応半径数メートルに存在する反応を探知するアビリティ『サーチ』があるのだが、既に何回も試しては反応しない事に諦め、デントは使わずにいる。
故に、お互いが死角を消し合うこの円陣を組んで進むしかないのだ。
ジリジリと音を立てながら、阿吽の呼吸で円陣を崩さず前に進む。
既に例の場所にいる。何が起こるか分からないこの状況で、音を立てずに円陣を組んだまま進むのは度胸がいるだろう。
そしてデント達が数メートル進んだ瞬間、それは起こった。
「……あれ?アンは?」
ドクン、と心臓が強く波打つ。
誰が言ったのだろう。しかしその言葉はデントにここ4回の挑戦で起きたあれ(・・)を思い出させるのに充分な言葉だった。
デントを含んだ全員が組んだ円陣では、デントが進む先の先頭に、アンと呼ばれたプレイヤーは丁度デントの真後ろにいた、とデントは記憶している。
恐る恐る後ろを振り向く。
その間も心臓の鼓動は強くなる事を止めない。
信じたくないという思いが、心臓の鼓動を更に早くする。
そこにアンの姿は……
「な、なんでだよ……?」
居なかった。
まるでアンが居た部分だけが、ハサミで切り取られた様に居なくなっていた。
しかもそこは空白があり、円陣が崩れている。まるでそこにアンが居た事を強調するかの様に。
「おいシン、カイ! アンと三人して後ろを見張っていたんじゃなかったのかよ⁈」
「分からねぇ‼︎ 今さっきまで俺たちはお互いが見える様に見張っていたんだ‼︎ アンはいきなり消えたんだよ‼︎ 」
「チッ、これで5回目かよ…‼︎ 」
質問の後にそれを聞くのは意味がないとわかったデントは再度指示を出す。
襲撃者の手口を考えるより、今できる事をやった方が効率が良いと考えた結果だ。
円を小さくする事で、消えたアンの穴を埋める様に円陣を再び組む。
謎にありつく為に足掻くデント達を嘲笑うかの様に、その場に強い風が吹いた。
「………ん?」
どうも、気まぐれです。
活動報告でも言いましたが、色々と用事が立て込んで先週は投稿出来ませんでした。
そして先週から書いていた分から急ピッチで仕上げたのですが、それで5000文字って…
どんだけ他の人は書いてんだよ…
とまぁ、いろいろありますが、4章を何とか書き終わらせようかと思います。
因みに活動報告でも書きましたが4章が終わり次第、ストック貯めをする為に少しの間休載しようかと思います。
詳しくは活動報告に。
それでは来週、何時もの時間に




