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VRのその先に  作者: 気まぐれ
第3章 戦争編
38/70

ゆれる世界に

ー1ーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日、世界に衝撃が走った。

世界中の話題を呼んだVRMMORPG「コネクトオンライン」が、配信されて9ヶ月後にして遂にアップデートを果たしたのだ。

その完成度の高さとバグの少なさから「完成されたゲーム」とまで呼ばれたコネクトオンラインがアップデートを果たしたという情報は、一気に世界中に駆け巡ったのである。


そしてそれは言うまでもなく、これから先に起こるであろう波乱の幕開けでもあった。


「コネクトオンラインVer.2.0 "結束(ユニオン)の時代"」


その名でアップデートされた新たなアナザースは、世界中で受け入れられ何千人、何万人もの人数を熱狂させる。

既に圧倒的な完成度を持っていたこの作品がアップデートされ、新たな要素を迎えるのはゲーマーとしては嬉しい限りだろう。


そしてそれはタケ達も同じく、未知なる要素への希望とこれから待つであろう大きな冒険への期待に溢れたスタートでもあった。





「結果は上々、と言った所か」

新コネクトオンラインのダウンロード件数が10万を突破したウィンドウを見て、共馬はそう呟いた。気のせいか、その表情は苦々しい。


「顔と言葉が食い違っているぞ?」

そしてそれを追求する様に、ウィンドウから声が出る。その無機質な声は、共馬がいる施設にある全てのマシンに繋がっているアインシュタインのものだ。

そしてそれを見抜かれた事に腹がたつのか、「知らんな」とそっけない態度を取る共馬。それが可笑しかったのか、アインシュタインは無機質にしては笑いの含んだ声で語り始めた。


「まぁ、君としては心配だろうなぁ。

何せ何万人という数の人間を、アナザースという名の巨大な実験場に送ってしまうのだから。

まぁ安心したまえ。戦争が終わった今、大掛かりな実験を行うつもりは無い。

暫くはゲームの管理に勤しむとするよ」


共馬は知っている。

この新しい世界、アナザースは非人道やらなんやら言われかねない、他の場所では出来ない様な研究を行っていることを。


元々、今回行った戦争のテーマは「法律から解放された人間が欲望のままに行動するか否か?」だ。

人間は必ず何かに縛られて生きている、とアインシュタインは考えている。

法律、常識、ルール…ありとあらゆる縛りは人生の付き物だ。

そしてそれらの鎖が解けた時…人間は本能の赴くままに行動するのか?を検証したのが、アインシュタインの考えた「戦争システム」だ。

一定のいわゆる「レベル上げ」の期間を与え、戦力が整った所で「戦争」システムを発動させる、と言うのが大まかな筋書き。

そして結果はアインシュタインを大いに喜ばせる事となる。


「しかしアルベルトは期待出来るな。

私が見た中で一番、欲望に塗れた目をした男だった」

アインシュタインは期待の籠った声でそう言う。そしてそれを聞いた共馬が呆れた様に息を吐いたのは言うまでもない。


「どうした?君はアルベルトが何をするのか興味が湧かないのか?」

「湧くといえば湧くな。

まさかアナザースでクーデターを起こし、上層部を丸々支配、恐怖政治で治めたのは流石の俺も驚かされた」


それは事実だ。証拠として、アルベルトが支配している所で共馬が真面目な顔で「マジか…」と呟く瞬間をアインシュタインがパソコンに内臓されたカメラで押さえている。バレたらタダじゃおかないだろうが。


しかし、民主制の国が多い今の世の中でゲームの中でとは言え、恐怖政治を持って独裁国家を築き上げたアルベルトに驚いたのもまた事実だ。

生まれる時代が時代なら、強大な独裁者になっていてもおかしくないレベルである。


「しかし結局はアナザースの中でだけの話だ。見ている分には楽しめるし、別に何かしら危惧する事もないだろう」

「ああそうかい」

あくまで観察者としてのスタンスらしく、興味無さげにそう言うアインシュタインに答える様に、共馬はハァ、と溜息をつくのだった。




ー2ーーーーーーーーーーーーーーーーー

アナザースは大きく分けて三つの種類の土地がある。

一つは中心の、始まりの街とそれを囲む様に広がる「共同フィールド」

もう一つはそれぞれ領土に分けられる「領土フィールド」

そして最後にどの領土にも属さず、凶悪なモンスターがたむろする「未開地フィールド」


この未開地は、プレイヤーの影響を受けておらずアインシュタインが作った独自の食物連鎖の下に成り立っている。

そして今、その未開地フィールドに値する南東の荒野で1人の男が全長3m程の巨大な狼を相手にしていた。


HP:700/2081


しかし、男のHPは風前の灯火だ。もはやピンチどころではなく、死=ゲームオーバー寸前といった所。


「ガァァァァァアァァァァァァァ!」

「やれやれ……此処までリアルだと怖いを通り越して凄いと思うな」

太陽の光に反射して鮮やかな煌めきを見せる漆黒の毛皮を身に纏い、その鋭い爪と牙を見せながら咆哮する狼を前に、男は最近のVR技術に関心するという場違いな感想を口にしていた。死ぬ寸前の男の言葉では無い。


「無駄無駄ぁ‼︎」

狼がその立派な右前脚を振るって攻撃するが、男はそれを右手に持つ黒い剣で弾き、前脚を上に押し出す。

続く左脚の攻撃も、左足を軸に回転する事で難なく躱した。

男は余裕を持っている様に見えるが、実際に躱す時、狼の前脚はかなりスレスレで避けられている。

男はワザと、それこそ余裕が幾らでもあるというかの様に、最小限の動きで躱す事で常に余裕を持って敵の攻撃を避けているのだ。そこに死に絶えの姿は見えない。


そして両の前脚を避けられた事で胸元に生まれた隙を、男は見逃さない。

一瞬の内に間合いを詰め、狼の胸元に肉迫する。そして……


叛逆する一閃(リベリオンスラスト)


発声型スキルのトリガーを引く。

それを合図に、右手に持つ剣が黒く濁った光を放ち始めた。

瞬間、頭に浮かぶのは蹂躙される黒の領土のプレイヤー達、そして聖剣を使って黒の領土プレイヤーを虐殺する1人の少年。

その少年がニカっと笑った瞬間……


「黙れぇぇぇぇぇぇ!」

男が叫ぶ。先程までの余裕が嘘だったかの様に吹き飛び、憎悪に狂った眼で目の前の狼を睨みつける。


ーー自動発動(オート)スキル 「荒れ狂う叛逆の牙(リベリオンバーサク)」を発動、精神を落ち着かせ、スキルの攻撃力に転換します。


システムメッセージが聞こえたが、それに意識を割く余裕も無い。憎悪が急速に消えていく感覚を恨みながら、男は展開していた叛逆する一閃(リベリオンスラスト)をそのまま狼の胸元に放つ。


黒く濁った光が斬撃を形作り、傷を付けた場所と数分違わず斬りつける。

そしてそれは何度も、何度も何度も、最初に傷を付けた場所を斬りつける。

様々な場所を斬りつけられるより、同じ箇所を何度も斬りつけられた方が傷が深くなるのと同じ様に、最初は極小でしかなかった傷は1分もしない内に致命傷とすら呼べるレベルにまで深くなっていた。


「グルゥゥゥゥ……」

傷が深くなったからか、低く唸り声を上げる狼。しかし限界だったのか、遂に倒れ光になって消えていった。


敵は消え、勝者となった男だけが残った荒野に風が吹く音が残る。男が心臓の鼓動を落ち着かせようとしていると、ふと第三者からの声が掛かった。


「荒れに荒れてるね。

まぁ、こないだの事を思い出したら仕方ないって言えるけどさ。」

そう言って近づく少女に男は「ケッ」と素っ気ない態度をとる。どうやら知り合いらしく、本当に嫌っている訳じゃない様だ。


「で、これからどうするの?」

「決まっている」

少女の問いかけに、男は一つ返事で返す。

その眼には深い憎悪と、それよりも更に深い決意が見え隠れしていた。


「白の領土を、帝国とやらをぶっ飛ばす」


どうも、気まぐれです。

前回を送れて載せたので、今回は早めに載せました。

字数が少なくてすみません、少し前にいっぱい書こうって言ったのに……


とまぁ、今回は言わば答え合わせです。

戦争編で生まれた幾つかの謎について答えたので、読み返してみてください。


総合PV7000突破‼︎

嬉しい事ですね。

一万超えたら記念SS書こうかと思います。まだまだ先の話ですが。


次回更新は来週に

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