再会の話と試合
遅れてすいませんでした。
次回からは遅れない様に気を付けます。
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「なぁシズ。そろそろ離れてくれないか?」
「なぁマキ。離してくれへんか?」
「「やだっ‼︎」」
ここは赤の領土の首都ハナの南東近くにある、公園とは言い難い広場のような場所。
そこにはそれぞれ女性に子コアラの如く体にしがみつかれ、身動きの取れなくなっている男性が2人。
端から見れば、場所を問わずイチャイチャしているバカップルにしか見えない。
他の男性が見れば己のモテなさに神を呪う、そこらのカップルに八つ当たり諸々、ナナシにバレンタインの惨劇を思い出させるだろう。 (詳しくはバレンタインSSを)
しかし、その内容を聞けば少しは女性の方に同情が芽生えるだろう。
少なくとも1人には。
「なぁ、シズ」
「無理。今はナナシから離れたくない」
「マキぃ」
「無理。今は離れられない」
言わずもがな、ナナシとシズ、ヤマトとマキの二人組である。
「う〜〜〜〜」という可愛らしいうめき声を上げながら頭をすり寄せてくる2人に苦笑をこぼしながらナナシとヤマトは昨日、天元山で起きた事を思い出すのだった。
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謎の3人組が去った後、動ける様になった数人で気絶していたプレイヤーを起こしに掛かった。
助けに行く筈のプレイヤーまでもが倒れて気絶してしまったのは誤算だったが、気絶した相手を起こす気付け薬を使用しての救助だったのが救いか。
タケルが思ったよりも早く救助できた事に安堵を覚えたのは言うまでもない。
そしてナナシが少し前の謎の攻撃で気絶したタケを起こし、いざ救助、と来た所でそれは来た。
「ナナシ…………?」
いつの間に起きたのだろうか、呆然とした様子のシズがそこに立っていた。
その目尻には既に雫が貯まっており、今にも決壊寸前のダムを連想させる。
「よ……よう」
ナナシの口から久し振りに再会したとは思えない言葉が出る。
実際は、久し振りに会ってどうしようか未だ決めあぐねていたのが原因なのだが、端から見れば「抱きしめてあげろよ‼︎」とか言われそうなくらい軽い返事だ。
そしてその軽い返事にシズは
「会いたがっだよ〜‼︎」
それはもう、決壊したダムの如く。目からは涙を、口からは頼りない声を上げながらナナシに抱きついた。
「ヤマト〜‼︎」
「コラッ‼︎抱きつくなや‼︎」
良く見れば、少し離れた所でヤマトがマキに抱きつかれている。
その涙に濡れた顔を見れば微笑ましい物だが、ヤマトの台詞と顔に注目すると、それも逆に嫉妬の炎に包まれるだろう。
良く見ると、マキがヤマトに抱きついた事でその体に似合わない豊満な2つの果実がむにぃっと形を変え………
とまぁ、ここまで言えばもうお分かりだろう。そう、ヤマトがマキを遠ざける理由。
それは成長に伴い、まるで身長を犠牲にして育ったかの様なマキの胸が体に当たって色んな意味でヤバイからである。
(なんでゲームでこんな感触まで再現すんのや………!恨むで、共馬!)
その日、ヤマトは進んだVRの技術と、それを実現した共馬を今ほど心底恨んだ事は無いと言う。
しかし、薄く赤くなった顔を見る限りでは満更では無さそうだが。
「リア充爆ぜろ」
「もげちまえば良いのに」
「あんなロリ巨乳が彼女とか…解せぬ」
そして周りの男達は神を恨んだんだとか。
とまぁ、色々あった訳なのだが。
流石にその時はもう日が暮れているので続きは明日にしよう、という話になり。
戦争3日目にあたる今日、具体的には朝9時に待ち合わせをした所、シズはナナシに、マキはヤマトに抱きつき離れず、今に至るのである。
戦って意識を失って、いきなり目の前に現れた上に1日お預けを食らわせた身としてシズを無理矢理引き離す事が出来ないナナシ。自分にも非があるので引き剥がさないのだが、1つ思う所がある。
「ヤマト〜〜」
そう言ってヤマトに抱きついて離さないマキだが、別に彼女なら現実でも会えるのだからおかしくないか?という部分である。
そしてその考えは大方合ってたりする。
戦争2日目の夜、実はこの2人は会っているのだ。
夜に放たれる冷たい風と、それから身を守る様に引っ付く2人。そしてお互いの身を案じる会話……
完全にカップルのそれだ。タケが聞いたら初めてヤマトと会った時の怒りが再燃するかもしれない。
そしてその上で朝からコレである。
もしも昨日の夜の事を知った上でコレを見た男がいたら、そこらで壁を殴っているかもしれない。砂糖を口からボタボタと零し
ながら。
閑話休題。
そして何故戦争3日目にも関わらず、ナナシ達がこんな首都の角でノンビリしているかと言うと……
「しっかし、タケルが「何もするな」か……どういう事か分かるか?ナナシ」
「そうだな………大体分かる」
「どういう事や」
「俺たちが今何をしていると思う?同盟組んだんだぞ」
「あー、そういう事か」
そう、その日の朝にタケルからメールが来ているのだ。その内容が、
「今日は何もしない。2日に渡る戦争の疲れを癒してくれ」
という物だ。ナナシは同盟という立場からタケルの真意を理解している。だがそれを見た時のシズの首をかしげる反応から、どうやら理解していないらしい。
「どうした?悩み事か?」
どう説明したもんかと頭を悩ませていると、ふと声を掛けられる。
「なんだ、タケか」
「なんだ、とはなんだ。失礼な」
そう言ってタケは口を尖らせる。しかしその表情から本当に起こっている様には見えない。
「しかし、何気に1番活躍したのってお前だよな」
そう、ナナシの言う通り2日目の戦いで1番のキルポイントを稼いだのはタケなのだ。
そしてそのキルポイントの1番の理由………
「スキル連結……結構チート染みてるよな。良かったじゃん、散々欲しがったチートが手に入って」
「アホか。あれは自分が持つスキルを理解していれば誰でもできる様になる。絶対に近い内、スキル連結を使ってくる奴が出るぞ」
そう、スキル連結による無双だ。
自分が持つスキルのモーションなどをしっかりと理解する必要があるが、これらを理解すれば自ずとやり方は分かってくるのである。
しかし、タケはそうやって自分が有名になるのを嫌う。
理由は「面倒くさい奴らが群がって嫌になるから」らしい。
故にタケは別の意味で功労者である、ある人物を紹介する事にした。
「だけど、あいつも凄いよ。
天元山の占領に一役買った1番の功労者」
「本当。確か神器持ちを倒したって聞いたでぇ」
ヤマトが乗っかってきた事に「ッシャ」と表に出ない喜びを出すタケ。
横目でそれを見たナナシの表情には苦笑が浮かんでいる。どうやらスキル連結がもたらす変化を想像したらしく、「ウヘェ」という声が聞こえそうな程、顔が引きつっている。
「ねぇ、どうして話題を逸らすの?」
それは先程からナナシとタケの会話を聞いていたサヤからだ。どうやらタケが話を逸らしたその理由に気付かなかったらしい。
そしてそれはシズとマキも同じらしかった。首をコテンと傾ける様が可愛らしいが、タケにはそうなって欲しくなかったのか、手で顔半分を覆って呻いている。
しかし答えない訳には行かず、少しばかりうねるとまるで名案‼︎とでも言う様にナナシにある提案を持ちかけた。
「ナナシ、俺と組手してくれないか?」
その瞬間、ナナシはタケの真意に気が付いた。そう、聞いて分からないのなら実践すれば良いのだ。
何かを学ぶ時は、他人から聴くより実際に己の目と肌で感じて確認した方が早い時だってあるのである。
「OK、タケルの家に行こうぜ」
ナナシはそれを承諾し、そういう試合をするに打ってつけな場所を指名するのだった
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「それでは、ナナシ対タケの試合を始める」
場所はタケルの領主館にして、タケ達が一時的にベースにしていた場所の庭。タケル達がタケからスキル連結を習っていた場所と言えばお分かりだろう。
そこにナナシとタケが向かい合っている。その隣でタケルが審判として立っており、泣く泣くナナシから離れたシズとサヤ、そして一向に離れようとしないマキと諦めたのか、背中にマキを貼り付けたヤマトが縁側に座っている。
しかしお返しと言わんばかりに背後から回された腕をギュッと握っている所から、満更ではないらしい。しかも、マキは背後から抱き付いている為、その不釣り合いな胸がむにぃっと… 以下略。
バカップルぶりを発揮している2人を置いて、タケルは試合開始の合図を告げる。
因みに、ナナシにHPは無いので先に相手に一撃を入れた方が勝ちだ。
「始めぇ‼︎」
刹那、2人が取った行動はほぼ同じだった。
タケは『俊足』を用いて、高速すら超えた移動速度で前に進み。
ナナシは人外の身体能力に任せた、常人の反応を置き去りにする前進。
過程こそ違う物の、物理法則を無視しての高速を超えたスピードで前に踏み出した2人。
しかし誰が言っただろうか「動く物は必ず止まる」。
前に踏み出した2人は正面衝突する様に向かい合い、丁度同じ距離を進んだ所で止まった。
重なり合う刀と大剣によって。
恐らく2人は読んでいたのだろう。
必ず最初は突っ込んで来ると。そしてそれを分かった上で対策を用いて突っ込んだ。
「これをしてくる」という絶対的な信頼と、今までの経験からくる確信が、最初の激突を可能にした。しかし、戦いはそこで終わらない。
「『フォーススラッシュ』ッ!」
鍔迫り合いを起こしていたタケの大剣が青白い光を帯びる。パワースラッシュから派生したスキルはタケの腕を強制的に上に上げた。
ナナシが「うおっ⁈」と声を上げるが、もう遅い。スキルは既に発動している。
「らぁぁあ‼︎」と声を上げながら、上に挙げられた腕が今度は下に動かされ、青白色の光を帯びたタケの大剣を振り下ろす。
しかしナナシは慌てない。タケが放ったスキルの剣筋が真っ直ぐと見たからだ。
途中で曲がるスキルなら厄介だが、ただ単に振り下ろされるだけの攻撃なら、目を瞑ったまま避けれる自信がナナシにある。
頭を最小限の動きで右に逸らし、重力に身を任せ倒れる様にタケの攻撃を避ける。
しかしタケがそんな単調な動きを繰り出す筈がない。
「スキル連結『半月斬り』ぃ!」
剣を振り終わった瞬間、スキルディレイを置いていく様にスキル連結のトリガーが引かれる。声に出す必要な無いのだが、タイミングを計る為に身体に染み付いた発音は、既に十八番となったスキル連結を確実に発動させた。
剣が纏っていた青白い光がその瞬間、一瞬で紫色に変わった。
それは成功の合図。再び身体が見えない何かに動かされ、スキルを実行しようと身体を動かす前戯だ。
腕を振りかぶり、円を描く様に動きながら剣を振り回す。遠心力をタップリと載せた一撃が描くは正に半月。
しかし、その一撃がナナシに届く事はない。
いや届かせなかった、と言った方が正しいか。何故なら剣先の軌道は全くと言って良いほど、ナナシから外れているのだから。
予定外の事か、それともこれも計算の内なのか、しかしナナシの脳内にはある光景が思い出されていた。
(似ている……!あの時に!)
そう、酷似しているのだ。
タケがヤマトと戦ったさい、タケは『半月斬り』を攻撃では無く移動に使用したのである。
『半月斬り』は自らも円を描く様に歩きつつ回転斬りを放つスキルだ。結果、スキル使用後は必ず数歩先に進んでしまう。
ナナシは、それを利用してタケがヤマトの背後を取ったのを覚えているのだ。
そしてタケは、まるでその時の事を再現するかの様に、動き始める。
足はナナシを避ける様に、円を描きつつ前へ。
剣先は大きくナナシを外し、野球選手のフルスイングの如く振り抜かれる。
それは次のスキル連結に繋げる為の布石。無理矢理にでも読められない限り、スキルディレイによる疲労さえ気にしなければ幾らでも繋げられる、という点が強みのこの裏技こそが切り札。
故に、ナナシがタケのスキル構成の全貌を知らない、今こそが好機‼︎
「させると思ったか?」
しかしタケの身体を遮るように、タケが何処を通るのかを分かっていたかのように、ナナシの刀がタケが通る軌道上に添えられているのだ。
このままタケが進めば、自らギロチンに向かう囚人の如くダメージを受けてしまう。
「スキル中止」
口からスイッチ音が鳴る。
それはタケがタケル達から習ったある裏技にして、今回が初めてのスキル中止だ。
疲労は受けるものの、スキルを途中でキャンセルする利点はたくさんある。
今回の様に、キャンセルせねばダメージを受けるシチュエーションではよく使われる裏技だ。
そして野球で言うフルスイングの途中で止まったタケは、
「『狂化駆動』ッ!」
次の一手を打つ。
発声型強化スキルー狂化駆動ー
ブーストの強化型にして、タケが持つ最強の強化スキルがタケの身体を赤い雷で覆う。
身体能力は強化され、スキルディレイによる疲労を一時的に回復させるこのスキルはタケの奥の手中の奥の手だ。
しかしそれを使わねば勝てない程、ナナシが強敵なのもわかっているのだ。
眩い赤の電撃に身を包んだタケを前にナナシはーーー
「論理的思考者の完全演算戦闘ッ‼︎」
リスクがあると分かっている技を、惜しみもせず使う。
それは自分に言い聞かせる為の言葉。
自分に人間を辞めさせる為の言葉。
それでも、見てみたい。
タケとの戦いの、先に見えるだろう光景を‼︎
途端、周りの地形データが頭の中に入った。
次にタケのデータが。
次にタケが使うスキル連結とスキルディレイのデータ。
そして最後にタケに一撃を入れる最善策が。
それら全てを一括で整頓、並列思考を用いて数百パターンの戦い方を検証。
一番勝率の高い戦略をピックアップし、再検証の後、地形データを踏まえた最終選考を開始。
………………結論
タケの知覚を超えた超音速攻撃。
それがナナシが出した答えだった。
タケがナナシの知らないスキルを多用しつつ攻めるのであれば、こちらは感知されない速度で攻撃すればいい、というのがナナシの狙いだ。
そして後は実行するのみ。
狂化駆動で強化済みの身体能力を踏まえた上での演算結果を頼りに、ナナシは渾身の一撃を放つ為、身体を酷使する。
骨が砕けるのでは無いかと言う程に力を溜め、超音速で駆け抜ける。
その姿は、未来の剣豪そのものだった。
朽ちない身体を動かし、
鞘に収められた力の象徴たる刀を握る。
やるべき事はもう決まった。
後はそれをなぞるだけ。
タケがいる前に向かって駆け抜け、
まるで細胞全体を酷使するかの様に身体を動かす。
脳のリミッターは存在せず、朽ちない身体が人外の身体能力を与える。
今まで何回も見てきたタケの動きは、ナナシに次に起こすだろう一手を数パターンに渡って導き出す。
故に、ナナシは腰に下げた鞘に手を伸ばしたまま何もしない。
先にタケの動きを見て、後の手で出しても良いと踏んだ結果だった。
そして雷撃に身を包んだタケと、居合の構えで前に出るナナシ。数秒後に決着が付くかと思われたその時だった。
目を眩ませ、動きを止める眩い閃光が迸ったのは。
どうも、気まぐれです。
長く書くって結構難しいですね。
あれだけ書いてやっと6000文字ですよ…
キッツ。
次回更新は5日後、何時もの時間に




