表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/64

第9話 「息抜きと思惑と誤解」

 あれから数日後の土曜日。

 奴を倒したのまでは良かった。

 だが、雄生によってボールの様に吹っ飛ばされた奴は、当然そのまま気絶。

 よって、情報を聞き出す事は出来なかった。

 まあ、あの後目覚めても、口が聞けたかどうかは怪しかったけど。


 因みに、この事を偽造が指摘した時の雄生の平謝りっぷりときたら……それはもう見るに堪えなかった。

 2人の性格がよく表れてる場面ではあったが。

 その後、見児に連絡する前にもう1度鏡に入ってみたが、既に奴はそこにいなかった。

 自力で動けるわけ無いだろうから、既に見児が、もしくは奴の仲間が運び出してしまったんだろう。


 ようするに、俺達は再び詰んだ。

 敵があと何人いるかすら分からない。

 俺か偽造が、あそこまでやる前に雄生を止めとけば良かったわけで……。

 つまり全員の落ち度だ。

 雄生だけ悪いわけじゃない。


 で、俺は今1人でゲーセンである。

 あの日の翌日もその次の日も、一応見回りはしたが、特に何もなし。

 仲間が1人やられれば、そりゃ簡単には出てこないわな。

 というわけで、ゲーセン。

 息抜きは大事って、銀髪の変な奴も言ってたし。


 自慢じゃないが、この辺で俺よりゲームできる奴はいないと思ってる。

 そんじょそこらのゲーマー程度、片手であしらえる自信がある。

 なにしろ、普段から訓練を積んでいるんだ。

 負かせるもんなら負かしてみろってもんよ。







 圧勝。

 そうとしか言いようのない位に、圧勝だ。

 プレイしたのはシンプルな格ゲーだが、その分実力差が顕著に出る。

 つまりそういう事だ。


 まだ15ゲームしかやってないが、今日はもういいや。

 午前中ずっとやっててもいいが、なんか満たされたし。

 あまりの大差に呆気にとられている対戦相手に軽く会釈し、意気揚々とゲーセンを後にする。


 最近は色々あってやってなかったし勝ったしで、非常に清々しい。

 スゲーッ爽やかな気分だぜ。


 1人で脳内ではしゃいでいると、うっかり通行人にぶつかった。

 背は俺と同じ位で、癖のある茶髪で右目に眼帯をし、学生服を着た男だ。


「あ、すみません」

「別に。こっちこそ」


 若干無愛想だったが、特に何があるってわけでもなく、そいつはそのまま通り過ぎて行った。


 知らない制服だな。

 土日なのに制服って、私立の高校か?

 肩に掛けてる半開きの学生カバンから、果物らしきものが見える。

 誰かの見舞いだろうか。


 ん?

 アイツ学校行くんじゃねえの?

 まあ、俺には関係ないか。







 駅から徒歩15分程度で、目的地である病院に着いた。

 受付で病室の場所を聞き、階段で二階に上がる。

 そして、「千馬楊太郎様」と書かれた、目的の病室の前まで来た。

 ノックすると、ぶっきらぼうな掠れ声で返事が帰って来たので、ドアを開けて病室に入る。


「酷いザマだな」

「なんだぁ狩真(かるま)……。皮肉でも言いに来たかぁ?」


 そこには、全身包帯とギプスだらけの、柄の悪そうな男がベットで横になっていた。


「見舞いの品持って来たぞ」


 持ってきた果物をちらつかせてそう言うと、千馬は非常に不快そうな顔をした。


「テメェ……俺が今モノ食える状態と思ってんのかぁ? やっぱ皮肉だろぉ……」

「まあ、皮肉りに来たのは当たりだ。勿体無いからこれはおれが食う」

「ここで食うなここで! 性格悪いぞぉ……!」

「お前が言うな。他人に言われるより倍は傷つく」


 訝しげな表情の千馬の前で、持ってきたリンゴを齧ってみせると、更に訝しげになった。


「どうせだったら嘲笑ってみせろよぉ……。無表情だと逆に気持ち悪い」

「どうせ相手を見くびってたのが敗因だろう? だからお前は夜乃(やの)楼木(ろうき)に弱いと言われるんだ」

「俺をディスれって言ったわけじゃねえだろぉ」


 リアルな名前を出されて、千馬は項垂れる。


 さて……。


「そろそろ本題の方を聞いとくか。相手はどんな奴だ?」

「あぁ? 1週間位前に全員集めて言わなかったかぁ……?」

「その時おれはいなかった」

「そういやぁそうだったかぁ。相手は三人いた」

「写真は?」

「そんな暇無かったけどよぉ、全員覚えてるから問題ねぇ。1人は、黒髪で緑のヘアバンドしてて、あとジャージ着てる奴で……」

 「……なに?」


 黒髪で、緑のヘアバンドで、ジャージ?


「そいつ、さっき会ったぞ」

「ハァ⁉︎ マジかぁ⁉︎ って痛つつ……」

「他の奴は?」

「あ、あぁ……銀髪青目のデカイ奴と、赤い髪で目つきの悪い奴、全員男だ」


 随分と目立つ容貌だな。

 分かりやすくていいが。


「……つーかテメェ、今日は学校無えだろぉ? なんで制服きてんだぁ…?」

「普段着がこれしか無い」

「………」

「それより、そいつ等の能力は分かるか?」

「お、おぉ。ジャージの奴は、自分の影を操る能力だ。影で攻撃したり、影に潜り込んだり、何かと応用はきくようだった……。赤い髪の奴は、自分の傷を治していた。もう一人の奴は分からねえ」

「なるほど。まあ十分だ」


 聞きたい事は聞いたので、正直もう用は無いんだが、なんとなく会話を続ける。


「見舞いに来たのはおれが最後か?」

「……見児を含めてお前が五人目だぁ」

「あと1人は……ああ、アイツか」


 千馬は、今日1番の不快そうな顔をした。


「チッ……あの性悪女がぁ……リーダーが一番乗りだったってのに、今だなんの音沙汰無したぁどういうことだぁ!」


 性悪女とは言うが、性質の悪さはお前といい勝負な気もする。

 同族嫌悪というやつか。


「仮にアイツが来て、嫌味言われて10秒で帰られるよりはマシだろ。それと、『リーダー』って呼び方はやめておけ」

「へいへい、そうだったなぁ…」


 話すことは話したし、あまり長居するのもなんなので、そろそろ帰ることにする。


「じゃあな。そのうちまた来る」

「次はもっとマシな見舞いの品持ってこいよぉ」


 扉を開けて病室を後にし、来た道を戻って行く。

 さて、さっきぶつかった奴が千馬を倒した連中の1人か。

 確定したわけでは無いが、警戒しておいて損は無いだろう。


 まあ、おれが何かする前に、他の奴等が事を起こすだろうが。

 例えば、千馬が性悪女と称した、アイツとか。







 あの後何気無く散歩を続けていると、駅前の公園までたどり着いた。

 ごった返してる、というほどでも無いが、やっぱり人は多い。

 あの中に、アイツの仲間がいたりするんだろうか……。

 ブランコに座りながら、そんな事を考えていた。


「あ、そうだ」


 俺は立ち上がり、右手を空にかざす。

 そして、ツクヨミを呼び出した。

 もしこの近くにブレード使いがいるのなら、俺が持っているコレに何らかの反応を示すはずだ。

 そんな奴がいたら、十中八九奴の仲間だろう。


 名案を思いついた気で、公園の入り口あたりに移動した。


 が、少し冷静に考えてみる。

 いくらブレードが見えたからって、そうあからさまに態度に出すだろうか?

 向こうは味方が一人やられてるんだぞ?

 当然俺達を少なからず警戒している筈だ。


 ていうか、今更ながら、俺達の顔は向こうに割れているんじゃないか?

 逆に虎視眈々と狙われてるかもしれない。

 そんな状況でよく外出してきたな、俺達……。


 考えれば考えるほど、不安要素が流れ出てくる。

 下手にこういうことしない方がいいな……。


 ブレードを戻そうとしたところで、背後から人が近づいてくる気配がした。

 すぐさま振り向くと、誰かが俺に向かって飛びかかってきていた。


 そしてその手には……光を放つ刃物状の物が握られていた。


「マジかよ……⁉︎」


 咄嗟に防御し、そのままつばぜり合いになりかける。

 なんとか攻撃を弾き、後ろに距離をとった。


 結構ぞんざいな餌だったのに…ん釣り上げちゃったよオイ。

 ソイツは小柄で、150センチあるか無いか位だ。

 スカートを履いているので、女だろう。

 パーカーを着ており、フード(なんか猫耳付き)を被っていて、素顔はよく見えない。


 そして、手に持っているブレード。

 刃が光を放っているのではなく、刃が光で出来ている。

 ライト○イバーみたいな感じだ。

 なんて言うか……すげえカッコいい。

 それ欲しい。


「やっと見つけた。こんなに白昼堂々としてるとは思わなかったわ」


 確かに危機感ゼロだったけど……。

 痛い所をついてくるな。


「いいじゃねーか。こちとら手掛かり無しで参ってたんだ。簡単に出てきてくれてラッキーだよ」

「いや、ラッキーなのは私よ。こんな所で見つけられたんだから!」


 言い終わるなり、少女は再び飛びかかって来た。

 なんでいちいち飛ぶのか知らないが、ここは無難に躱しておく。

 着地の瞬間を狙い、突きを繰り出したが、向こうも切り替えが早く、あっさり躱された。


 俺はもう1度後ろに距離をとる。

 まずは相手の能力を突き止め、本格的に攻めに転じるのはそのあとだ。

 前回の様な失敗はしまい。


「今日は影が消される、なんて事は無いからな」

「? なによ?」

「別に。こっちの話だ」


 次は俺の方から距離をつめ、軽く牽制に近い攻撃をいれる。

 少女はなんて事ない様に、攻撃を全て躱す。


「フン! こんな程度? 大した事ないわね!」

「そいつはどうかな?」


 当てようとはしていないが、向こうはかなり俊敏だ。

 だが狙いは注意を俺の方へと向けておく事。

 思惑通り、相手は足元の俺の影の様子に気づいていない。

 体を動かしながら、影も同時に動かすのには神経を使うが、この程度ならなんとかなる。

 相手の足を引っ掛ける程度なら。


「うわっ⁉︎」


 かかった!


 相手はバランスを崩したが、俺は追撃せずに距離をとった。

 コイツはまだ能力を使ってない。

 慎重すぎるかもしれないが、焦ってトドメに入って返り討ち、なんて事になったらシャレにならないからな。

 さて、この後どう動く?


「ぎゃふっ! こ、このぉ!」

「……」


 普通に転んで、普通に向かって来た。

 しかもまた飛びかかり。

 なんか……うーん。

 仲間1人やられたにしては、いくらなんでも単調すぎないか?

 スピードは速いけど。


「なあ、ちょっといいか?」

「うるさい! 話す事なんて無いわ!」


 ああ、熱くなると周りが見えなくなるタイプの奴だ。

 仕方がないので、影を伸ばしてがんじがらめにした。


「うわっ⁉︎ 何すんのよ! 離せ! 離せぇ‼︎」

「うっせー! お前ちょっと黙れ!」


 少し強めに言うと、分かりやすくビクついて黙った。

 戦闘の間にフードが脱げて素顔が見えているが、特に変な所の無い茶髪の普通の少女だ。

 俺の口調に驚いてか、若干涙目になっているが。


「いや、あのだな……少し確認したいんだが、いいか?」

「……なに?」

「ほら、あの動けなくされて襲われるって事件あるだろ? その事について、なんか知ってる事はあるか?」

「! 知ってるもなにも、1周間くらい前、私ソイツに襲われる所だったのよ! なんか物音がした方にソイツが行ったから、ギリギリ助かったけど」

「え? ……物音って……まさか……」


 1周間ほど前、忘れもしないあの日の事。

 事件現場に遭遇し、警察を呼ぼうとしたが、つまずいて転び、俺は巻き込まれる羽目になった。

 確かあの時、顔は見えなかったが、被害者らしき少女が倒れていたような……。


「ソイツ、私みたいにデカイ剣持ってたわ! アンタも似たような事出来るんだから、アイツの仲間なんでしょ⁉︎ アイツはどこなの⁉︎ 恨み晴らすついでに、犯行も止めてやる! アンタが仲間ならアンタも……うぐぐ⁉︎」


 全貌が見えてきた……。

 なんか色々面倒になり、とりあえず口を塞がせてもらう。


 つまり……俺達は互いに同じ相手を探していて、互いに誤解して戦ったと。


 被害者と被害者、夢の共演ってか?

 うっせーよ馬鹿。

 本物の性悪女は、のちに楊太郎の病室に現れ、10秒間嫌味を言った後、見舞いの品と称し根付きの植物を残して去って行きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ