表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/64

第7話 「VSアメノサギリ②」

 鏡の中では既に、二人が激闘を繰り広げていた。

 やってる事はシンプルな打ち合いだが、お互いの得物がデカいので、かなりの迫力だ。


「雄生! そいつの攻撃は食らうな! 体が動かなくなるぞ!」

「了解ッス‼︎ 一発ももらいませんよ‼︎」

「ヘッ! そいつはどうだろうなぁ〜?」


 何回か打ち合った後、2人は互いにバックステップする様にして距離をとった。

 すごいな雄生。


「フウ。どんな奴かと思ってたら、そんなモンか? 所詮は漢らしくねえ事するしょうもねえ野郎なわけだ」

「弱え奴程そうやって吠えるもんだぜぇ? ゴタゴタ言ってねぇで、さっさと俺に切られたらどうだぁ⁉︎」


 互いに啖呵を切った後、雄生は赤いパーカーの上に羽織っていたブレザーを脱ぎ捨てた。


「吠えてんのはどっちだコラ‼︎ 食らいやがれ‼︎」

「ちょっとは落ち着けって!」


 雄生が再び切りかかろうとしたのを遮り、俺は奴に向かって行った。


「へぇ、次はテメエかぁ?」


 奴はニヤリと笑い、俺の攻撃を防御する。


「頭に血が上ってたら、うっかり攻撃受けるかも知れないだろ⁉︎ 今の内に頭冷やせ!」

「ハア……スンマセン」

「オイ、人の心配してる場合かぁ?」


 奴は防御した俺のブレードを振り払い、そのまま自分のブレードを俺に振り下ろした。

 俺は半身になってそれを躱す。

 その直後、奴は何かに気づいた様な顔をして笑った。


「なぁ、お前手を怪我してる様だが……それはなんだぁ?」

「べ、別になんでもねーよ」


 関係無い所で転んで怪我した、とは言えない。


「これがどうかしたかよ?」

「いや、大した事じゃあねえんだがなぁ……」


 不意に、右手が痺れ始めた。

 まさか……⁉︎

 攻撃は食らってない筈じゃ⁉︎


「何で……⁉︎」

「もう、俺のペースなんだわ」


 奴はそう言い、嘲笑じみた笑みを顔に貼り付け、俺に思い切り蹴りを入れて吹っ飛ばした。


「うぐぁ!」

「なっ⁉︎」


 吹き飛ばされ、体がコンクリートの壁に叩きつけられた衝撃で、全身に激痛が走った。

 雄生が驚いた様子で駆け寄ってきた。


「どういう事ッスか⁉︎ 命さんは攻撃を食らってなかったんじゃ‼︎」

「待て……。今考えてる」


 アイツの能力は、何らかの方法で相手の体を痺れさせる事。

 それは間違いない筈だが、その方法を間違って解釈していた……?


「しょうがねえ奴等だなぁ。まだ気付かねえかぁ? この辺に霧が発生してる事によぉ」


 霧……?

 あたりを見渡すと、いつの間にか周囲が霧に囲まれていた。

 ……ああ、そうか。

 分かった気がする。


「この霧がお前の能力か。いや、毒霧って言った方がいいか? これが傷口から侵入して、相手の体の自由を奪う……」

「おぉ、ようやく理解したかぁ? 因みに今回は霧の濃度を上げてるからなぁ。あの時よりも回りが早いだろぉ?」


 確かに、既に立つ事もままならない。

 迂闊だった。

 最初に戦った時も、足に掠ったとでも思い込んでいたが、そうじゃ無かった。

 その前の日に、俺は躓いて転んでいた。

 その時に足を擦りむいていたから、あの時は足が痺れたのか…。


「けど、これじゃお前を倒せねぇのは分かってる。妙な事される前に、病院送り程度には怪我してもらうぜぇ?」


 奴は俺を切りつけようとするが、雄生が攻撃を受け止めた。


「チィッ! ジャマすんじゃねぇ!」

「ジャマじゃねえ。ただ少し時間を稼いだだけだ」


 俺はその時間を利用し、影に潜んで奴の後ろに回り込んだ。


「悪いな雄生……!」


 影の中からでは攻撃出来ないので、俺は姿を現した。

 だが、ロクにブレードを振る事も出来ない。

 だったら、攻撃手段はもう決まってる。


 影を伸ばしてのパンチの様な攻撃を、全力で奴に叩き込んだ。

 直前、奴の正面にいた雄生は身を躱したので、奴の体だけがコンクリートの壁に吹き飛んだ。


「ぐおぁっ!」


 さっきの俺の様に全身を打ちつけた奴は、苦しげな声を漏らした。


「ゲハッ……畜生がぁ!」


 本調子じゃない所為か、まだ慣れない所為か、ダメージは少ない。

 奴はすぐに立ち上がり、俺の方に……ではなく、ジャンプして、俺の後ろにある背の低い電灯に向かってブレードを振り上げた。


「! しまっ……」

「もう遅ぇ!」


 奴の考えを察した時には、既に電灯は破壊されてしまった。


「前回とさっきので、テメェの能力は完璧に理解した。ここは陽の光が当たりにくいしよぉ、近くに光が無えと、影も出来ねえよなぁ?」


 近くにあった光源が無くなり、俺の能力の感覚が消えた。

 まずい……。

 今の俺は身動き一つ出来ない。

 攻撃されても、防御も反撃も出来ない。


「コッチ向けやあ‼︎」

「うおぉ⁉︎」


 雄叫びと共に雄生がブレードで奴に切りつけた、と言うより、叩きつけた。

 奴は咄嗟にブレードでガードするが、少しよろめいた。


「命さん、後は俺に任せてください。コイツには色々と聞きたいこともあるんで」

「さっきからトドメって時に邪魔しやがってぇ……この辺には鬱陶しい奴しかいねぇのかぁ⁉︎」


 2人はそう言い、再び打ち合いを始めた。

 後は任せろって……。

 俺特に役立ってねーんだけど。


「まず1つ聞く。さっきのチンピラ共、テメエの仲間だろ? なんで殴ってた?」

「あぁ? 決まってんだろぉ。役に立たねえからだよ。聞けばテメェら、アイツらと昨日揉めたらしいじゃねえかぁ? そん時にビビッちまったんじゃなぁ」

「ハア……?」

「テメェもテレビが映んなくなったら、叩いて直そうとしたりすんだろぉ? つまりはそう言うこったよ」


 奴の話を聞くうちに、だんだんと胸糞悪くなってきた。

 コイツは本当に外道だと思った。


 だが雄生の方は俺以上に穏やかでは無いらしい。

 顔色が憤怒一色に塗り潰されている。


「しっかし、アイツらホント情けねえなぁ。1発殴ってやっただけで全員慌てて逃げ出しやがってぇ。ありゃ小せえわ。何やったって成功しねぇクズなんだろうなぁ。同情すら出来ねぇ」

「うるせえぞ‼︎ テメエの様なクズに誰かを見下す権利は無え‼︎」


 雄生はブレードを真上に上げ、奴に叩きつけようとする。

 しかし、あれでは隙だらけだ。

 完全に冷静さを失ってる。


「馬鹿かぁテメェ! ガラ空きなんだよぉ‼︎」


 奴は雄生の胸辺りに、ブレードをかすらせる様にして軽い傷をつけた。


「雄生!」

「残念だなぁ! テメェらはもう負けたぁ! その小さなかすり傷でも、俺のアメノサギリの毒霧には十分だぁ! 間も無くテメェも身動き1つ取れなく……っ⁉︎」


 勝ち誇った様子で雄生の攻撃を軽々躱した奴は、続く雄生の追撃をモロにくらい、コンクリート壁に強く打ち付けられた。


「そ……んな馬鹿なぁ? 何故毒霧が……」

「……まあなんだ、他人を見下し過ぎたテメエの落ち度だ」


 雄生は切られた箇所を確認し、吐き捨てる様に言い放った。


「ありえねぇ。確かに傷はつけた……! この三下がぁ……! 見下してんじゃねぇ!」


 奴が苦しそうに立ち上がって振り上げたブレードは、雄生の頬を掠めた。


「今度こそだ! 傷はつけたぞ…⁉︎」

「なんだ? もう傷が……?」


 確かに今、奴は傷をつけていた。

 だが、既に雄生の顔からは傷が消えていた。


 恐らく、さっきの胸の傷も消えているんだろう。

 毒霧が侵入して来る前に、傷口が塞がってしまっている。


「治癒能力……!」


 今まで能力が分からなかった訳だ。

 怪我してなけりゃ、発動のしようもない。


「馬鹿な……こんな事が」

「さて……万策尽きたか? この三下があ‼︎」


 雄生が繰り出した左拳は、奴の顔面にクリーンヒットした。


「ぶがおぉ‼︎」

「オイ……2メートルくらい飛んでねえか? どんなパワーだよ」

「もうちょっと待っててください。始末つけてきますんで」


 奴が吹っ飛んだ方へ、雄生はゆっくり歩み寄る。

 十分な距離まで近づき、奴の胸倉をつかんで持ち上げた。


「ま……待てよ! もう戦う意思は無え! 今ので反省したって! だから…その手を離ッブグォ⁉︎」


 言いかけた奴に、雄生は膝蹴りをいれた。

 命乞いしながらだまし討ちを狙ったのか、奴の手からはナイフが落ちた。


「反省だ? ポケットからナイフ取り出しながら言うセリフじゃ無えな。第一、今更そんな事言って逃れられると思ってんのか? 今の蹴りだけじゃまだ足りねえぞ‼︎ 歯ぁ食いしばれ‼︎」


 雄生はブレードから手を離し、空いた手で奴の顔面を思い切り殴った。

 同時に、奴の歯が二本程へし折れて、何処かへ飛ばされたのが見えた。

 続いて、地面に奴を叩きつけ、思い切り蹴飛ばした。


「え……」

「‼︎ ヤベッ‼︎」


 あろう事か、奴は俺がへたり込んでる方へ飛んできた。

 雄生の「しまった」と言う風な表情が見える。

 当然奴は、俺の首元にブレードを突きつける。


「ハァ……ハァ……そこから動くなぁ! 少しでも変な事してみろぉ。どうなるかは分かるよなぁ……?」

「クッソ‼︎ 命さん‼︎」

「さあ……お前はそこに落ちてる俺のナイフで自分を刺せぇ。そうすりゃコイツは見逃してやる」

「……ッ」

「へへ……雄生、拾わなくていいぞ」


 ナイフを拾おうとしていた雄生は、俺の制止に驚いてこちらを見た。


「命さん……?」

「別に拾う必要なんて無い。もうコイツに勝ち目は無えんだから……クハハ」

「な、なんだテメェ……? 何がおかしい⁉︎」

「へへへ……何がって……これが笑わずにいられるか?」


 言い終わったのとほぼ同時に、俺はライトの様な光で照らされた。

 雄生の背後から、いつの間にか携帯のライト機能でこちらを照らす、悪趣味な笑みを浮かべた銀髪の男が歩いてきていた。


「こんな薄暗い所でなにやってんの? やっぱり明るい方がいいよね、命君?」

「ああ、そうだな。明るければ影もできるしな!」

「ま、待てテメェ! 妙な事を……ブゴェ!」


 奴が言い終わるのを聞かず、俺は無数の影の連打を奴にぶち込んだ。

 奴は雄生と偽造がいる方まで吹っ飛ばされる。


「さあて、もう結構酷い目にあってるっぽいけど、彼をどうする?」

「ヒィっ! 待ってくれぇ! もう再起不能なんだぁ! 見逃してくれぇ!」


 まだ命乞いをすんのか。

 とことん小者だな。

 そんな奴に、雄生も怒りを露わにしている。


「本当に……テメェは……漢の風上にも置けねえなあ‼︎」


 雄生は倒れていた奴を乱暴に掴み上げ、さながら野球のバットの様に、奴目掛けてブレードをフルスイングした。


「うがおあああぁぁぁぁ‼︎」


 奴は10メートル程ぶっ飛び、地面に落ちて数回バウンドしたのち、そのまま意識を失った。

 そして、奴のブレードは砕けるように消滅し、俺の体から痺れが取れた。

 ……アイツ死んでねえよな?







「僕は最後だけだけど、一件落着かな?」

「ったく……まだ胸糞悪いッスよ。あそこまでの奴だとは」


 戦闘を終え、2人は話し合っていたが、俺にそんな元気は無いし、1つ疑問があった。


「なあ偽造、聞きたい事あんだけど……」

「あ、そう言えば命君。また能力食らってずっと座り込んでだよね? もしかしてずっとあのままだった? そして最後にいいとこ取り……」

「う、うっせーな! あれには訳が……ってそうじゃねー!」


 早くも脱線したので、すぐに軌道修正する。


「お前、どっからここに入ってきた?」

「どこって、普通に鏡からだけど」

「いや、お前が入って来るとこ見てねえぞ」

「そりゃ、鏡は向こうでしょ? ここから見えるわけ……」

「向こう……?」


 偽造は、俺達が入った鏡とは別の方向を指差して言った。


「何言ってんスか偽造さん? 鏡はここじゃ……」


 混乱した様子の雄生が指差した方には、俺達が入ってきた鏡と、白衣の男が立っていた。


「あ〜らら。そりゃそうだよね、うん」


 見児は、いつもと変わらず、余裕がある表情でそこに立っていた。

ブレード名:アメノサギリ

所有者:千場楊太郎(ちばようたろう)

身体強化:パワー型

形状:全体が灰色の大剣で、七支刀の様な枝が四本伸びている。

能力:所有者の周囲に毒霧を発生させる。

・毒霧は相手の傷口から侵入し、体を痺れさせて動きを封じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ