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第27話 「嵐襲来」

 夕方まで遊んで過ごし、帰路につき始めたのは午後6時頃。

 今は電車の中で揺られている所だ。


「ハァ、なんか疲れた……」

「けど、結構楽しんだんじゃない?」

「2人程ブッ倒れたけどな」


 その2人である雄生と響人は、他のメンバーより1段と疲弊している。

 遊園地で過労という、ある意味偉業を成し遂げた雄生も大概だが、最初に苦手と言ったにも関わらず何故かジェットコースターに乗った響人もかなりのものだ。

 偽造は理由を知った風だったが、さっき軽く流されてしまった。


「ヤッベ……俺明日大丈夫ッスかね?」

「大変だったな。けどお前のブレードってさ、疲労とかは治せねーのか?」

「さあ……試した事無いッスけど、正直微妙だと思います」

「そう上手くはいかねーもんか」


 全てが完璧、という訳にはいかないらしい。


「今度はアレ……いや、でもこっちのも捨てがたい……うぅ〜……」


 幸せそうに爆睡する叶恵は、まだ夢の中でアトラクションを巡っている。

 因みに、ベンチで寝落ちした叶恵をおぶって来たのは、まさかの雄生である。

 俺が代わると言ったのだが、「最後まで付き合ってやれなかったから」と雄生は譲らなかった。

 最早漢気レベルがカンストしている。


「天音………俺もう駄目かもしれん」

「いや、大丈夫だよ! ただの乗り物酔いだから! 元気出して!」

「甘く見ないほうがいい………ジェットコースターの激しい動きの記憶が、電車の僅かな揺れに掘り起こされて、あの時の酔いが再発しかけている………このペースでいくと、10分後には………」

「えっと、10分後には駅着いてると思うよ?」

「………九死に一生を得た気分だ」

「また大袈裟な」


 あの2人は、今日はほとんど一緒だったが、どういう流れでジェットコースターに乗ったんだ?

 天音が無理に乗せたとは思えねーし。

 謎だ。


「さて、明日からはまた学校だね」

「また面倒な日々が始まるのか……」

「……ずっとそんな日々が続けばいいのにね」


 しんみりした口調で偽造はそう言った。


「……そうだな」


 今日の事を考えると、ブレード絡みの出来事が嘘のように感じる。


 俺が偶然遭遇した事に始まって、その直後に偽造も巻き込んでしまった。

 更に雄生が加わり、なんとか毒霧ヘルメットを退けた。

 同時に、雲村見児は危険だと確信した。


 次に、叶恵と衝撃的な出会いを果たし、そのまま仲間になった。

 俺と偽造がいない所で、叶恵と雄生が襲ってきた敵を返り討ちにした事もある。


 息つく間もなく、望川巴が仕掛けてきた。

 この時、真っ先に標的にされた偽造が敵の能力下に置かれてしまったが、俺、響人、天音の3人で、辛くも勝利した。


「色々あったな」

「しかもまだ終わってないよ」

「ああ。けど絶対止めるぞ」

「何を今更。今後ともよろしくね」


 そう言い合い、俺と偽造は拳をあわせた。


「お前等何やってんだ………?」

「え?」

「ん、まあちょっとね」

「なんだかんだで、2人とも仲良いね」

「当たり前じゃん! ね、命君」

「や、やめろよ小っ恥ずかしい!」


 ちょうどこの時、目的地に着いた。


「ほら着いた! 行くぞ!」

「またまたぁ、ツンデレだね」

「ツンデレだな………」

「向井君も結構素直じゃないよね」

「うっせー! 寄ってたかって弄るな!」

「ホラ葉隠、起きろ」

「え……もう乗らないの?」


 寝ぼけたままの叶恵もフラフラと立ち上がり、全員電車を降りて、そのまま駅を出た。


「命君じゃないけど、確かにちょっと疲れたね」

「俺じゃなくても疲れるっつーの」

「ああ………今日は向井じゃなくても疲れるさ」

「……お前らには後で言うことがある」


 なんて他愛もない話をしながら歩いていた。

 日常的で平凡な風景。

 今の所はそうだった。


「命さん……あそこにいる奴こっち見てません?」


 不意に雄生がそう言った。


「?」


 学校が休みということもあってか、今日は人が全然いない。

 その中で雄生のいう人物を見つけるのは、そう難しくなかった。


 髪で右目が隠れていて、メッシュの金髪。

 そして何より、ペンキをぶちまけたかのような真っ黒な瞳が、只ならぬ雰囲気を漂わせていた。


「……たまたまだろ?」

「それにしちゃあなんか……」

「?……2人ともどうかした?」

「いや、雄生がこっち見てる奴がいるって……」


 その時、そいつがこちらに向かって歩き出した。

 迷いなく、まっすぐな歩みだ。


「………なんだアイツは?」

「分かんねーけど……なんか……」


 何故だか、蛇に睨まれたかの様な奇妙な感覚に襲われる。


「……ヤバいかもしれん」

「まさか………新手の敵か?」

「…………」


 雰囲気に耐えかねてか、偽造が奴に近づこうとする。


「おい、偽造……!」

「大丈夫」


 そう言い、偽造は奴の目の前まで近づいた。


「あのー、勘違いならすいませんけど、さっきからこっち見てますよね……? 何か用でも?」

「……」


 偽造はいつものように笑顔で話しかけた。

 しばらくの沈黙の後、奴は何か思い出した様な表情をし……







「お前か? 望に負けて操られた奴って……!」

「⁉︎」


 そいつはニヤっと笑ったかと思うと、どこからともなく小さなナイフを出し、偽造に斬りかかった。


「「「「「「なっ……⁉︎」」」」」」


 偽造は半身になってナイフを躱した。


「なんだ、結構速いじゃねえの! ならこれでどうだ⁉︎」


 奴はナイフを突き刺す動作を利用し、回転して裏拳を繰り出した。

 偽造もブレードを出し、防御しようとしたが、


「今度は遅えよ!」

「ガハッ!」


 モロにくらった。

 偽造は吹き飛ばされ、そのまま地面に激突した。


「偽造!」

「あの野郎……‼︎」


 雄生がブレードを出し、奴に急接近する。


「ハハァ、回復能力はお前だな?」

「テメエぶっ飛ばす‼︎」


 雄生のなぎ払い攻撃を、奴はしゃがんで容易く躱した。

 そしてすかさず、隙をついて雄生の鳩尾に拳を叩き込んだ。


「ウッ……クッ‼︎……オラァ‼︎」

「うお⁉︎ マジか!」


 これもモロに入った

 だが、雄生は堪えた。

 ブレードを振り上げ、叩きつけるように攻撃したが、奴はかなりのスピードで後ろに下がった。


「やっぱ回復能力だけあって、結構タフなのな。いや、別に関係ねえか?」

「うる……せえ‼︎」


 雄生の能力は、一言で言えば治癒能力。

 自分が怪我をすれば、すぐに治癒が始まる筈だ。


 なのに。


 雄生は殴られた所を押さえ、苦悶の表情を浮かべていた。

 まさか、治癒が追いつかない程のダメージなのか……?

 そんな事が⁉︎


「オイ、俺たちも………!」

「あ、ああ!」

「うん……!」


 響人は既にブレード2振りを自分の周囲に浮かべて、臨戦態勢に入っていた。

 俺と天音もブレードを出す。


 ここで、叶恵が近くにいない事に気付いた。


「なあ、叶恵はどこ行った⁉︎」

「なに………?」

「! あそこ!」


 天音が指差した先には、ブレードを手にし、敵意むき出しの叶恵が、奴の死角から斬りかかろうとしていた。

 さっきまでここにいたのに、あいつが速いのとこの緊張感で、全く気付かなかった。


「カハッ! いいねえ! まだまだやる気ってか」

「あ……当たり前だ‼︎」

「結構なこった。肋骨逝った筈なのに……後ろのヤツ並に敵意剥き出しだな」

「え……」


 死角だった。

 あの角度じゃ、叶恵が見えるわけない。

 なのに——

 あいつは、斬りかかってきた叶恵の腕を、振り向きもせずに掴んだ。


「気付かねえとでも? 甘えよ」


 奴はそのまま、叶恵を雄生に投げ飛ばした。

 人が人を投げたとは思えない速度で。


「うわあぁ⁉︎」

「葉隠……‼︎」


 あのままでは、雄生と叶恵は衝突する。

 しかもあのスピードでは、互いに大ダメージは免れない。


「天音………!」

「分かった!」


 天音はブレードから糸を何本か伸ばした。

 糸が雄生に巻き付いたのを確認すると、天音は糸を掴んで引き寄せる。

 雄生は引かれた方向へよろけ、ルートを外れた。


「向井、あっちは任せられるか………?」

「……よし、分かった!」


 俺は叶恵の方へ駆け出す。

 叶恵は既に、雄生がさっきの場所にいたら衝突してたであろう位置を通過していた。

 雄生は今のでなんとかなったが、叶恵はあのままだと地面に激突する。


 俺の影が届く、射程ギリギリまで近づければ!

 そうすれば助けられる!

 だが、もう届くかどうかギリギリの距離。


 俺はヘッドスライディングする様に飛び出し、影を叶恵の方に伸ばした。


「届けえぇぇーッ‼︎」


 伸ばした影を、叶恵を包み込む様に変形させる。

 幕の様になった影は、少しの弾性を持ち、衝突ダメージを和らげた。


「叶恵、無事か?」

「うぐ……多分大丈夫、です」

「そうか……良かった」


 安心したのも束の間だった。


「アイツは……⁉︎」


 振り返ると、宙に浮かぶブレードが奴を襲っていた。

 響人が片方のブレードを遠隔操作している。


 だが、不規則で四方八方を動き回るあの攻撃を、奴は全て流していた。

 大抵は容易く躱し、たまに躱しきれないと判断してか、バタフライナイフの様なブレードでいなしている。


 ……思い返せば、奴はまだ、能力らしい能力を使ってすらいない。

 にも関わらず、偽造と雄生を一瞬で撃沈させてしまった。


 アイツは何者なんだ?

 こんな奴がいたのかよ。

 どうすれば勝てる?


「ヘえ、遠隔操作ってこんな感じか! 中々やりずれえかもな」


 響人の攻撃を躱しながら、奴は楽しげにそう言った。


「よく言う………嫌味にしか聞こえないぞ」

「別にそういうんじゃねえよ。例えば、お前2刀流の癖して、片方しか攻撃に使ってねえじゃん。万一接近された時の事考えて、常にもう片方は近くに置いとく気なんだろ? 賢い奴だな。だからやりずれえって言ったんだ」

「………」


 攻撃を躱しながら、あんなにペラペラと会話し、更に分析までしている。

 本当に、コイツは普通じゃない。


「けど、そろそろ頼まれた事もこなしとかなきゃあな」

「?………なにを」


 奴はバックステップし、響人の攻撃をくぐり抜ける。


「………!」


 響人はブレードを操作し、奴を追おうとする。

 だが奴は、変わらず笑みを浮かべたまま言った。


「今、2歩くらい歩いたな」

「………」

「?……アイツ何言ってんだ?」


 歩いた?

 それが今どうかしたのか?


「ブレードを遠隔操作出来んなら、なんでお前が距離を詰める必要がある? その場でじっとしててもいい筈だろ?」

「………」

「見えたぜ、そのブレードの射程! せいぜい10メートルが限界らしいな!」

「………さっきから少しずつ距離を離してた訳だ。まさかいきなりそこを突かれるとは思わなかった」


 マジかよ……。

 あの状況で、奴はそんな事考えてたのか⁉︎


「で、そっちの娘の糸は、パワーには自信がないと見える。さっきの時も、投げた方の奴を糸でそっちに引っ張れば、あんな二度手間でなくても済んだからな。怪我してる奴の重心をずらす程度のパワーしかないって事だ」


 奴は天音を指差し、分析結果を語り出した。

 今までの事だけで、そこまで分かるのか?

 コイツどこまで考えてんだ⁉︎


「さ〜てと、こんなとこか。もう帰ってもいいけど……なんか勿体無いな」


 奴は少しキョロキョロし、最終的に、俺に焦点を合わせた。


「なあ、この中の中心って、アンタだろ?」

「……別にそう言った事も思った事もねーけど、なんだよ?」

「謙遜すんなよ。他の奴等の目で分かる。全員お前に一目置いてるって感じだ。まあそれはいいか」


 1呼吸置いて、奴は続けた。


「俺はもうちょい遊びたいんだ……アンタ付き合ってくれよ」

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