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第25話 「遊園地②-雄生と叶恵-」

 地上約20メートル位か……。

 巨大な鉄塔の様なアトラクションに連れて行かれて、安全バーで体をガッシリ固定されて座った状態で、この高さまで持ち上げられたのは、ほんのついさっきの事だった。


「うわあ、たっかーい!」

「いや、ちょっと待て……これは流石に‼︎」


 無邪気な葉隠とは裏腹に、俺はこの絶景に浸る余裕はない。


「なによ、もしかして怖いの? やーいビビリ!」

「いや、ビビってるわけじゃね——」


 このタイミングでマシンは急降下し、俺の言葉は強制的に遮断された。







「ヤバかった……さっきのはマジでヤバかった‼︎」

「ふーん、諏訪間って意外にああいうの苦手だったのね……その見た目で」

「だから‼︎ ビビってるんじゃねえよ‼︎ あと見た目は関係ねえだろうが‼︎」

「いいわ、そういう事にしといてあげる。今日の私は機嫌がいいのよ。フッフフ〜ン♪ 次はどこ行こっかな〜」

「話を聞け、話を」


 今日の葉隠は、一段とテンションが高い。

 そんなに遊園地に来たかったのか?


 かく言う俺は……。

 おとといの一件から、まだ全快になっていない。

 流石に昨日よりは大分マシになったが、このペースでアトラクション巡ってると……正直どうなるか分からん。


「葉隠、ちょっと休まねえか?」

「なんでよ? 行ける時行っとかないと、時間は戻ってこないのよ?」

「……そこでクレープ買ってきてやる」

「1番デカイやつ!」


 改めて扱いやすい奴……。

 俺がこう思うんだから相当だ。


「あ、ちょっと待って!」

「あ? なんだよ?」

「私が買ってくるわ。アンタの分も買ったげるからお金ちょうだい」

「?……いや、こういうのは漢の方が受け持つモンだろ」

「アンタが行ったら店の人怖がるじゃない」

「⁉︎」


 呆れながら言われた。

 葉隠に。


「いや、別に誰も怖がってねえだろ⁉︎」

「さっきのとこでアンタの隣に座ってた子とか、全然アンタの顔見ようとしてなかったわよ?」

「な⁉︎」

「なんなら学校でも結構避けられてるわよ?」

「は⁉︎」


 まあ確かに……未だにクラス内で碌に誰かと喋ってねえけど。


「げ、原因は何処にあるんだ⁉︎」

「……言わなきゃダメ? 私でもわかるのに」

「く……」


 流石に腹立ってきた。

 だがコイツがそう言うんなら、よっぽど分かりやすい理由がある筈だ。

 なら自分でそれに気付いてこそってモンだろ‼︎


「よし‼︎ 言わなくていい。自分で見つけ出す‼︎」

「え? いや、普通に教えてあげるけど」

「何も言うな。自分で自分に打ち勝ってこそ……漢ってモンだろ?」

「?……よく分かんない」

「無理に分かれとは言わん。こういうのはな……」

「いいからお金ちょうだい」

「あ?……ああ、悪い」


 財布から1000円札を取り出して渡すと、葉隠はすぐそこのクレープ屋に嬉々として駆け出した。


 ……それにしても、そうか。

 やけに周りがよそよそしいと思ってたら、俺避けられてたのか。

 軽く凹むな……。


 全く知らねえ奴を避ける原因っつったら、まあ見かけか?

 まさか一目で中身が分かるわけねえしな。


 なら俺が知ってる中で、避けられる見た目の奴ってどんな奴だ?


 命さんや崎和さんは、全くそんな事ねえだろ?

 偽造さんは……あの人にゃ悪いが、若干避けられてる感はあるな……。

 けど、命さん曰く要因は別らしいから除外と。

 響人さんは……よく分からん。

 葉隠は……そもそもアイツ自身が人見知りっぽいからな。


 ……ん?

 ちょっと待て。


「ハイこれ。苺のやつでよかった?」

「あ、おう」


 早くも戻ってきた葉隠からクレープを受け取り、たった今浮かんだ疑問をぶつける。


「なあ葉隠、俺って……まあ、人に避けられてんだよな?」

「そうね」


 即答かよ‼︎

 いや、今はまあいい。


「で、お前は結構人見知りだよな?」

「そう?」

「そうだろ⁉︎」


 落ち着け俺‼︎


「ともかくだ。なんでお前は、すぐ俺と打ち解けれたんだよ⁉︎」


 この前偽造さんが、未だ葉隠が碌に話してくれないって愚痴ってたんだぞ⁉︎

 そんな奴が、なんで俺とは普通に話せてる?


「…………さあ?」


 数秒考えるそぶりを見せた葉隠だが、最終的に返ってきたその答えに、若干肩透かしを食らった。


「お前なあ……」

「そう言われるとなんでだろ? ぱっと見ヤンキーみたいなのに」

「ヤン……⁉︎ 一緒にすんじゃねえよ‼︎」

「だってそうじゃない! 髪染めて目つき悪くて、傷があって耳になんかつけてて! それでヤンキーじゃなかったらなんなのよ!」

「んなモン1つしかねえだろ‼︎ 漢だ‼︎」

「意味分かんないわよ!」

「…………」

「…………」

「……こんな事で喧嘩してどうすんだ俺等」

「そうね。チャチャっと食べて遊びましょ」







「……オイ葉隠。次はこれに乗る気か?」

「そうよ! やっぱりこういうとこ来たら乗っとかなきゃね、コーヒーカップ!」


 普段なら何てことない筈のアトラクションだ。

 だが、残念ながら俺の今のコンデションは好調じゃない。

 今日だけでこんな系統のものばかり乗ってると……ヤバい気がする。


「なあ、別々に乗るわけにはいかねえか?」

「なんで? 1人で乗るの寂しいじゃん」

「……安全運転で頼むぞ」

「はいはい」


 そうこうしてる内に、俺達の順番になり適当なカップに座った。

 同時に、葉隠は中央のハンドルに手をかける。


「いや、待て葉隠‼︎ なんだその持ち方⁉︎」

「え、なに?」

「なにじゃねえ‼︎ 高速回転させる気満々じゃねえか‼︎」

「コーヒーカップといえば高速スピンでしょ!」

「俺の話聞いてたのかお前は⁉︎」


 この時、係の人のアナウンスが薄っすらと聞こえた。


「あ、動き出した」

「待て‼︎ 葉隠……」

「うおりゃああああああああああああああああ!」

「だあああああああああああああああああああ⁉︎」







 息も絶え絶えで葉隠に連れられていくと、椅子が外向きに配置された、円盤の様なアトラクションに辿り着いた。


「つ……次はなんだ?」

「よく分かんないけど、なんか回るやつ」

「……俺も乗らなきゃ駄目か?」

「ダメ!」

「…………」


 問答無用で乗せられ、安全バーを下げられた。

 数秒後、機械音が鳴ったかと思えば、円盤が少しだけ上昇した。


「あんまり激しく動かねえだろうな?」

「やっぱりアンタ……ビビってる?」

「やめろそのニヤケ顔‼︎ さっきから何回も違」


 円盤の回転開始により、再び俺の言葉は中断された。







 葉隠に引っ張られる内、今度はテントの側面に観覧車のゴンドラの様なものがついたアトラクションの前にいた。


「……なんだよコレ」

「えーと……なんか回るやつ」

「…………」


 なんか、もう……。


「? どうしたの?」

「いい加減にしろやぁ‼︎」

「な、なによ⁉︎」

「なんでさっきから回ってばっかなんだよチクショウ‼︎ こちとら体調万全じゃねえんだよコラァ……あ」


 しまった……つい声を荒げちまった。

 これで葉隠が動じる事はねえだろうが、ここは謝っとかねえと。


「いや、スマン葉隠。大声出して悪かっ……た……あ⁉︎」

「…………」


 謝りながら葉隠の顔を見ると、目に涙を溜めて固まっていた。


 ……滅茶苦茶動じていた。


「オイ葉隠⁉︎ 何も泣くことねえだろ⁉︎ そりゃ俺が悪かったけどよお……」

「えっと……ゴメン。勝手に色々やって」

「は?」


 逆に謝られた。


「いや、なに謝ってんだよ? 俺の方が……」

「ううん。私、諏訪間の事考えないで、自分のやりたいことばっかやってた……気がする。だからゴメン」

「……」

「私、あんまり友達とかいないから、楽しみだったんだ……。仲いい人と、色々やって遊ぶの」


 ……まあ、コイツ人見知りだからな。

 誰かと仲良くなるのが苦手なんだろ。


「ねえ、その……諏訪間は今日ずっと、楽しくなかった?」

「……あのなあ」


 俺の声に、葉隠はビクリと体を震わせ、目をキュッと閉じた。

 俺は屈んで手を伸ばし、葉隠の頭に掌を置いた。


「なに急にしおらしくなってんだよ、お前らしくねえ」

「だって……」

「俺も、こういう所来る事あんまりねえしよお。結構楽しかったぜ」

「……ホントに?」


 葉隠は目を開き、上目遣いで俺を見た。


「本当だ。俺は漢として嘘はつかねえ」

「……なにそれ。意味分かんない」


 まだ少し涙が溜まっていたが、葉隠は安心した様に笑った。


「……多分そういうとこだと思う」

「あ? 何がだ」

「私がアンタとすぐ仲良くなれたの」

「……フーン」


 面と向かって言われると、なんか照れ臭い。

 そのせいか、若干目眩が……。


「ッ⁉︎」

「え? ちょっと、なにフラフラしてんの?」

「スマン葉隠……限界だ」


 どうやら、尖らせていた神経が切れたらしい。

 俺の体は支えを失い、そのまま倒れた。


「うわ⁉︎ちょっと……重い! 諏訪間ー⁉︎ え、えっと……とりあえず近くのベンチ! その後……救急車⁉︎ どうすんの⁉︎ どうしよう!」







「で、都合良く俺が電話をかけたと」

「はい、そんな感じです」

「大変だね、雄生君も」


 なにヒッソリとリア充やってんだコイツ。

 妬けるわチクショウ。


「君にもいつかチャンスが来るさ、命君」

「うっせー! 心を読むな!」

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