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第22話 「もう1つの戦い」

「また来たぜ……」

「ねえ、本当に2日連続で? 私は別にいいけど」

「今日は昨日の様にはいかねえからな」

「あと、私お金ない」

「さあ、リターンマッチだ‼︎」

「聞け!」

「痛って⁉︎ なんでいきなり蹴んだよ⁉︎」

「あんたが無視するからよ!」


 命達が望川巴と戦っていたのと、ほぼ同時刻の事だ。

 1人の男……もとい漢もまた、ある強敵へ挑まんとしていた。


「まあいい」

「よくないわよ!」

「かかって来い……サイケデリックラーメン‼︎」

「なんなのよもう!」


 漢は敵の根城(ラーメン屋)の門を開き、堂々と中へ入っていった。

 1人のお供を引き連れて。







「また会ったな……昨日ぶりじゃねえか」


 目の前に現れた敵に、彼はいきなり啖呵を吐く。


「ねえ、あんたおかしいわよ?」

「バカ言え。俺は今燃えてんだぞ」

「よく分かんないけど、今は私よりあんたの方がバカよ」

「言ってろ。所詮テメエには分からねえよ」

「うん……やっぱ分かんないけど、なんか腹立つ」

「さて、そろそろ始めるか」

「……もう勝手にして。こっちはこっちで食べとくから」


 漢の闘志に押されてか、お供の戦いへの興味は、みるみる内に落ち込んでゆく。

 そんな事には目もくれないで、漢は右手に武器()を持ち、まず精神を落ち着かせる。


 自分の勝利をイメージし、士気が高まったところで、先制攻撃を繰り出した。


「‼︎‼︎」


 筈だったのだが、そう簡単にはいかない。

 敵の放ったカウンターが、彼の意識を朦朧とさせる。


「こっ……これしきの事ォッ‼︎」


 なんとか踏みとどまった。

 危うく1撃で勝負が決まるところだったが、これは彼が弱いわけではない。

 向こうが凶悪すぎるのだ。


「やっぱ手強い……だがそうでなくちゃなあ‼︎」


 この強烈なカウンターは、逆に彼の闘志を燃え上がらせた。

 すかさず2撃目を繰り出す。


「クッ……‼︎ どうした、その程度か⁉︎」


 彼は、敵の攻撃に慣れ始めていた。

 1撃目こそ危なかったが、それで先日の感覚を取り戻した彼にとって、勝てない相手ではない。

 もっとも、彼のダメージもまた大きい事に変わりはないが。


 この調子なら勝てる‼︎

 そう確信した矢先、事件は起きた。


「替え玉ちょーだい!」

「⁉︎」


 隣に座っていたお供の声。

 彼女は既に、同じ相手を一蹴していたのだ。

 更に、これから2人目を相手取ろうとしている。


 前回の時も、生還できたのは彼女のお陰だったとはいえ、あまりといえばあまりの実力差。


 だが彼は負けられない。

 奴にも、お供にも。

 ここで折れれば、漢としてのプライドを捨てる事に他ならない。

 彼にはそう思えてならなかった。


 消耗した相手を、彼は一気に片付けると言わんばかりの猛攻を繰り出す。

 だが、カウンターを専売特許とする奴にとって、それはピンチと同時にチャンスでもあった。


 どっちが倒れてもおかしくない壮絶な攻防。

 その激闘を制したのは……。


「ブッ………ハア‼︎」


 気づけば、奴は再起不能だった。

 勝ったのは彼だ。

 その強い意志が、見事に強敵を打ち破ったのだ。


「まだだ……」


 しかし、彼には新たな敵がいたのだ。


「替え玉もう1個! あとチャーハン追加!」


 そう、隣にいるお供である。

 もう1個などと言っているが、彼が数え間違っていなければ、既に彼女は6人抜きしている。

 それだけじゃない。

 討伐と同時進行で、別の敵達(餃子とかチャーハン)も葬っている。


 彼が1人倒す間に、それだけの相手を軽くあしらってしまったのだ。

 こんな物を見せられて、彼の闘争心が燃え上がらないはずが無かった。


「俺も替え玉だ‼︎ あと餃子‼︎」


 彼は、最早意識を保つのがやっとの状態だ。

 それでも彼は逃げない。

 これからの人生、敗北して逃げるという事は、彼には起こり得ないのだろう。







 どれだけの時間が経っただろう。

 これまで意地で突き進んできた彼にも、流石に限界が訪れようとしていた。


 あれから、例の敵を5人抜きし、更に別の相手(餃子4人前)をも撃破した。

 しかし……。


「そろそろ終わりにしよっと。ごちそうさま!」


 奴を30人抜きし、ついでに大量の軍隊(餃子とかチャーハン)を壊滅させ満足げにそう言った彼女には、遠く及ばなかった。


 あの小さな体の何処に、あんな量を詰め込めるのか。

 逆に、あれだけ入って何故あんなに小柄なのか。

 あんなゲテモノを、何故美味しそうにペロリと平らげるのか。

 謎が謎を呼ぶが、ただ1つ彼は確信した。


 負けたのは自分なんだ、と。


 全力を出し切り、それでも負けた。

 だが彼に悔いはない。


 全力でも足りなければ、己を磨き、乗り超えてやればいい。

 次なる挑戦への意気込みを抱いたその瞬間、彼は意識を失い、テーブルに突っ伏した。







「偽造の事はいいとして」

「いいんだ……」

「響人お前、怪我してんじゃねーか。大丈夫かよ」


 響人の両腕には、刃物を突き刺されたような傷があった。

 見た感じかなり深いし、血も結構出ている。


「まあ………応急処置くらいは出来る」

「えっと……ゴメンね」

「別に天音が謝らなくていい………自分の落ち度だし」

「でも……あ、じゃあ私の能力で応急処置出来ないかな? 傷口を縫い合わせて」

「………頼む」


 天音は、響人の制服の袖を捲った。


「オイお前それ……貫通してねえ⁉︎ マジで大丈夫か⁉︎」

「まあ、空気に触れただけでかなり痛いし………動かすと捥げるんじゃないかって程度の痛みだ」

「真顔で恐ろしい事言うな! それ大丈夫じゃねーよな⁉︎ 能力で応急処置っつってたけど、天音の能力って……」


 その天音は、右手の人差し指のアーマーリングを傷口に近づけていた。

 すると、そのアーマーリングから、うっすらと光るピンクの糸状のものが伸び、見る見るうちに傷口を縫い合わせていく。


「………糸の方は全く痛くないな」

「へえ……すげー」

「よし、左手も見せて」


 左手の方も、滞りなく縫い合わされた。

 あっという間に応急処置完了。


「攻撃には使えなさそうだが………色々と応用が効きそうだな」

「……ねえ、自分で言っておいてなんだけど……縫い合わせただけで応急処置になるのかな?」

「………大丈夫だろ」

「「適当……」」


 いいのかそれで。

 本当に大丈夫なのか?


「とにかく、さっさと雄生に頼んだ方がいいな」

「………なんで最初から呼ばなかった?」

「スマン、考える余裕無かった……」


 言い訳しながら、雄生の携帯に繋ぐ。

 だが、電話に出たのは、なにやらテンパった様子の女の子だった。


『え、えーっと……こちら諏訪間の携帯で、あの……」

「……その声は叶恵か。雄生はどうした?」

『?……あ、カムイさん⁉︎ 大変です! 諏訪間が気絶しました!」

「ハア⁉︎」


 なんすかその超展開⁉︎


「落ち着け! 何があったか説明しろ!」

『えーっと、リベンジするって言ってまた昨日の……』

「……うん、理解した」

『え?』


 そういやそんな事言ってたな……。

 で、無理して食って、昨日の俺よろしくぶっ倒れたわけか。


「俺等そっち行くから、ちょっと待っててくれ」


 そう言って電話を切ると、天音が心配そうな顔をしていた。


「諏訪間君たち、なにかあったの?」

「いや、心配しなくていい。とりあえず付いて来てくれ」

「? うん」

「向井………そのまま勾原を引きずっていくのはまずくないか?」

「! そうだよ!」


 あ、本当だ。


「ブレード使い以外が見たら………変な見世物になるぞ」

「そうだな。しゃーねえから起こすか」

「そっち⁉︎」


 そんなこんなで、今回もなんとか全員無事で乗り切る事が出来た。

 無事じゃなかったのは、偽造と雄生と、俺たちの財布事情くらいだった。


 ……アイツ等が平らげた分、殆ど俺たちが払いましたとさ。

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