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夏の果て

水の宇宙人マナブと破壊の概念インテリタスが紡ぐ連作短編です。


■いる人

インテリタス…破壊の概念。少女の姿を得た。人間勉強中。飛び出しがち。

マナブ…水の宇宙人。美青年。世話焼き。センチメンタルになりがち。

 空き地の陰、涼しい風を髪に受けている。空は薄い水色で、空気は澄んでいた。目の前には開けた空間が広がっており、一歩踏み出してしまえば、そこから先に夏はない。


 マナブは夏の果てに佇んでいた。簡単に言えば、夏と秋の境目に立っていた。そして、秋の領域に入ってしまうか、悩んでいるのだった。


 秋になれば、煩わしい夏の暑さとはおさらばだ。知らず知らずのうちに体力を奪われることもなく、身体が蒸発する心配もない。このまま、夏に留まるよりも快適に過ごすことができるだろう。


 ──そもそも、季節は進むものであって留まる理由はなにもないんだからな!


 躊躇わせているのは夏の記憶だ。まだ、夏は背中の傍にあった。後ろを振り返って、物理的に何があるわけではないが、夏に起こった様々な出来事がマナブのシャツの裾を引いているのだ。それらをすべて置いて行ってしまうような気がして、足が重たい。


 特区に住んで十年。果てに来るのは初めてだった。いつかは現れる、といろんな人間から聞いてはいたものの、こんな空き地で遭遇するとは思わなかったのだ。殺風景で、特別な場所でも、特別な時間でもないのに。


 果て、マナブのそれはステージの上だと思っていた。四弦を弾き切ったその場所が自分の果て、行き着く先、音が消えるところが終点なのだと思っていたのに。


 それがこんなところで現れるとは。


 確かに、夏はいろんな音の中にいた。さざ波、路を打つ大きな雨粒、かき氷が崩れるザクザクという音、アブラゼミの鳴き声とヒグラシの鳴き声、花火の破裂音、桃をちゅうと吸う音、それから小さな世界(イッツアスモールワールド)


 夏を過ごした空き地を、インテリタスと過ごした日々を、それをメロディーの終着点というのなら……。ならば、ここは果てと言っても不思議ではない。


 まだ、ここにいてもいいだろうか、とマナブは思った。この心地の良い音楽の中で、夏と一緒にいてもいいか、と。


 マナブの隣を少女が追い越していった。いつからそこにいたのだろう、赤いリボンの柔らかい髪が秋の風に揺れて、境の向こうで揺れた。少女──インテリタスが振り向いて、どうしたのかとでも言うようにマナブを一瞥する。


 二人の間に、季節があった。マナブは夏に。インテリタスは秋に。


「マナブも」


 そう言って差し出された手を取らない理由はない。


 次は一緒に秋の音を聴こう。マナブはそう思ったのだから。

読んでいただきありがとうございます☺

読者の皆様に少し不思議な出来事が降り注ぎますように……!


もしよければ評価を頂けるととても嬉しいです。


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