気分が憂鬱な卒業生
二章
鈴本玲奈はつまらない春休みを過ごしていた。4月からは市内にある大学に行くことになっているが、やる気が全然起きない。大学に対しても何の興味もない。
高校3年生の秋になっても、玲奈は卒業後の進路を決められなかった。やりたい仕事がある訳でもない。勉強したいことがある訳でもない。同じギャルグループの仲間たちは、進路を次々に決めていく。
いつも一緒にいた高木美咲などは、意外にもパソコンとゲームの知識が豊富で、卒業後はマルチメディア系の専門学校に行って、ゲームクリエイターになる夢を持っていた。仲間たちは大なり小なり、それぞれの夢や目標を持っていた。
しかし、玲奈にはそんなものがない。いつまでも進路を決めない娘に業を煮やした父親が、「金は出してやるから、とりあえず大学に行け」と言うので、玲奈の学力でも行ける市内の三流大学に行くのだ。
卒業式ではみんなに「これからはお気楽女子大生を楽しむぞ!」などと言っていたが、本当は卒業したくなかった。
友達と遊びに行っても、自分だけが取り残されたような気になり、面白くなかった。そんな春休みを過ごしていたとき、律輝から連絡をもらった。
律輝は特進科の同級生を会わせたいと言っている。どんな人物かは知らないが、学校の人気者で、困ったことが起きればいつもみんなを助けてくれる律輝なら、退屈な春休みを変えてくれるかもしれない。
いつも玲奈は律輝と紗里の間に入り、2人の仲を裂こうとしていた。あれは、半分は冗談で半分は本気だった。律輝と付き合う前の紗里は、顔はきれいだが目つきが悪く、特進科はもちろん、普通科の真面目な男子生徒からも怖がられていた。
しかし、律輝と一緒にいるようになってからは、悪い目つきがなくなり、よく笑い、周囲の人への気遣いもするようになった。本人は知らないけど、憧れていた男子生徒がかなりいたのだ。
玲奈は自分も紗里のように変えてほしかった。夢も目標もない自分に明るい光を与えてほしかった。そんな律輝からの連絡だ。玲奈は二つ返事で誘いに乗った。