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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第2章 リスナーさん最強説

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第9話 配信マネージャーの決意

 「今すぐギルドに連れて行ってくれ!」


「あら、今すぐは無理ですわ。あなたをオラエノ伯爵に仕える使用人として雇用するのです。特に、わたくしの配信スタッフとしてね。ですから、ギルドに行くのでしたら、仕事に差し支えない範囲でお願いします」


仕事に差し支えない範囲でだと……?

どこかで聞いたことがある言葉だ。

ああ、そうだ。

バイトすると決めた時、親や先生に言われた。

学業に支障がない範囲内で……

言われた通り、俺はバイトと学業を両立してきたんだ。

ダブルワークすることには、自信がある。


マリアンお嬢様は不思議そうな顔をしていた。


「それにしても転移してきた人って、そんなことがしたいのですか? 意外だわ。伯爵令嬢に拾われたんですもの、もっと欲にまみれたようなことを言うかと思っていたわ。それが何、ギルド? モンスター? ですって。そんなものに興味があるのね。

あなたは、わたくしが今まで関わってきた汚い人たちとはやはり、何か違います」


信じてもらえないと思ったが、マリアンお嬢様に、何か違うということだけは伝わったみたいだ。


「セバスワルド、彼は勇者になりたいそうです。オラエノ家で働くよりも、冒険したいと……、こんなに早く断られるとは思っていなかったわ」


あ、マリアンの表情が曇った。


馬車の中で配信アプリに夢中になっていて、忘れていた。

彼女は、さっき公の場で婚約破棄を言い渡されたのだった。

しかも、妹に婚約者を奪われて。


「あのー、俺は断っていないんですけど、そんなに気落ちすることない……」


言葉を遮って、セバスワルドは俺を説得しにかかってきた。


「少年、君がギルドへ行って冒険するにしても、寝泊りするところは必要ですよね。それをお嬢様は、確保するとおっしゃっているのです。オラエノ伯爵の元でボーイとして働き、ギルドでクエストを受ける。ギルドから帰ってきたら、お嬢様の配信を手伝う。それでいかがですか? もし、ダブルワークは無理だというのなら、残念ですが……ここで、馬車から降りてもらわねばなりません」


ダブルワークが無理だと?

そんなこと誰が、いつ言った。

それは俺の得意とすること。

バイトと学業の両立の帝王とは俺の事だ。

無理なわけがないだろーがっ!


「望むところだ」


「本当によろしいですか? 自己都合でギルドの仕事を受けるものに、寝床や食事、給金を与えるわけにはいきません。要するに、屋敷で働かない者にタダ飯を食わすほど寛大ではないということです。しっかりと、お嬢様の希望通りに配信をしてください。ただし、部屋でお嬢様にヘンなことしないように、わたしが目を光らせていますからね」


「ヘンなことって、何だよ。そんなことするわけないだろう。配信すればいいだけだろ。しますよ、配信。俺が配信マネージャーとして、お嬢様を人気配信者に押し上げて見せますよ!!」


「うわぁ、嬉しい! 頼もしいわ。セバスワルド、ありがとう。でも、お父様には内緒にしておいてね」


「使用人の一人や二人、減ったり増えたりはしょっちゅうですから、いちいち上に報告いたしません。ただ、配信はお部屋で行いますよね。そこだけは、怪しまれないように、わたくしとメイドが同席したほうがよろしいかと」


「ありがとう、セバスワルド」


このセバスワルドっていうのは、お嬢様から絶対の信頼を得ているんだな。

ただ気になる点が一つだけある。

さっきから、マリアンお嬢様はセバスワルドにだけ感謝しているんだが。

俺の名前、絶対覚えてもらってない。


「凄く頭が冴えているんだな、セバスワルドって。これが執事って仕事ですか?」


「いいえ、《《副》》執事です」


「あ、失礼しました」


まだ、上がいるのかよ。

そうか、執事はご主人である伯爵に仕えているのか。


「セバスワルド、屋敷についたらさっそく彼に仕事を教えて。準備が整ったら、わたくしの部屋でさっそく配信いたします。そして、あしたにでも、彼をギルドに連れていってください」


「承知いたしました」


やったー! 明日はギルドだ。

俺はツイてるぞ。

俺が勝手にわくわくしていると、セバスワルドが口を開いた。


「お嬢様、一言だけよろしいでしょうか」


「何でしょう」


「お嬢様にお付きのメイドにだけは、少年の事情を知ってもらった方がよろしいかと」


「そうね、アルケナには知っておいてほしいわ。お願いできるかしら」


「かしこまりました」


うぉっ、メイド、メイドがいるのか。

くーーー、ほんまもんの貴族社会だぁ!

メイドも美少女だったら、俺は鼻血ブーかもしれない。

俺もこの《《副》》執事のようにカッコよく決めたら、モテ期がくるかも。

真似してみよう。


「お嬢様、一言だけよろしいでしょうか」


「あら、あなたまで、何でしょう」


「夕飯、追加のお約束は、お忘れじゃないですよね」


「え、そこ?」


マリアンお嬢様は明るい表情で、俺に向かってウィンクしてきた。


「もちろん忘れてませんわ。ただし、お屋敷に帰ってさっそく配信を手伝ってくれたらね!」


何、これ。

すっげー可愛いんだが……。

セバスワルド、聞いてくれ。

ドキドキさせてくるのは、マリアンのほうだからな!

俺は何もしていないぞ。

やった、マリアン……、絶対に俺に気がある。

マリアン、俺のハートにどストライクなんだが。


そして、馬車は、オラエノ伯爵邸に到着した。


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