第67話 修学旅行―行方不明
「あ、すまん。電話だわ」
俺は三人を残して、店の外に出た。
「もしもし、大森か? 猿橋だが」
またか。
本当になんなんだ?
班長は有村なんだが、勘違いしているんだろうか?
「はい、何ですか? 特に問題もなく、計画通りに進んでますよ。それから、俺たちの班長は有村で、俺じゃないですよ?」
ハンバーガーなんて予定にはなかったが、言っても面倒だし黙っておくことにした。
「そ、そうか。それならいいんだが……」
さっきも気になったが、妙に歯切れの悪い言葉に引っかかる。
「さっきから何なんです? 猿橋先生、俺に何か言いたいことでもあるんですか?」
俺は、少し嫌な予感がしてきていた。
「べ、別に、言いたいことというか、なんと言うか……、あ、今、B組の狐崎先生に代わるから」
B組の担任?
俺の中で嫌な予感が膨れ上がって行く。
「もしもし、B組の狐崎だが。あのぅ、念のために、マリアンくんが行きそうなエリアとか、知らないないかなーと思って、電話したんだが……」
狐崎先生のはっきりしない態度に、イラっときた俺は単刀直入に聞いた。
「わざわざ、俺の電話に掛けてまで、それを聞くってことは……そういうことですよね? マリアンに何があったんですか? まさか……、いなくなったとか?」
違ってほしいと願いながら、俺は口に出して確認した。
「あ、そうなんだよ。知っていたのか。それならば話は早い」
その軽い一言と、抱いていた予感が的中したことに愕然とした。
「ちょ、待ってください。どういうことですか?」
狐崎先生は、そのまま説明を始めた。
「マリアンくんと同じ班の女生徒から、連絡があったんだ。絶叫フライング・コースター付近で、他校の男子生徒に絡まれて、マリアンが連れていかれました、と」
俺は言葉が出なかった。
「先生は、他校というのは見間違いで、もしかしたら大森と一緒にいるかもと思って、電話していたんだが……」
あの時の、あの電話はそういうことだったのか。
「連れていかれたなら、警察だと思いますけど?」
俺は感情的にならないように、なんとか抑えながら言った。
「先生なりに探してるんだが……」
先生なりに?
何度も俺に電話して確認することが、探している?
「先生なりにって……ずいぶん余裕ですね。先生たちだけで、この広いユニオンランドを探せると思っているんですか? 迷子放送とかは、お願いしましたか?」
怒りを必死に抑えながら、言葉を選んだ。
「竜崎先生が、事を大きくしたくないから、放送はダメだと」
あ・い・つ・かっ!……
「そうですか、わかりました。先生、マリアンは俺が見つけます。ですから……、
先生がたの言う集団行動のルールを、破る許可をください」
こんな奴らに任せておけない。
俺がマリアンを見付けないと!
怒りを通り越し、呆れてしまい、そんな気持ちが強くなる。
「じゃあ、竜崎先生に確認をとって……」
この期に及んで、まだ竜崎か!
「そんな余裕はありませんよ! 先生たちが許可する頃には、夜が明けます!」
焦りから、つい声が大きくなった。
いつまでも狐崎と話していても、ちっとも埒が明かない。
プツッ
俺は電話を切り、即座にマリアンへ電話をかけた。
トゥルルル……トゥルルル……トゥルルル……
出ろ! 出ろよマリアン!!
何やってんだ!!
俺が苛立ちを隠せないでいると、ハンバーガーショップから有村と芹沢が出てきた。
「おーい、大森。ア堀田が、ハンバーガーショップから出ないって、そう言い出して動かないんだが……」
堀田はどうやら計画を実行するようだ。
なんて純粋なマリアン信者なんだ。
けれども、俺はそれどころじゃない。
堀田にとっての教祖様を、探しに行かなければならないんだ。
「あぁ、あいつは好きにさせてやってくれ。わりぃ、俺も集団行動から外れるわ」
そう言い、走り出した。
「は? お前まで何言ってんの!? 集団行動はいいのかよ」
有村と芹沢も何もわからないなりに、焦っているようだ。
「大丈夫。帰りの集合時間には間に合わせるから。じゃあな!」
俺は二人の呆気にとられた表情を遠目に見て、大きく手を振った。
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