第63話 マリアンの荷物検査
修学旅行の前日、修学旅行に持っていく荷物をまとめていると、マリアンから電話があった。
「どうした」
「荷物が、どうしても多くなって困っておりますの。ここに、手伝いに来てくださらない?」
「えー、なんで俺が手伝うんだよ。女の子の荷物なんてわからねぇよ」
「だって、こんな荷物を四日間も持ち歩くなんて無理ですわ」
「全部は持ち歩かない。旅館やバスに荷物は置いてから、歩き回るから大丈夫だよ」
「でも……、カバンが五個もありましてよ」
「ご、五個?! お前は夜逃げでもするのか!」
俺の電話の声が大きかったのか、階段下から母さんが叫んで来た。
「マナブ―、誰と喧嘩してるの? あんた、またマリアンちゃんを怒鳴っているんじゃないでしょうねー!」
ちっ!
めんどくせーな。
俺は部屋を出て、階段を駆け下りて、玄関に向かった。
「マナブ―、マリアンちゃんちに行くの? 今から?」
「ああ、すぐ戻る」
「いいのよ、ゆっくりしてきなさい」
「すぐ戻るってば!」
マリアンのマンションは、俺の家の向かい側だ。
走ってマンションのエントランスに着くと、オートロック。
部屋番号を押すと、画面にアルケナさんの顔が映った。
「まあ、マナブさま。お嬢様がお待ちです」
エントランスのドアが開錠されてエレベーターに向かった。2階の部屋だから外階段を駆け登ってもいいんだがな。
部屋の前でインターホンを押すと、ドアが開き、アルケナさんが顔を出した。
「すみません。お嬢様が半泣きになっております」
俺は、遠慮なく部屋に入った。
最近は、マリアンの部屋で配信することがあるから、この家の間取りはよく知っている。
マリアンの部屋のドアをノックした。
「おーい、俺だ。入るぞー」
マリアンはドアを開けるなり、急に俺に飛びついてきた。
おい、アルケナさんが見ているだろ。やめろ。
「マナブさーん、皆さまは荷物どうしてらっしゃるのー? カバンの数を言っただけで『夜逃げでもするのか』だなんて。うわーーん!」
「落ち着け! たかが荷物ぐらいでガタガタ言うな」
みると、確かにカバンが五個、フローリングの床の上に並んでいる。
何を入れたら、こんなに多くなるんだ。
「洗面用具でしょ。カメラとお風呂セットと、ドライヤーと私服の着替えと……」
「ドヤイヤーなんか、ホテルとか旅館にあるだろ」
「だって、皆さんお使いになるとしたら、絶対に足りないと思いますわ」
「ドライヤーは、持ち込み禁止と書いてあっただろ」
「いやーん、アルケナがいないのに、どうやって髪をセットしたらいいのよ」
「知るか。自立しろ、自立。……なんだ、この派手なドレスはっ!」
「え、部屋着ですけど」
「部屋着はトレパン、トレシャツと決まっているだろ!」
「だって、四日間も同じ服を着るなんて、不潔ですわ」
「そんなもんなんだよ。……? この、ぬいぐるみは何だ。お前はぬいぐるみまで持っていくつもりか」
「だって、この子たちと毎晩一緒に寝ているのよ。この子たちがいないと眠れませんわー!」
あきれたお嬢様だ。
ぬいぐるみがないと眠れない体質だったとは知らなかった。
続けて荷物検査をしていると、大きくかさばっている紙袋を見つけた。
「なんだ、これは」
「そ、それは、見てはいけません!」
「さっさと中身を見せるんだ。徹底的に調べてやる」
「きゃーーーー、アルケナ―! 助けてー」
無理やり紙袋を開けると、生理用品だった。
「あ、すまん」
「酷いですわ! 見られたくなかったのにー」
「お嬢様、大丈夫ですか? そんなに泣かなくても……」
だから、女の子の荷物点検なんてやりたくなかったんだ。
次に目についたビニール袋を開けるのも不安になった。
「一応、確認な。これ、下着か?」
「ご覧になりますか?」
「そんなの、見るわけがないだろう! 見なくていいけれども、ドレスの下に身に着けるような、コルセットとかあるんだったら置いて行けよ」
「まあ、よくご存じでしたわね。コルセットとパニエとガーターが入っております」
「やっぱり……だいたいわかる。普通の下着だけにしておけ」
「普通の下着って……、アルケナ、ご存じ?」
「さあ、わたくしには見当もつきません。ここで、普通の下着をマナブさんに選んでいただいたらどうでしょう」
「そうですわね。マナブさん、この中から普通の下着を選んでくださる?」
マジか。
俺が選んでいいのか。
俺の好みの下着をセレクトしちゃうぞ。
やったーーー! 合法的に女性の下着を見られる。
今日まで生きて来てよかった。
「それからね、マナブさん、もうひとつ困りごとがありますの。みなさんと一緒にお風呂に入るようなんですが、それって、みなさん全裸なんですよね。どういうマナーがあるのか知らなくて……」
「あん? 風呂のマナーだって?」
マリアンの下着を選んでいた俺は、顔をあげた。
「あら、マナブさん、鼻血が……」
アルケナさんは、急いでティッシュペーパーを持ってきた。
ヤバい、目の前がクラクラしてきた。
マリアンの下着を見たうえに、お風呂の指導って、そんなの刺激が強すぎる。
「そ、それは、か、母さんを呼んで教えてもらってくれ……」
せっかくのチャンスだったが、俺はそう言ったきり、気を失って倒れた。
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