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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第5章 俺はモブじゃねえ、スパダリだ

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第59話 再会した直後におしかけられた話する?

「あなたにわたくしが守れますの?」


「大丈夫。俺、TUEEEE系だから」



 異世界から帰還した俺と、日本に逆転移してきたツンデレ令嬢マリアンは、

やっと現代日本で再会した喜びでいっぱいだった。


道路の真ん中で抱き合いながら、俺たちを今まで応援してくれたリスナーさんに感謝していた。



♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥



 周囲の目に気が付いたのは、小さな男の子の声を聞いてからだ。


「ママー、あのお兄ちゃんたち道路の真ん中で何してるのー?」


その声がしたほうを振り向くと、


「見ちゃいけません!!」


若いお母さんが男の子の目を手で覆い、現場から引き離そうとしている姿が見えた。

その人たち以外にも、道行く人の視線は俺たちに集まっていて……

そこで、俺はふと我に返った。


「なに道路の真ん中で抱きついてんだよ! ここじゃ、人目について目立つだろが。俺の部屋に行くぞ」


通行人の視線が背中に刺さる。

もう刺さるどころか切り刻まれるレベル。

通行人は全員、呪いの王の技を使えるのか?

背中の傷は剣士の恥なので、早々にこの場を離脱する選択をする。


感動的な再会シーンを数十秒で終わらせて、余韻に浸る間もなく、マリアンの手を取って家に入った。





 玄関の戸を閉めると、その音を聞きつけたのか、

台所の奥の方から、マリアン二号…もとい母さんが襲来した。


パターン青…使徒です!!


これはめんどくさくなりそうだ。


「何よ、マナブ、急に家を飛び出したと思ったら、もう帰ってきて。何かあった?」


母さんは、夕飯の支度をしていたらしい。

エプロンで手を拭きながらやってきて、マリアンを見て驚いていた。


「あら、あなた。さっき道で倒れていたお嬢さんね。あんたたち知り合いだったの?」


は? それこっちのセリフなんですが!?


「あらぁ、お母様でしたの? はじめまして、わたくしマリアン・オラエノと申します。またお会いできて光栄です。」


マリアンはドレスを両手で広げうやうやしく礼をして続けた。


「向こうの世界では、息子さんにいろいろとお世話になりまして……」


俺にお世話されていた自覚が、マリアンにあったのには驚きだったが、異世界に行った話は誰にもしていない。

そんな話をしても、信じてもらえないどころか、痛い子認定されて、卒業まであだ名は『異世界くん』で確定だろう。



「向こうの世界?」


母さんはキョトンとした顔をして聞き返す。


まぁそういう反応になりますよね。

余計なことを言わないように後で言っておかないとな。


「あー、前のバイト先の名前だよ。ファミレス異世界。ってか、母さんはマリアンを知っていたのか? 道で倒れていたって?」


 母さんの話によると、

さっき買い物に行こうと家を出たら、道路の真ん中でマリアンが倒れていて

心配で駆け寄って声をかけたそうだ。


すぐに彼女の意識は戻り、意識もはっきりしていたから、

大丈夫そうだと思って、そのまま買い物へ行ったのだという。

お人形さんのように、綺麗で可愛いと思ったなどと、余計な感想も聞かされた。


まさか、第一村人が母さんになるとは……なんという強運。

世の中は広いようでいて狭い。



とりあえず、マリアンが余計な事を言う前に、俺の部屋に連れて行かないと。


「ちょっと汚いけど、俺の部屋へ行くか。あ、靴は脱ぐんだよ、靴は」


土足で家に上がろうとしたマリアンに注意すると、


「マナブあんた! お客様にむかってなんて乱暴な言い方するの。ごめんなさいね、マリアンちゃん、ガサツな息子で……」


そんな乱暴な言い方してなくね!?


「いえ、慣れていますから、大丈夫です」


マリアンはハイヒールを脱ぎながら、そう言って笑顔で答えた。


「あら、慣れてるだなんて、マリアンちゃんったら。もし、また何か言われたら、ぶっ飛ばしちゃっていいからね?」


おい、実の息子をぶっ飛ばさせるなよ。

それと言っておくが……マリアンはマジでやるぞ?

これ以上、母さんに介入されると、話がややこしくなる。

一刻も早くこの一号と二号を引き離さなくては!


「母さん、もういいから。茶でも出して」


無難な理由を作り、母さんをマリアンから遠ざけようとしてみる。


「お茶って煎茶でいいの? コーヒーとか紅茶とか……」


くっ、まだ引かないか!


「なんでもいいから!」


もう、強硬手段に出るしかなくなる俺。


「はいはい。じゃ、マリアンちゃん、ゆっくりしていってね」


母さんはニコッと笑顔を見せ、台所に戻っていった。


母さんはずーっと以前から、可愛い娘とお話したり、ショッピング行ったりしたいって言っていたからなぁ。

だから、早く彼女を作って連れてこいと……


モテなくて悪かったな。


「ありがとうございます。では、遠慮なく」


と、答えるマリアン。

君はいつも、遠慮なんてしないだろ。

というのは心の声に留めておき、そのまま階段を上って俺の部屋に連れて行った。




 「狭くてごちゃごちゃした部屋ね」


と、先制攻撃を仕掛けてきた。

ふっ、そんなこと俺が一番よく知ってるぜ。

……なんだか悲しくなってきた。


「『あなたのいた国とは違いますわ』って、俺が君に言われた言葉、そのまま返してやるよ」


俺が言った言葉にマリアンは笑った。


「あら、出会った時のこと覚えてらっしゃるなんて、嬉しいですわ。ふふふ」


笑顔は相変わらず、きゃわいんだが。

数日会わなかっただけなのに、すごく懐かしく感じる。


「ところで、どうして向かいのマンションなんかにいたんだ?」


「女神ジョイさまの計らいで、セバスワルドとアルケナもここに転移してきましたの」


「なに? 来たのはマリアンだけじゃなかったと言う事か。なんというご都合主義」


「ええ、金貨が入った袋を三つ持って……それを換金して、セバスワルドが、あのマンションの一室を買いましたの」


「ご都合主義すぎる……。すると、マリアンはあのマンションに住んでいたということか。どうりで、探しても見つからなかったはずだ……」


「でも、モブさんの家がここなら、わたくしここに住みますわ」


「おい、勝手に決めるな。 そんな……マリアンの家みたいに、ここは広くないんだからな」


「えー!? あなたと住みたいですわ。あっちの世界では、ひとつ屋根の下で暮らした仲じゃありませんか」


「いや、いや、ひとつ屋根のひとつの規模が違いすぎるから……。それに、俺の親が何ていうかわからないじゃないか。だいたい、年ごろの女の子がぁ? 

そんな簡単に、息子と住むことを許すはずがない」


「大丈夫。わたしは、モブさんがやってくださったように、この家の仕事をしますから」


「いや、俺んちは、アルバイト料なんか支払えないぞ、たぶん」


「お願い。ここに居させて♡」


マリアンの甘い誘惑の瞳に、俺は吸い込まれそうになり、思わず顔を近づけた。

マリアンの唇までの距離、あと数センチ……



その時、突然、部屋のドアが開いて、母さんがお茶を持って入ってきた。


「マナブー、お茶持って、……あ、…お邪魔だったわねぇ。ここに置いとくから、どうぞごゆっくりー」


俺は、慌てて母さんに言った。


「誤解だーー!!!」


と叫ぶ俺に、


「ここ二階ですわよ?」


という、マリアンからの天然ボケが飛んできた。



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