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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第4章 爆ぜろリア充

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第57話 ゴブリンアングル再び

挿絵(By みてみん) 


俺は日本に帰って来た。


バイト先の休憩室にひとりで座っていた。

一緒に帰ってきたはずの、マリアンの姿は……ない。

あの女神ジョイ、また座標を間違えやがって……!


バイト先の店長が休憩室にやって来た。


「あ、いたぁ大森くん。お前! 無断欠勤な、クビだ。と、言いたいところだが,

人手不足なんだ。出勤してくれて助かったわー」


「すみません、俺、バイト辞めます」


「ちょっ……! 困るよ、やめられたら」


「そんじゃ、家に用事あるんで帰ります」


「何しにきたんだ? あいつ」




 俺は、バイト先を飛び出して家まで走った。

そして、家に着くなり部屋中をまわってマリアンを探した。

もしかしたら、俺の部屋にと思っていたのだが、マリアンの姿はなかった。



 それから、三日間探し続けた。

この先は、どうやって探したらいいんだ。

まさか、警察に相談するわけにもいかない。

女神ジョイは、絶対に座標ポイントをミスったんだ。





 そういうわけで、マリアンと離れてしまった俺は、部屋にこもってゲーム三昧だ。


「さぁ、いこーか。久々のクエストだ!」


異世界から帰ってきて、今は自分の部屋でネッ友含む三人でオンラインゲームをしている。

ゲーム自体は、どこにでもあるようなアクションRPG。

今回受けたのは、夜な夜な叫ぶゴブリンを討伐するクエスト。

ゴブリンの住処である薄暗い洞窟では、そこら中からゴブリンの鳴き声が響いてくる。



このゴブリンの声、あの時倒した奴の声に似ている。

懐かしいな。

俺も異世界でゴブリン退治に行ったけなぁ。


あの時のマリアンは、いつもより可愛く見えたのを今でも覚えている。



そんなことを考えていると俺の操作しているキャラが、ゴブリンたちに見つかってしまった。


「あっ、やべ」


そんな初歩的なミスをした俺を、ネッ友がイジってくる。



“気付かれたようだな”

“ちっ! 久々にインしたと思ったら相変わらずどんくせぇな!  これだからモブはよぉ……”



「俺はモブじゃねぇ!」


誰がモブキャラだ!

主人公の器だろうが!

夢はでっかく世界チャンピオンだ!


……何かのな!



そんないつものやり取りをしていると、ゴブリンたちは、ギャッギャッと叫びながら襲ってきた。

俺は、襲い掛かってくるゴブリンを次から次へと倒しまくった。

異世界で実戦をつんだ俺は、間合の取り方や立ち回りが異常なほど上手くなっていた。


ゲーム以外で役立つことないけど。


「はい、撃破。これで問題ないよな」


三体いたゴブリンを、俺一人で討伐



“つえー!!! 前まで俺らと実力変わらなかったのに”

“いつの間にそんなに上手くなったんだ? お前”



どのゲームをしても、実践を経験した俺としては現実味がなく、つまらない。

いくらやっても所詮、ゲームはゲームだ。



「まぁまぁ、元から備わってた実力よ! じゃ、俺、そろそろ落ちるわ。お疲れー」


俺は、ゲームからログアウトしてベッドに寝転び天井を見つめた。



「つまんね」



異世界に居たほうが、毎日が楽しかったな。

元の世界に戻るために、ドラゴンの棲む山へ行くと言った時の、マリアンの決意の表情。

あの顔が今でも忘れられない。

俺の目を真っ直ぐ見つめながら言った言葉。



『最後の瞬間まであなたと一緒にいられるのなら』



あの真剣な表情にドキッとした俺は、

何も言えなくなってしまったのを覚えている。


その時だけじゃない

笑った顔も、怒った顔も、照れた顔も、言われて嬉しかった言葉も

全て忘れられずにいる。



「マリアン……どこにいるんだよ」


こんな世界でくすぶっているくらいなら、モンスター討伐などの依頼を受けて、のびのび暮らせる、異世界での生活の方が性に合っていた。

早死には嫌だが。

それに……


「マリアン……」


またその名前が出てしまう。


「どこにいるんだよぉ。俺、もうつぶれてしまいそうだ」




 彼女との思い出を頭から振り払いたくて、俺はベッドから飛び起き、窓へ近付いた。


窓から眺めると、家の前には、新築マンションが完成間近だった。

俺が転移する前は、確か未完成だった。

まだ、内装業者の車などの出入りが頻繁にある。



「ほぇー。こんな立派なマンションが建ったんだなぁ」



 窓際に頬杖をつきながら、新築マンションをぼんやり眺めていた。

日本に帰って来てから、ずっとマリアンを探すことに夢中で、家の前の景色なんて気にも留めなかった。

マンションを高層階から下に向かって視線を動かした。


すると、俺の部屋と同じ高さにあるバルコニーに、同じように頬杖をついて

こちらを見ている一人の女性がいた。


綺麗なブロンドの髪に、青主体の主張しすぎない控えめな可愛らしい服……

相手もこちらに気付いたようで、目が合った。

なんだか、マリアンに似ている気がするな。


まさかな、三日間も必死に探して見つからなかったのに。

ダメだ、周りの人がマリアンに見え始めたら終わりな気がする。

末期症状?


考えすぎて、こんなんになっているとか、アイツには絶対に言えない。

調子に乗らせるだけだからな。



「いたーーー! 見つけましたわ!!!!」



あー、とうとう幻聴まで聞こえ始めたか……

こちらを見ていたバルコニーの女性は、俺に向かって大きく手を振っている。


元気な人だなぁ……


そんなことを感心しながら眺めていると、女性はすごい勢いでバルコニーから中へ戻り、部屋を飛び出して行くのが見えた。



……まさか、本当にマリアン?


マンションの外階段をハイヒールで駆け降りてくる音がする。


カンカンカンカン、カンカンカンカン……


近所に鳴り響くほどの大きな靴音だ。



「マリアン!」



俺は部屋を飛び出し階段をドタドタと降り始める。

遠目だったが、あれは絶対マリアンだ。


あんなに騒がしい女を、俺はマリアン……と母親しか知らない。


家の玄関から道路に出た。

そこには、あの日「ずっと一緒にいる」と、言って抱き着いてきたマリアンが立っていた。


ってか、ヒールなのに降りてくんの早くね?

それと、立ってる場所が道路の真ん中なんだけど?



マリアンは、ブルーの瞳をウルウルとさせて、あの日と同じように俺に抱きついてきた。


「もう二度と会えないかと思ってた!」


もう会えないと思ってただって?

お前が勝手に、魔法陣の中に飛び込んできたじゃないか。

勝手すぎるマリアンの言葉を聞き、


俺は戸惑うことなく、彼女の腰に手を回した。



「バカ、お嬢様なんだから、階段くらいお淑やかに降りてこい」



俺は、マリアンをこの胸の中に抱きしめた。

時が止まったような瞬間だった。


と、思ったのはつかの間。

マリアンは、ポーチからスマホを取り出した。


「おい、それ俺の……」


「今はわたくしのスマホですわ。あたなが、わたしにくださったじゃありませんか」


そう言いながらマリアンは、俺が止めるより早く、配信アプリを開いてしまった。

素早い。さすがに手慣れている。


「じゃ、配信はじめるわよ、よろしくって?」


いや、日本に戻ったらスキルは消えるって聞いたから、【追尾】出来ないはずだ。


俺は、速攻でカメラを手で隠して、画像が見えないようにした。


リスナーさんが来る前に、伝えたいことがあるからな。


「……ちょ、何ですの?」


「ここには、ゴブリンもドラゴンもいない。俺も討伐に行かないぞ? それでもいいのか?」


「えっと……?」


「君はそれでも、ここにいたいと思うのか? 俺は、どんな世界でも君を守りたいと思ってる」


おそらく、コメント欄は今頃、物凄い速さで流れているだろう。


「あなたに、わたくしが守れますの?」


久々の配信だし、マリアンは人気者だ。

でも俺にはそんなこと関係ない。

どんなにファンが増えようと、マリアンは俺の彼女だからだ。

それをここで公言しておきたい。


「大丈夫。俺、TUEEEE系だから」



“やったー、一番乗り!めっちゃ久々!!”

“マリアン、来たよー!無事だったんだね”

“何もみえないwww”

“え? どこにいるのマリアン?”

“ドラゴンがどうのって言った? これはモブの声じゃないか?”

“まさかまさかの愛の告白?”

“どこにいるんだよぉ”

“モブ……ビビアンのこと、お遊びじゃないだろうな?”



「そこまで言うのなら……。ただし、もしまた、わたくしから離れようとしたら許しませんからね。その覚悟はよろしくって?」


マリアンは、抱きしめられながらも俺を見つめて、真っ赤な顔で言った。


「ああ、上等だ。君こそ後悔するなよ?」



“あ! 空だ。空しか見えないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!!”

“ゴブリンの時と同じパターンじゃん”

“このアングルを、ゴブリンアングルと名付けよう! みんな使っていいんやで?”

“そう呼ぶのはきっとお前だけだ。許可なんて出さなくていい安心しろ”

“モブとマリアンがどうなってるかは、想像しろってか?”


俺とマリアンは、道路の真ん中で抱き合いながら、リスナーさんに心から感謝していた。


挿絵(By みてみん)

ここまでが異世界編です。

次から現代日本へと物語の舞台が変わります。


「面白かった!」

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