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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第4章 爆ぜろリア充

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第55話 魔法陣ー①女神ジョイ降臨

「とにかく、これで帰る準備はできた。そろそろ始めるぞ」


「え? この流れで? 早すぎませんか?」


「こういう大きなことをするには、勢いが大事なんだ。」


「勢い?」


「そうだ、時間が経つと決意が鈍って、だんだんとどうでもいい事になってしまう。流れが来たら迷わず乗ること。これが俺の信条だ」


俺は偉そうに言って、魔法陣が描かれた羊皮紙を広げ、地面に描き始めた。


その間マリアンは、リスナーさんたちのコメント欄を読んでいた。

そのスマホも持って帰るから、今のうちに好きなだけ配信させておくか。


でも念の為、配信マネージャーの業務として、そのコメント欄が荒れていないかだけは、チェックさせてもらうよ。



“あ!マリアン! なんかモブ地面に落書きしてるけど?”

“魔法陣じゃねーの? 帰国するの早くね?”

“モブの本当の気持ちを聞いた方がいいよ?”

“俺の話……じゃなくてモブの気持ちを聞けぇ!”

“あいつも大概ツンデレみたいだからなw”



俺は魔法陣を描きながら、時折コメント欄をチェックするという器用なことをしていた。



背中のほうからマリアンの声がした。


「出会った頃、俺(つえ)ー系になると言っていましたわよね? 帰ってしまうということは、もうつえになったってことかしら? でも、あなたがいなくなったら……」



「杖? ああ、つえぇ系な? いなくなったら寂しいとか言うんじゃないぞ」


「あなたがいなくなったら…… スマホもなくなっちゃうから、不便になるわ!」


マリアン、俺よりスマホ命なのか。

まあ、スキルを授かったのはスマホだしな。

マリアンの生活を明るく変えたのも、俺じゃなくてスマホ……だし。

これに関しては、反論の余地もない。


だが、もしも俺がマリアンだったら……、聞きたいことがたくさんある。


例えばこんな風に、


『どうして帰りたいの? もう二度と会えなくなるの? この世界は楽しかったですか? 私との時間はどうでした? 私のこと……どう思っていましたの?』(妄想)


だいたい、こんな感じのセリフが、ラブコメ漫画だったら出て来るだろう。

しかし、俺の期待通りにはいかない。

マリアンは、それっきり何も言ってこなかった。


そして、時間は過ぎ、魔法陣は完成した。

俺はクリスタルを持ってその真ん中に立った。


さあ、帰るぞ。

それから……それから……どうするんだっけ。

そのあと、どうすればいいんだっけ。

ヤバい……

ここまで来て何を唱えるのか、わからない。

いや、何か説明された気がするけど……思い出せない。


俺は、魔法陣の真ん中でがっくりと膝を落した。


落ち着け、俺。

記憶を辿って思い出すんだ。



「どうかしましたのー?」


マリアンは心配しているのか、それともわざとなのか、間延びした声で問いかけて来た。


ここで、帰り方が分かりませんなんて、言えるわけないだろ。

えーーっと、えーーっと、



「あのぅ、すみませんが、まだお時間かかるのかしら?」



お前、何を痺れ切らしているんだ。

さっきまで、泣いていたくせに!!



「俺にわかるわけがないだろ!」


「え、まさかその先が、どうしたらいいのかわからないって? あり得なーい! 常識的に、あり得ないですわ。じゃあ、聞けばいいんじゃありません? 例のドジで間抜けな女神さまに」


「ああ、そ、そうだな。聞けばいいんだよな」


俺は、心の中で助けを呼んだ。


ー『女神ジョイさま、助けてください! 帰り方を教えてください』




「ちょっと、お嬢さん、ドジで間抜けな女神さまって、誰の事かしら?

まさか、わたしのことじゃないでしょうね」


突然、女神ジョイが姿を現した。

冗談半分でからかって言った言葉に、詰問されているマリアン。

この二人は、初対面だ。


「と、突然、現れて…どなたかしら?」


「あなた、今わたしを呼んだでしょう? わたしはね、呼ばれたから来たのよ」


「あら、呼ばれたってことは、ドジで間抜けな女神という自覚があるのですね」


「な、何よ、このお嬢……? 違う、違うわ。わたしを呼んだのは、男の声だったわ。やだわ、わたしったら、またミスった?」


「ほうら、ごらんなさい。ドジで間抜けな女神で合っているみたーい」


「おだまり! まだ本当にミスったかどうか、証拠がないでしょ」


「あら、ご自分でおっしゃいましてよ」


おい、おい、呼んだのは俺だ。

女って初対面でも喧嘩できるのか。

とにかく、女神ジョイに助けてもらわないと。


「あのう、お取込み中すみませんがー、女神様はミスってませんよー。俺です。俺が呼びました」


「あらぁ、マナブさん、ひさしぶりー。その後どうでしたか? ふーん、なるほど。素晴らしい!」


女神ジョイは、地面に描かれた魔法陣を確認するとしきりに感心し始めた。


「見たところ、魔法陣とクリスタル……、完璧だわ! すごいじゃない! ブラボー、ブラボー、大したものね。本当にクリスタルを手に入れたんだ。よくここまでやったわ。

で? ここでわたしを呼んだということは、日本に帰るってことね」


「はぁ、それが……、魔法陣の真ん中に、クリスタルを持って立ったんですけど、ここから先の方法を、どうしても思い出せなくて」


「そりゃそうですよー。だって、その先、教えてないものぉ」


「え? 教えていない?」


女神ジョイは、とても重要なことを軽く言った。


「だって、ここからはわたしの仕事ですから」


「そうだったんですか」


「そうよ。はい、邪魔者はどいて、どいて」


女神ジョイは、マリアンを邪険に岩場の奥へと追い払った。


「嫌です。わたくしは邪魔者ではありませんわ!」


「関係者以外立ち入り禁止です」


「わたくしは関係者です!」


「あら、どんなご関係ですか?」


「えっと、それは、……それは……」


女神ジョイは言葉に詰まったマリアンを、無理やり遠くへ追いやろうと背中を押した。


「ほらほら、部外者はね、岩場の後ろまで下がって、下がって」


「嫌です。離して! 離してください」


マリアンが俺から離れていく。


待ってくれ、まだマリアンに伝えたいことがある。

このまま離れてしまったら、伝えられないじゃないか。

ったく! しょうがねぇなぁー!


「おい、俺のマリアンから手を離せ!」


女神ジョイもマリアンも、驚いて口をポカンと開けたまま、俺を見た。

え、そうして、そんなに驚く?


「モブさん……、足元……」


俺は魔法陣から足が出ていた。


「あ」


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