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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第4章 爆ぜろリア充

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第48話 今ならまだ引き返せる

 「……それで、そのドラゴンはどこにいますの?」


マリアンの前を歩く俺の背中に向かって、マリアンは無邪気に聞いてきた。


——ドラゴン。


俺にとって、ドラゴンといえばゲームや物語の中に登場する架空の存在だ。

強靭な身体と、大きな翼を有する空の覇者。

友好的だったり、お姫様を守ったり、はたまた革命軍のトップだったりする。


だが、マリアンのいるこの異世界で、ドラゴンは普通に実在している。

だから、マリアンは無邪気に『ドラゴンは……』なんて言えるんだ。


俺はスマホを取り出して、Siriに【ドラゴンを追尾】と伝えた。

それを見ていたマリアンは驚いて言った。


「今から、配信するんですか? こんな山の中で……あら、大変! メイクを直さなくては……」


「違う! 配信じゃない。スマホの【追尾】機能で、ドラゴンを探すんだ。このスマホの【追尾】機能は、もともとドラゴンを見つけるために授かったスキルだからな」


「あら、と言うことは、最初からスマホの【追尾】機能でドラゴンを探すのが本来の目的という意味なのかしら。転移して最初に出会った頃から、スマホで元居た世界に帰るつもりだったということ?」


「ああ、ごめんな。そういうことだ」


マリアンは、捨てられた子猫みたいな悲しそうな目で俺を見た。

俺はわざとそれに気が付かないふりをした。

騙したつもりはない。

今まで言う機会がなかっただけだ。


「ここを登った先、少し開けた場所に“ヤツ”はいるようだな」


マリアンを見向きもせずに、スマホが移動した先を見ながら俺は言った。




 ここはオラエノ領にある有名な霊峰『シエロ』

目的のドラゴンの住処へ向かって、傾斜がきつくゴツゴツした岩場が続くこの山を、

かれこれ半日近くも歩いている。




 マリアンは、きつくなっていく息を必死に潜めている。

たぶん、おれに心配をかけたくなくて、頑張って登っているのだろう。


そんなマリアンが健気でかわいいと、正直思う。

マリアンがもしも俺の彼女だったら、俺はどうするかな。

それでも、日本に帰りたいって思うかな。


もし俺の彼女だったら……

マリアンともっと一緒にてもいいかな。


それって、イチャラブ路線まっしぐらじゃん。

正直いうとそれも悪くない。


おっと、そうじゃない。

マリアンはオラエノ家を飛び出してきたとはいえ、伯爵令嬢であることに変わりはない。

俺なんか、クビになったし、配信だってマリアンのお陰で伸びているだけで、俺の実力じゃない。

身分に差がありすぎだろ。

どんなに好きでも、身分格差ってやつが邪魔をする。

どうあがいてみても、俺とマリアンをじゃ釣り合わない。


だから、俺はマリアンを諦めて日本に帰る。

マリアンだって、そのうちに別の貴族の男が出来て、さっさと結婚するかもしれない。

そのほうがマリアンだって幸せだろう。


で結局、考えた挙句の果てが、これ。

マリアンとの最後の冒険だ。



スマホに先導される形で、俺たちは山道を進んだ。


 しばらくすると、山道は白い霧に覆われた。

霧のせいでスマホを見失いそうだ。


「……ストップ」


俺はそう言って歩みを止め、マリアンに制止の合図を送った。

マリアンの視線が、再び俺の背中へと向けられた。


白い霧が、足元の岩場さえも包み込もうとしている。

マリアンは、山の気候の変化に気づいて、怯えているように見えた。

彼女は、ゆっくりと深呼吸をして落ち着こうとしていた。


こんな山奥までお嬢様を歩かせるなんて、俺はどうかしているな。


俺はマリアンのためを思って、声をかけた。


「今ならまだ引き返せる」


「……はい? 今なんとおっしゃいましたの?」


「今度ばかりは本当に危険だ、これまで出会ったモンスターとは、ランクが違う。最悪、死ぬかもしれない」


俺は、真剣にマリアンのためを思ってそう伝えた。


「それはつまり、わたくしに“帰れ”ということかしら?」


マリアンは口調を強めて言い返してきた。


「……そうだ」


そんなことを言っている間にも、霧はどんどん濃くなり、視界を奪っていく。


「いいえ、お断り申し上げますわ。それに、今一人になる方がもっと危険じゃなくって? ただでさえ足場の悪い山を、霧が出てきた状態ですのよ。それを一人で山を下りろだなんて、それこそ自殺行為ですわ」


「確かに、それもそうか」


強気なお嬢様は、俺などお構いなしにどんどんと霧の先へと向った。

なんて、無謀で、強情で、気の強いお嬢様なんだ。

俺は足早にマリアンを追い越し、再び先導するように前を歩いた。


しかし、無情にも霧は【追尾】中のスマホを見えなくしてしまう。

このままでは、スマホを見失いそうだ。

スマホがまだ見えるうちに、回収したほうがいいかもしれない。


精神的にも肉体的にも疲労が溜まった頃だ。


「ここは無理をしないで、休憩しよう」


マリアンはほっとした顔で、腰を下ろせそうな空間をみつけて座り込んだ。


「もう脚がパンパンですわ~」


普段なら、ここでマリアンを元気づけたいところだが、俺も限界だった。

ただ、だまって座って霧が晴れるのを待っていた。





 しばらく休憩していると、さっきよりは霧が薄くなった。

これなら先に進めるかもしれない。

出来れば、暗くなる前にドラゴンを見つけたいからな。


「ほら、もう行くぞ」


そう言い、俺は再び歩き始めた。


「なんでそんなに急ぐんです? そんなに早く帰りたいの? あなたの世界は、わたくしがいる世界よりも素敵なところなんですの?」


ごめん、マリアンその質問には答えられない。

それに今答えてしまったら、たぶん俺の決意が鈍る。


俺はひたすらスマホの行く先を目で追っていた。





 またしばらく時間が経過すると、今度は今までの足場の悪い道とは様子の違う場所に出た。


霧の中でも分かるほど、大きく開けたその空間には傾斜がない。

しっかりと踏み固まった土になっていた。


そして少し先に、視界が悪くてもわかるほどの巨大な“影”を見つけた。

その影は、オラエノ邸ほど大きくないないが、荷馬車よりは大きいくらいか。


霧のせいで全容が見えないからか、得体の知れない恐怖で息が止まりそうになった。


「もしかしてあれが——」


不用心にもマリアンは声に出して驚いた。

すかさず俺は、しっ!と静かにするようにと促した。


俺は正面を見据えたまま、マリアンの真横までゆっくりと下がった。



「おそらく“ヤツ”だ。どうやら寝ているようだな。」


ついに、俺たちはドラゴンの姿を見つけた。




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