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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第3章 人気配信クエスト企画

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第46話 小さな力こぶ

 マリアンの言葉で俺の渾身のヘイト稼ぎは、一瞬にして打ち砕かれた。

そこで俺はつい声を荒げてしまった。


「マリアン、気は確かか? 自分が何を言っているのかわかっているのか!」



“まさか、マリアンはそれを最後の配信にするつもりじゃ……”

“俺たちと一緒にいられる最後にするというのかよ”

“違う。モブとの最後の時間にするつもりなんだよ”



「あなたとの思い出を、リスナーさんたちの心に焼き付けておいてほしいの。

ここにわたくしたちがいたという証明を、残したいの」


「スマホを持ってドラゴンの住処へ行くようにと、女神様からは言われているけど、

君を連れていくつもりはないからな。そんな危険なところへ連れていけるわけないだろ。俺一人で行くし、配信もしない!!」


「その言葉は……少しは大切に思われているようで、嬉しいです。ですが……あなたがいなくなるかもしれない最後の戦いに、わたくしが何も出来ないのは嫌!」



“マリアン、健気。可愛い”

“配信できるようになったのも、女神様のおかげだったのか”

“それならなおさら、最後の時まで俺は、マリアンやリスナーの仲間と一緒に居たい”

“わたしも”

“同感です”




「危険だからこそ、わたくしはあなたについて行きます。一人で行かせるわけにはいきません。ドラゴンとの戦いを配信して、リスナーの皆さまと一緒に戦いますわ。リスナーの皆さんは、きっと協力してくれると思いますの」



“そうだ、そうだ! 俺は協力を惜しまない”

“わたしたちだって”



ちょっと待った。

俺の思惑とは違う方向にリスナーが動き出しているんだが……

マリアン、お前のせいだぞ。


「協力してくれるのはありがたいが……、もし俺が凄惨な姿になっても、君は耐えられるのか?」


そう問われて、マリアンは一瞬戸惑った。

だが、俺の瞳をみつめ返してきて言った。


「最後の瞬間まで、あなたと一緒にいられるのなら」


マリアン、かっこよすぎる!

いつのまにそんなに強く成長したんだ。

ヤバい、俺のほうが涙腺崩壊しそうだっての。


「ということで、重大発表ですわ!! 話を聞いていただいた通り! 今度ドラゴンとの戦いを配信いたします!!!!!」


マリアン、切り替えが早っ!

さすが、俺が育てた人気配信者だ。



“うっわ!まじかw”

“面白そう! 絶対見に来る!”

“面白がっていていいのか? かなり危険じゃね?”

“ドラゴンとの戦いが重大発表じゃなくて、モブが元の世界に戻る方が重大発表じゃん”

“モブはいなくなってもいいが、マリアンの配信見れなくなるのは嫌だ”

“もしかしたらドラゴンにやられるかもなんでしょ? それも嫌なんだが……”



リスナーさんたちが寂しい、心配といった、たくさんの言葉を送ってくれる。

本当に暖かい人たちだ。

俺がいなくなってもいいという意見もあったが。



“っていうかさぁ、マリアンもモブも、本当にそれでいいの?”



迷っている俺の心を見透かしたかのような、あるコメントが深く突き刺さった。


「わたくしは……わたくしは正直に言うと、自分でもよくわかりませんの。確かにマネージャーが元の世界に帰るというのは、わたくしにとってつらいですわ。彼が帰ってしまったら、スマホも配信も全てなくなってしまうということでしょ。こんなに優しいリスナーの皆さまとも、お別れしなくてはいけないなんて」


それは俺だって同じだ。

と言いたかったが、それは胸の奥にしまっておく。


「皆さま、今日までわたくしの配信【マリアンの部屋】をご覧になってくださり、本当にありがとう。皆さまに出会えたおかげで、伯爵令嬢としてのわたくしに見切りをつけることができましてよ。」



“ん? どういうことだ?”



「ドラゴンの配信が、最後の配信になるってことでしょ? 最後の瞬間に言えなかったら困りますもの。今のうちに皆さまにお伝えしようかと思いましたの。本当に、わたくしは、幸せでしたぁ!!」


「うっ」


真っ先に泣きだしたのは、セバスワルドとアルケナだった。


「どれが一番良い選択なのか、わかりません。それでも、ここまでそばにいてくれた皆さまには、感謝を伝えておきたいのです」



“ビビアン? モブに『行かないで!』って、はっきり言えばいいよ”

“俺が絶対にビビアンを守ってみせる!!”

“勝ってほしいけど、勝ったら配信はもうないんだよね……”

“でも負けたら生きてないんじゃ……?”

“くっそー、究極の選択じゃねーか!!!!”

“違うよ。どっちにしても最後になるんじゃね?”

“ヤバい、今夜は眠れそうにない”


「さぁ、ドラゴンと戦うために鍛えなくては! やりますわよー!! 皆さま、応援よろしくお願いしまーす!」



“おおおおお!”

“オー!!!!”



何なんだ、この明るい配信は。

俺はすごく重大な発表したんだぞ。

こんなノリでいいのか?


マリアンは、ぐちゃぐちゃになっている気持ちを、きっと押し殺している。


配信の最後にマリアンは、カメラに向かって

袖をまくって小さな力こぶを作ってみせた。


ヤバい、めちゃ可愛い。

くーーーーっ! やっぱ、俺のマリアン最高じゃん。




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