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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第3章 人気配信クエスト企画

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第45話 告白

 俺は流れるように話し始めた。


「実は、この異世界に転移した時、女神様に会ったんだ……」



“…………??  藪から棒に何を話してる?”

“キターーーーーー! これは、異世界転移・転生のテンプレじゃないか”

“本当に、女神さまに出会うものなんだ”

“愛の告白は……?”



「転移してきたときのお話?」


「今まで隠していたが、転移してきたときに、こんなことがあったんだ。

俺は気が付いたら、病院の診察室みたいなところで、女医のような女神様に会った」


「ジョイ?」


「そう、女医。自分は異世界召喚を司る女神だ、と言っていた」


「あなたの話は、これっぽっちも理解できません。少なくとも愛の告白というのは、リスナーさんの盛大な勘違いだったようね。

異世界召喚を司る女神? 何だかわかりませんけど、会えてよかったですわね。

その女神様は結局のところ、どうしてあなたを転移させたのかしらね?」


「そう! そこなんだよ、マリアン。それがな? その女神様が言うには、俺がこの異世界に転移したのは、女神の間違いだったって言うんだ」


「女神様の間違い……? あなたが私のいる世界に来たのは、神様の間違いだったというの?」



“なんだか、最悪なシナリオが思い浮かぶのだが”

“マリアンは、真実を受け止められないんじゃないか?”



「そ、そうでしたの……ね」


「違う人間を召喚するつもりが、座標の位置を間違えたとかで、俺になったんだと」



“やめろ、それ以上は聞きたくない”



「俺は、元居た世界に帰してくれと頼んだ。帰還する方法を説明してくれたんだけど……」


「何でそんなに楽しそうに話すの……?」



“なんで帰りたいんだよ。バカじゃね?”

“マリアンを目の前にしてよく言えるな”

“残酷……”



「それは、女神さまにも聞かれた。異世界に行けるのに、どうして帰りたいのかって。だって、俺の大好きなアニメの最終回が近かったし、推しのコンサートが当選してたから行きたかったし、その月のバイト代をまだもらっていなかったし」



“ヤバッ、モブの気持ちがわからんでもない。最終回は大事よ”

“ちなみに、推しって、何?”



「ヤキンノオワリだ」



“え? 当たったの? それ、なかなか当たらないよ”

“気持ちわかるわ。マリアンには悪いが”

“バカ! そうじゃないだろ。そんなことで帰るのかよ、だろ”



「なぜ、今になってその話をするんですの?」


「早く言いたかったんだけど、君は配信を楽しんでいるみたいだったからさ。渋ると思って、言い出せなかった。まさか、同じ考えをしていてくれたなんて思わなかった。」


俺は真っ赤な嘘をついた。

ここで俺が悪者になって、配信が終わる理由を全て俺に擦り付けてくれれば、リスナーさんはみんな、マリアンにつくだろう。

全身全霊で、マリアンを応援してくれる形で配信を終われる。


「えぇ……まぁ、そうね。わたくしへの話って、元の世界に戻るっていう話だったのね……」



“マリアン、かわいそう”

“モブ、最低”



「それを聞いて安心したよ。女神様によると、紙に描いてある通りに魔法陣を描いて、クリスタルを持って真ん中に立ち、呪文をとなえればいい、という話だ」


「ごめんなさい。元の世界に帰れる方法とか、どうでもいいわ。そもそも、自分でミスったくせに偉そうな女神様ですこと。まぁ神様だから偉いんですけど……」


「ところが、だ。あのドジな女神様が、またやらかしてさぁ」


俺は、わざと大げさに呆れたように言った。


「ふぅん、そう」



“マリアン、完全に興味なしだな”

“そりゃ、そうだ”



「女神様が、俺にクリスタルを手渡そうとした時……」


俺は頭を搔きながら、苦虫を嚙み潰したような顔を演じた。


「クリスタルが、女神様の手から滑って、雲の間から落ちてしまったんだぁーーー」


「へぇ、クリスタルが無ければ、元の世界に帰れないわよね。それは、よかった……じゃなくて残念でした」


「クリスタルは雲の上から、地上の高山へと落ちていった。そこにたまたまドラゴンがいて、大きくあくびをしているところだった」



“ベタな展開が思い浮かぶなぁ”

“これじゃ、帰れないってことか?”



「まさか、そのドラゴンの口の中に、クリスタルが落ちましたとか言うんじゃないわよね?」


「その、まさかだったんだ」



“これって、アニメか漫画の話か?”

“ベタすぎないか?”

“マリアン、話についていけてる?”



「……さすがに話についていけませんわ。彼はきっとギルドからの帰りに、疲労で倒れて頭を打ち、打ちどころが悪かったのかもしれないわ」


「魔法陣を描いた羊皮紙はここにある。あとは、ドラゴンを倒して、クリスタルを手に入れればいいんだ。女神様は言ったんだよ。自力で取りに行けと。

そして、俺にスキルを授けるところを、間違ってスマホに授けてしまった

と、いうわけなんだ」


俺は悔しそうに拳を握りしめて、演技を続けた。


「羊皮紙を出されたら、信じるしかありませんわね。それにしても、女神様はクリスタルを落としても知らん顔って、ひどくありません? 女神様のミスでクリスタルを落としたのに、責任は取ってくださらないの?」



“それくらい神の力でビューン、ヒョイ! って、何とかならなかったのか?”

“待て、スキルを間違ってスマホに授けたって言ってたぞ”



「話を最後まで聞いてくれ。女神様はもちろん謝ってくれた、……ような気がする。

だから、スマホに授けた【追尾】機能を使って、ドラゴンが住んでいる場所を見つけ出し、クリスタルを取りに行きなさいと」


「分かりました。あなたが最初から、ギルドへ行って冒険者登録したがったのも、体を鍛えて剣術を身に着けたのも、全ては、元居た世界に戻るためでしたのね。

わたくしのことはどうでもよろしいのね。あなたにとってのわたくしは、その程度でしたの?」



“そんなことはないと言え、モブ!”

“マリアン、モブがこっちに帰って来て、俺がそっちに行くから”

“入れ替わりを女神に頼まないとなw”



「……ところで、ドラゴンって強いのですか?」



“初めて、モンスターを討伐したばかりだもんな”

“マリアンが、他のモンスターの強さなんてわからないのは当然だよ”



「ああ、今まで俺が討伐した奴らよりも、何十倍もレベルは上だ。それこそゴブリンなんて比較にならない。かなりの強さになる」


「もし、ドラゴンにやられたら、死んでしまう……なんてことはありますか?」


「可能性は十分ある」


「そう……、それなら、その様子をスマホで配信させてください」


なんでそうなる!

俺の渾身のヘイト稼ぎを、マリアンは一瞬にしてぶち壊した。





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