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モブが愛したツンデレ令嬢~異世界配信したら最強のリスナーがついて助かってる~  作者: 白神ブナ
第2章 リスナーさん最強説

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第27話 スカッと花火炸裂

 スマホはジレーナを【追尾】しながら、配信し続けていた。

ジレーナは、リスナー先生と思い込んでいる機械が、ずっと自分を追いかけて来ることに気がついた。


「ちょっと、何あれ。あの機械、わたくしの部屋まで追ってくるってこと? キモっですわ!」


俺もスマホを追いかけた。

ジレーナは自分の部屋にリスナー先生を入れたくなかったのか、部屋へは向かわずに

階段をかけ降りて行った。



“お、これってお屋敷の中?”

“スゲー、マジで伯爵のお屋敷じゃん。格調高っけー!”

“面白い、異世界のお屋敷の中が見られる”

“貴重な映像、貴族の屋敷の中ばっちりです!”



ジレーナは、階段からエントランスへ向かって走って行く。

マズい。このままだと、ジレーナは外に出てしまうぞ。

外は、もう夜だ。

暗闇でお嬢様に何かあっては困る。


「誰かぁ、ジレーナお嬢様を止めてくれー!」


俺の叫び声に、セバスワルド、マリアン、アルケナ、ネッケナが走ってジレーナを追いかけ始めた。

この騒ぎに執事やほかの使用人も気が付かないはずがない。

執事に命じられて、ボーイたちまでジレーナを追いかけ始めた。


お嬢様のことだし、そんなに早くは走れないだろう、すぐ追いつくと高をくくっていた。

だが、それは誤算だった。

この、ジレーナお嬢様、意外に足が早い。

ドレスの裾を持ち上げながらも、必死にスマホから逃れようと走り続けている。



“外に出たのかな。暗くてよく見えない”

“このスマホ、マネージャーは持ってないよね”

“自動的に追っているのか、ヒュウ♪”

“ドローン撮影みたい”



暗くてよく見えないのなら、幸いだ。

ん? おっと、ジレーナは明るい方へ逃げていくぞ。

あっちは町じゃないか。

やばい、やばい、やばい、やばい。

夜の町へ向かったら、悪い奴に遭遇する確率が激増するじゃないか。

あの辺は、確か酒場と売春宿。お嬢様が行くような場所じゃない。

とにかく、早く追いついて止めなければ……



“まだ、アイテム使えそうだが、どうする”

“暗いから、明るくなるものがいいな”

“あ、花火があるけど”

“いいね。それなら、普通に花火の絵を押せばいいんじゃね?”



あと少しでジレーナに追いつく。

とにかく、ジレーナを止めよう。


その瞬間、


ヒュー―――


何? ミサイル?


突然、空に大輪の花火が開花した。


ドーーーン

パラパラパラパラ……


ジレーナは驚いて立ち止まった。


今だ、俺はやっとジレーナに追いついて、彼女の腕を捕まえた。


当たり周辺が花火の灯りで照らされ、景色が浮かび上がる。

驚きの表情のジレーナも、スマホで配信された。



“やったー! 見えた”

“妹ジレーナの顔を確認”

“いいぞ! どんどん上げろ”



「ジレーナ、家に帰ろう。こんなところにいちゃいけない」


俺はジレーナの手を引いた。

もちろん、この様子が配信されているのはわかっている。

だが、今優先するべきは、俺の事よりジレーナの身の安全だ。

ところが、ジレーナは茫然と前を見て動かなかった。


「ホジネオノ様?」


「バカか、こんなところに、あいつが居るわけがないだろ。しっかりしろ」


だが、ジレーナの目線の先には、確かに花火に照らし出されたホジネオノの姿があった。

しかも、彼の横には知らない女が寄り添っている。

ジレーナは、黙っていられない性格なのか、ホジネオノに向かって声をかけた。


「ホジネオノ様?! ……ですわよね」


ホジネオノはまずい現場を見られたとでも言うように、誤魔化しはじめた。


「いえ、人違いでは……」


かなり動揺している。

一緒にいた女は、何故お嬢様に声をかけられたのか、理由もわからずにホジネオノにべったりだ。


「ホジネオノさま~、きれいな花火ですこと。ご覧になって」


「いや、その、違うんだ」


これは、よく浮気がバレた時に使われる定番のセリフだ。

この男、マリアンからジレーナへ乗り換えただけでは飽き足らず、夜の町で他の女と遊んでいたのか。

最低だな。



“ちょっ、この男って誰だ?”



俺は、空中に現れたスクリーンに速攻でコメントを入力した。



“この男、マリアンの元婚約者で、ジレーナの現婚約者です。

夜の町で他の女と遊んでいるところを、偶然見つけたところ。

俺は、こいつが許せねえんだが……”


“モブか、いいぜ。俺たちも同意見だ”

“同じ花火で祝福してやるのはしゃくだな”

“違うタイプにする?”



そこへ、ようやくセバスワルドとボーイたちが追い付いてきた。


「ジレーナお嬢様、お屋敷に戻りましょう。おや? あのお方は」


「セバスワルド、わたくし悔しい…。ホジネオ様! 隣にいるのはどこの女よ!」


「ジレーナ、待て、落ち着け。この女は何でもないんだ」


すると、ホジネオノにべったりと寄り添っていた女がわめきだした。


「はぁ? 何でもないって、どういうことよ。あんたさぁ、あたしとは遊びじゃないよ本気だよって言ってたじゃない」


「あんたなんか、遊びに決まっているでしょ! この、あばずれ女」


「なんだって? どこのお嬢様か知らないけどさ、ガキはお黙り!」


「ガキですって? よくも……」


すると、

花火が再び上がった。今度は連発だ。

修羅場の様子は、画面に明るく映し出された。

花火のうちの、何個が高音を鳴らしながら、こっちに向かって来た。


ピューーーーーーーーーーー


この音は……、


「レジーナ、危ない! あの木の下へ逃げろ」


俺はジレーナを突き飛ばした。


パーン! パーン!  パパーン!



“浮気男に命中! ロケット花火”

“グッジョブ!”



「あっつ! 熱い! 何だ何だ! 髪が、服が……、真っ黒焦げ。何だ、これは、敵国からの攻撃か?」


「キャー―、あんたといたらヤバい奴に狙われるわけ? そんなのまっぴらごめんだわ」


「おい、待て。これは何かの間違いだ」


「ええ確かに。ほんと間違いだったわ。あんたと付き合うなんて……、もう二度とあたしの目の前に現れないで! さよなら!」


「おい、おい!」


花火を見に来た町の人々も、この修羅場の目撃者になった。



「あきれた。サットガ侯爵の三男坊でしょ。あれ」


「言っちゃあ悪いが、頭悪そうだな」


「最近、オラエノ伯爵の姉妹を乗り換えたばかりじゃないの」


「おー、やだやだ、あんなの女の敵だよ」


「このご様子じゃ、オラエノ伯爵の耳にも入るだろうねぇ」


「かわいそうに、姉妹そろって破談だろ、これ」



 セバスワルドは木の下に逃げたジレーナを、町の人たちの目から守るように、庇いながら屋敷へと連れ帰った。


何も事情を知らないマリアンは、今ごろになってやっと追いついてきて、キョトンと立ち尽くしていた。


「一体、何がありましたの?」


俺は、錯乱状態になっているホジネオノと、噂好き見物人を見せないように、マリアンの前に立ちふさがった。


「な、何でもない。さあ、帰ろう」


「配信は?」


「あ、いけね。忘れてた」


俺は手を伸ばして、スマホを取った。


「マリアン、今日の所はこれで、配信終了だ」


「あら、まだリスナーさんに、ラストのありがとうを言っていないわ」


「それは、俺からメッセージ送っておくよ。早く帰ろう。ジレーナも相当疲れていると思うよ」


俺は、歩きながらメッセージを入力した。



“『マリアンの部屋』をご覧の皆様、今日も見に来てくださりありがとうございます。

本日のスカッと企画に、ご協力いただきまして、マリアンの配信スタッフ一同とても喜んでおります。

尚、この企画はヒートアップしすぎ、これ以上は危険と判断いたしました。

急ではありますが、ここで配信を終了させていただきます。

またのお越しをお待ちしております。モブ”



「ジレーナは大丈夫かしら」


「明日になれば、いつもの元気なジレーナに戻っていると思うよ」


「だといいんですけれど…」


あんなに仲が悪いくせに、マリアンはやはりお姉さんなんだな。

優しいんだ。

ついでに、俺にも優しくしてくれ。


「マリアン、悪かったな。ちょっとやり過ぎた。まさかこんな結果になるとは思わなかった」


「……何を気にしていますの?」


「一応な」


「あの金タライのことなら、わたくし、スカッとしましたけど」


え? 妹を心配している姉って、あれは演技じゃないよな。


「帰りましょう。モブさん」


マリアンは鼻歌を歌いながら、軽やかにスキップして屋敷へと向かった。

お前な―、お前のために気を使って、ホジネオノの惨状を見せなかったんだぞ。

俺の苦労も知らないで、まったく呑気なもんだ。



お読みいただきありがとうございます。

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