著者:大吾 「ドイツ語を勧める彼女」
理系大学生カップルの千里と正吾はこの日デートに向かう。
朝。千里は行きの電車の中で正吾に会った。
千里「おはよう」
正吾「おはよう」
千里「何読んでいるの?」
正吾「中国語の課題プリント」
千里「へぇー、正くん第二外国語は中国語なんだ」
正吾「そうだよ。受験で漢文勉強したし、少しは勉強しやすいかなって思って」
千里「うーん。どうせニ外を履修するなら、自分が全く親しんだことのないのにするべきじゃないかな。ドイツ語とか」
正吾「ドイツ語かぁ……。僕、全然興味ないし将来役立つ感じがしないんだよなぁ」
千里「そんなことないよ。理系なんてドイツ語由来の言葉ばっかりじゃん」
正吾「そう?」
千里「有名な学者さんドイツ語で表記されることが多いじゃん。正くんの好きなシュレディンガーとかさ」
正吾「別に好きじゃないけど」
千里「第一さ、漢文の知識使って中国語勉強しようなんて考えが甘過ぎじゃない? 理系大学生として恥ずかしくないの?」
正吾「それはぁ……」
千里「二外で最も有用性があるのはドイツ語だよ! それを学ばずして理系大学生名乗れるの?」
正吾「名乗れる!」
千里「まぁ、なんてことを……。正くんがそんな意固地な人だなんて思わなかった。わたし、ショック」
正吾「ごっ、ごめん千里ちゃん。わかったよ。僕も少しはドイツ語に触れてみるよ」
千里「よかったぁ。ドイツ語はちょっと難しいよ」
正吾「でも千里ちゃんがそこまで言うなら勉強する価値はあるんだろうね」
千里「うん。ドイツ語はきっと正くんの知識財産となるよ」
正吾「ホント? なんだかワクワクしてきた」
千里「それじゃあ、ドイツ語勉強してくれる?」
正吾「もちろんだよ」
千里「メルシーボクー」
正吾「それじゃあ千里ちゃんドイツ語教えて」
千里「わたし二外フランス語だから無理」
正吾「あっ、そうなの……」
その間、電車は目的駅へ着いた。