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「小山田さん、美香に会ったって?」
杉田課長が、ぼそっと耳打ちしてくる。私も改めて、こくりと頷いた。
「とてもお美しい方でした」
「ああ。あいつ、ミスキャンパスになったこともあるからな」
ええ! まじか。すげー。
「杉田課長もお知り合いなんですか?」
ピンポーンとチャイムが鳴って、待っていたエレベーターが来たので、一緒に乗り込む。
1階のボタンを押した。
「まあね。今でも病院の受付してるんかね? でもとにかくあいつには気をつけた方がいい」
「なんでですか?」
「最初、坂崎にお熱だったんだけどな、有力候補だからっつって若狭に乗り換えたんだ」
えええー。ここにも性悪の存在が!?
「いや! でも俺ら誰もあいつと付き合ってないからな。安心してよ。みんな相手にしてなかったから」
「でも坂崎課長の元カノって豪語してましたが……?」
「ないない。1ミリも付き合ってないから。いつまで経っても治らねえなあ、あの妄想癖は」
ゔ。(←他人のことは言えない妄想癖あり。でも人には言ってないからセーフ( ´∀`))
「まあ小山田さんはさ、気をつけた方がいい。あいつ、時々粘着だからさ」
「私のようなしがない透明人間を、何らかの相手にすることもないでしょう。大丈夫です。しがないぺんぺん草ですから」
「小山田さんはしがなくないよ」
ずいっと杉田課長が近づいてきて、壁をどん。エレベーター内なので、ぐらっと揺れた。
「わかってないなあ、小山田さんはあ。俺が手取り足取り教えてやりたいよ」
さらにぐいっとくる。杉田課長の顔が被さるように、顔が近付いて。だがしかし、そこでピンポンとチャイムが鳴って、1階に到着。ドアがウィーンと開いた。
そこに坂崎課長の姿が。
「え!! 何やってんの!! 杉田おまえ小山田さんに近づき杉田!!」
「おいおいテンパるな。俺はただ小山田さんのつむじを観察してただけだ」
「おま!! そんなこと言って、つむじ日記でも書くつもりか!? 小山田さんのつむじは誰のものでもない、離れろっ」
ぐいぃぃっと、坂崎課長が横入りしてきた。ドアが閉まる。私がそっと『開』を押し、ドアがやれやれといった感じで開いた。
「それでは失礼しまーす」
二人の横を通り抜ける。エレベータを降りようとしたら、前に壁があり、バンッとぶつかった。
「うっぷ」
「うわっごめんごめん。降りるとこだった?」
取引先から帰ってきた若狭社長だ。
「申し訳ございません。私、これにて1階で、」
と。
だがそこでドアが横から勢いよく閉まり、そのまま両肩にバンッ。
「あ、はさまっ、へ! 痛っっった」
「大丈夫か!」
「小山田さんっ危ないっっ」
ドアが再度、両横から迫ってくる。




