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「まさかと思っていたらまさかのことが起こってしまった! 小山田さん、これどうしよう!」
土曜日、繁華街にて。ファイブレグッズ限定販売に並ぶ列列列。早めに来たと思ったのに……すごいな。
「坂崎課長、大丈夫です。想定内です」
肩を並べて最後尾に立つ。すると、小山田さんは大きなバッグから小さな畳めるイスを二つ出して、俺にもどうぞと。
「ありがとう。用意周到だね」
「もちろんです」
次に日傘を出して、パンと開く。そして、俺たちの頭の上にかかげた。
「小山田さんが入ってないよ。もう少しくっつこう。俺が傘持つよ」
ザリザリと音をさせながら、イスをずらした。肩と肩とが触れるか触れないか、ぐらいの距離。
なんとなく嬉しい。
食事会だったはずなのに、なぜこんなグッズ限定販売に並んでいるのかって?
それは話すと長くなる。が、要は小山田さんが誘ってくれたのだ。(←要約)
『お疲れ様です。課長、今度の土曜日ですが、ファイブレお買い物DAYで、テント出すそうなんです。良かったら一緒に行きませんか?』
食事はいつにする? とのお誘いの文句が、先を越された感は否めないが、やったあこれは言い換えれば、『デート』ってやつじゃないか、と。
飛び上がってしまった。歓喜。
「飲み物もあります。おい!お茶! ですが、緑茶って飲めますか? あ、チョコありますよ。UNOもありますので、やりたくなったら言ってください」
カバンから出てくる出てくる。しかし、この状況でUNOやりたくなる時って来るのかな。
肩を寄せ合って、お茶を飲みながらゆっくり話をする。
これは縁側に座って喋る、ほっこりなおじいちゃんおばあちゃんじゃないか? ね?
俺たちの未来の暗示だったりして。(←深読み)
「課長、今日は結構強引にお誘いしてしまいましたが、グッズ販売なんて、興味ありますかね?」
「もちろんあるよ。ファイブレ大好きだからね。でも小山田さんに謝らないといけないことがあって。俺……」
「実を言うと、ひとりっ子なんだ」
「え?」
驚いている。そりゃそうだ。
「前、姉がいるって言ったことがあると思うんだ。でもそれはその……口が滑ったっていうか……」
嘘をついてしまったわけだから、とても言いにくい。でも小山田さんにアタックするのに、変な障害がない方がいいと思って。




