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86/202

*1

(そりゃずっと推し活してた男に会えるんだもんな。オシャレするはずだよ)


はあ。深いため息が出た。


コンタクト、メイク、そして極めつけはストッキング。いやいつも制服に靴下だからね。


ん? ストッキング? ち、違う! そんなエロい目で見てるわけじゃないから!(可愛い変態)


ほんのりピンクのリップまでしてる……。

可愛いけど。可愛いけどね。


複雑。


「おい坂崎。俺はお前の心が、めっちゃ読めるぞ」


背後から杉田の声が聞こえてきた。


「どーせ、レンジくんより俺の方がかっこいいに決まってる、小山田さん、ちゃんと曇りなきまなこで見比べて、ジャッジしてくれ。などどアフォなことを考えているんだろ?」


「なに言ってんだ。芸能人に勝てるわけないだろ?」


「まあな。大丈夫だ。お前ならフラれてもすぐ次が見つかるから。俺が紹介してやってもいい」


「フラれてないからまだ」


そう。まだだ。これからアプローチするんだからな。『それファイ』の撮影が終わって現実に戻ったら、また食事に行く約束もしてるし。もっとぐいぐい行くつもりだ。


だが。


「なあ杉田」


「んー?」


「俺って、人間としてどうなんだろう?」


弱音が出てしまう。だって気づいてしまったんだ。


「どうって……おまえもしかしてそこまで自信を無くしてんのか?」


「ああ。人として最低最悪な人間なのかもしれない……」


「ちょ待て待て待て。小山田さんとなんかあったのか?」


杉田がぐいっと俺の首に腕を回してきて、顔を近づけてきた。そうか。ここだと、みんなに聞こえてしまうからな。かばってくれたのか。悪いな、杉田。


杉田に引っ張られ、少し後ろへ。オフィスの隅。ここなら誰にも聞かれまい。


「今日な。コーヒー入れて席に戻る時にな。俺、小山田さんの席の横を通ったんだよ」


「まあ位置的に直線だからな。で?」


「その時にな、無意識に。あーあ、ファイブレなんか来なければ良かったのに……って言っちまったんだよ」


「なんでそんなこと……それって小山田さんは?」


「聞こえてたと思う。俺もなんでそんなこと言ったのか、自分でもわかんないし、小山田席にはなんかブラックホール的な何かがあって、俺、今までも愚痴や悪口を呟いていたかもしれないんだよ」


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