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(そりゃずっと推し活してた男に会えるんだもんな。オシャレするはずだよ)
はあ。深いため息が出た。
コンタクト、メイク、そして極めつけはストッキング。いやいつも制服に靴下だからね。
ん? ストッキング? ち、違う! そんなエロい目で見てるわけじゃないから!(可愛い変態)
ほんのりピンクのリップまでしてる……。
可愛いけど。可愛いけどね。
複雑。
「おい坂崎。俺はお前の心が、めっちゃ読めるぞ」
背後から杉田の声が聞こえてきた。
「どーせ、レンジくんより俺の方がかっこいいに決まってる、小山田さん、ちゃんと曇りなきまなこで見比べて、ジャッジしてくれ。などどアフォなことを考えているんだろ?」
「なに言ってんだ。芸能人に勝てるわけないだろ?」
「まあな。大丈夫だ。お前ならフラれてもすぐ次が見つかるから。俺が紹介してやってもいい」
「フラれてないからまだ」
そう。まだだ。これからアプローチするんだからな。『それファイ』の撮影が終わって現実に戻ったら、また食事に行く約束もしてるし。もっとぐいぐい行くつもりだ。
だが。
「なあ杉田」
「んー?」
「俺って、人間としてどうなんだろう?」
弱音が出てしまう。だって気づいてしまったんだ。
「どうって……おまえもしかしてそこまで自信を無くしてんのか?」
「ああ。人として最低最悪な人間なのかもしれない……」
「ちょ待て待て待て。小山田さんとなんかあったのか?」
杉田がぐいっと俺の首に腕を回してきて、顔を近づけてきた。そうか。ここだと、みんなに聞こえてしまうからな。かばってくれたのか。悪いな、杉田。
杉田に引っ張られ、少し後ろへ。オフィスの隅。ここなら誰にも聞かれまい。
「今日な。コーヒー入れて席に戻る時にな。俺、小山田さんの席の横を通ったんだよ」
「まあ位置的に直線だからな。で?」
「その時にな、無意識に。あーあ、ファイブレなんか来なければ良かったのに……って言っちまったんだよ」
「なんでそんなこと……それって小山田さんは?」
「聞こえてたと思う。俺もなんでそんなこと言ったのか、自分でもわかんないし、小山田席にはなんかブラックホール的な何かがあって、俺、今までも愚痴や悪口を呟いていたかもしれないんだよ」




