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「しかし、お前よく了承したな」
杉田課長がハイボールのグラスを傾けて、氷をカランと鳴らす。それに呼応するかのように、若狭社長が残ったワインを飲み干した。
「ん。実はさ、戦略的にもうそろそろ芸能人と契約して、CMを打ってみようと。SNSは使いたいと思ってたんだよね」
「予算高いぞ。どっから出すんだよ」
坂崎課長、うちの会社の財政を知ってるようだ。
「まあな。うちの実力じゃ、まだ契約料が高い芸能人は使えねえよな」
「そうだな。でもまあ今回は棚からぼたもち的な。向こうから来てくれて、まじでありがたいな」
「ほんと。小山田さんの功績だよな」
「いえ、私は別に何も……インスタ載せてくれた、ぶり……っっっみなさんのお陰ですし」
あぶね。
「なんでも好きなの頼んでいいからな。ここは若狭が払うから」
若狭社長が、胸ポケットから財布を出して、バチっとウインクする。カッコいいな。
「ありがとうございます。では遠慮なく。すみませーん、もつ鍋と和牛ステーキと握りをください」
ああもうこのメンツ緊張するう。私、なんで来たん? 流れで? 知らないうちに誘導されていたっていうね。うん。それだ。
「いやまあ今日は仕事の話は無しってことで」
「だな。今日の飲み会は坂崎のために開いたもんだからな」
「お、おい!」
坂崎課長が少し焦っている。珍しい。
「聞いてよ、小山田さん。こいつ、木曜日さ……」
「もうお前は喋るなっっ」
坂崎課長が、杉田課長におしぼりを投げる。それをひょいと避けて、杉田課長は笑う。
「いやあだってさ、小山田さんとの食事がなくなってめっちゃ落ち込んでてさ」
「杉田っ」
私はハッとした。
「あ、坂崎課長。申し訳ありません。課長との食事をお断りしてしまったのに、私、今日……」
坂崎課長は、両手を挙げて横にフリフリしながら、
「そんなの別に大丈夫だから気にしないで。おい杉田! お前のせいで小山田さんが気にしちゃったじゃないか」
「悪い悪い」
くくくっと笑う。
「なんだそういうことだったの? なんかいやに杉田が誘ってくるなあって思ってたよ」
若狭社長が、おねーさーんと手を上げながら、言う。




