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77/202

*2

ここは給湯室。世界の秘匿会議は常にここで行われているということを、俺は知っている。


夕方5時過ぎて、ぶりっこ軍団はすでに帰宅。営業の面々もコンパだ麻雀だパチンコだと言いつつ、ほぼ帰っていった。


だから、そんなに周りを気にすることもないのだが小山田さんが、少しそわそわしている。


「すみません。今日は早く帰って、ファイブレグッズを揃えなくてはいけないので……」と申し訳なさそうに言うから、俺は落胆した。


「でも夕ごはん一緒に食べるって約束……」


「はい。それは申し訳ないです。でも月曜日のファイブレ来訪に備えて、やるべきことをやっておきたいんです。全力を出し切りたいんです」


小山田さんは真面目だ。仕事にもプライベートにも手を抜かない。


って言うか、まあそうだろうな。あのΦブレインに会えるんだぜ? こんなチャンス、一万光年生きてもそうそう巡ってはこないだろう。


でもな。俺だって小山田さんとの一緒の食事、楽しみにしていたのに。せっかく杉田の力を借りて、ここにまで辿り着けたというのに。


「わかったよ」


だが俺は引いた。ここで強引に誘っても、きっと『課長ってば権力を傘にしてサイアクぅぅ』となるに違いないからだ。


「じゃ来週、ファイブレ祭りが終わったら、また誘ってもいい?」


「……はい」


俯いてしまった。反応は鈍い。ええ! もしかして俺との食事会は嫌なのかな。だとしたら、すげー辛いんだけど。涙がじわりと滲んできたが、ここで泣くわけにはいかない。


ただ。反応ってことで言えば、小山田さんのこの冷静さは、ちょい違和感があるな。だって、推しに会えるんだよ? なんでこんなに落ち着いていられるの?


俺だったら、そこら辺をのたうち回って悶絶してると思う。嬉しさを噛み締めて、さらにスルメのように噛み締めて、幸せだーーうおお!! って叫んでいると思う。


ってか、じわじわくるな。え? まじで? うちの会社にファイブレ来るの? しかも我が営業2課に!?

まだ信じられない。ほっぺをつねってみよう。痛いっっっ……これは現実だ。サインを貰おう。で、写真。できたら動画。一緒に映ることができるなら、すぐにプリントアウトして、そこにサインを貰おう……ちょ待っ嘘でしょ!! ファイブレ来るのまじか!! 


って俺、無表情に保ってはいるけど、中身はちょい興奮しちゃってるからなあ。


「それでは課長、お疲れ様でっっっす。お先に失礼しまっっっす」


小山田さん、浮かれ方が地味〜。

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