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「頼む!! 杉田にしか頼むヤツがいないんだ」
「いやまあ俺で良ければ……」
驚いた。坂崎が急に、「おい今夜は飲みに行くぞ」と言う。俺が、「えらい急だな。けどいいぜ。若狭も誘うか」と言ったら、「若狭は誘わない。おまえと二人きりがいい」
は?
どした? 坂崎。なにがあったんだ?
『酒房 なにやってんねん』に着いてから、生ビールを注文。だが飲む前に、坂崎からこんなことを言われた。
「杉田。これから俺の言うことをよーく聞いてくれ。俺はこれからどうしたらいい?」
は?
どした? 坂崎。なにがあったんだ?
「うーん。そうだなあ。とりあえずだけど、まずは告れば?」
「はあぁ?? おま、なに言って……見当違いなことを言うなよ!!」
見当違いだったか。
「じゃあ、明太ジャガバタにしたら?」
「もちろんそれは注文するけど……惜しいけどそうじゃないんだよな」
惜しいのか。
「じゃあ、いったいなんのことで悩んでるんだ?」
「杉田、頼む!! 俺に恋愛のノウハウを伝授してくれ」
惜しくない。
「へあ?」
「頼む!! 杉田にしか頼むヤツがいないんだ」
「いやまあ俺で良ければ……」
「ありがとう。これで首の皮一枚つながった気分だよ。助けて欲しい」
「具体的には?」
「ああ。まずは好きな人にどうやって声をかければいいのか、ご教授願いたい」
そこからか。
俺は呆れてものも言えずにいた。
坂崎が、カバンからさっとノートを取り出しスタンバイする。さあ、どんとこいみたいなその瞳で、俺に圧を与えてくる。おまえは学生時代から、そうだったんだ。なんら変わってない。
これはもう、誠実に伝授するしかないのか?
「あえっとまずはだな……」
「ふむふむ」
「スマホ出せ」
「『スマホを出す』と」メモメモ。
めんどくさ。
「いいから早くスマホ出せ」
「おう」
坂崎が胸ポケットからスマホを取り出して、顔認証する。顔キメんでいい。
「LINEを開け。で、デートしたい人のやつ」
「おおう」
「『こんばんは。元気? 実はね、ちょっと相談したいことがあってね。良かったら話を聞いて欲しいんだけど、どうかな? ◯◯◯さんの……(伏せ字だが検討はついている)都合がつけば、夕飯一緒にどうかなと思って』……て打った?」
「打った」
はい送信。




