営業2課坂崎課長の怪しげな行動 おかわり3杯め
なあ、これはチャンスではないか?
このライブで小山田さんとの距離を縮めたい。
そう思うのも仕方がない。俺はすでに小山田さんに好意を持っているから。
隣に並ぶ小さな頭。つむじ。
「あのさ、小山田さん。会社の上司とライブだなんて、小山田さんのか、彼氏、怒ってないかな?」
巧妙な手口で、相手の腹を探る。
『愛の成就ムック』にもそのように記載があった。
俺は封印していたこの本を、久しぶりに開き、頭に叩き込んだ。
まずは恋人の存在確認が重要だ。
あまりやり過ぎると、コンプラ違反になるので、ここは慎重に進めていかねばなるまい。
「へ? 課長、私に彼氏なんかいると思いますか?」
あれ。あっさり判明。今までのドキドキと苦労はいったい。
「いるかなーーって思ってたけど、へーー小山田さん、恋人いないんだ」
「いるわけないですよ」
「ふーーん。俺もいないよ」
あざとアピール。直接すぎたか?
でもスルー。
??
だが、ここは押さえておかねば。
「杉田は彼女いるみたいだけど」
「もちろんそうでしょう」
「でも俺はいない」
しーん。静寂。沈黙。なんも返してくれない。まさか俺に興味なし?
「若狭は最近、別れたらしいけど」
「えーーー!! 嘘ですよね、若狭社長のどこが気に入らないんですかっての」
「だよね。あんな優良物件、なぜに別れるとか。でも俺は彼女いないけど、もし付き合うことになったら、彼女のことすごく大切にするし、絶対に別れないよ」
「はあ」
反応うすーーー!! 確かにいい彼氏アピールウザかったかもしれないけど。
もう少し食いついてくれても。
落ち込んでいたその時、前でならんでいた五人ぐらいの若者たちがおどけて遊び出した。そして、俺らの列にしなだれかかってきて、小山田さんに、どんっとぶつかってきた。
「小山田さん、こっちに」
小山田さんの肩を抱き、ぐいっと俺の元へ。ぶつかってきた男を睨みつけると、「すいませんす」と言って、さっさと元いた列に戻っていった。




