表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/202

営業2課坂崎課長の怪しげな行動 PART2


トイレで雄叫びを上げたのち、私はホクホクしながら、廊下へと踊り出た。

ってか勝手に踊ってしまう〜

鼻の下が伸びてしま〜う

帰りに特別にホンモノのビールでも買って帰っちゃおう〜


と、中身はこうだが、冷静な態度を装って、何事も無かったかのようにスタスタと自分の席へと戻った。


と?


坂崎課長(仮犯人)がいらっしゃらない。外回り予定表を見ると、サイワイ商事へと向かったようだった。


うちの会社は基本、営業と営業補佐とがバディを組み、二人一組で営業活動に行く。

だが、私は営業には行かない。私はこの営業2課では、たった独りの孤独な、事務処理班(班とはいえ構成員は1人)なので、営業から届けられる契約書や領収書、請求書など書類を揃えてから経理課に流したり、総務課に備品の調達を頼んだり、あれやこれやの書類の整理などの仕事をしているからだ。


華の営業とはかけ離れた、地味めな仕事。


どれどれ? 社員のスケジュールを見ると、なるほど坂崎課長は、営業補佐の女性社員、田中さんと出かけたようだ。


(田中さんってば、課長の補佐役GETに二週間も下ごしらえしてたからなぁ。今頃ホクホクで帯同してるんだろうな)


このように課長はモテる。まあもちろん頭は切れるし営業の成績は特上うなぎ、しかも顔が良いときてたらねえ。

課長の顔?

ええ、とにもかくにも、まず鼻が高い。チョモランマのごとく顔面の真ん中にそびえたっている。薄茶の瞳は中世の王子さまかと思うくらいにキリッと二重だし。くるくるとカーリーな黒髪は、エキゾチックな雰囲気を醸し出しているし、とにかく日本人離れしたお顔なんです。


対する田中さん。


田中さんは、御歳29歳のお局的存在の女性社員。坂崎課長に狙いを定めている、いわば『獲物は坂崎課長』ハンターグループの中心的存在。


この件に関する坂崎課長の情報ガチャを引いてみると。


『坂崎課長は、田中さんのあまりにしつこいアプローチに辟易していて、こっそり『飢えた女ハイエナ』と呼んでいる』


いや、これはもちろん公に言ってるわけではない。田中さんに面と向かって、「あんたはハイエナだ!! いや、ハイエナ以下だ!!」と言うのはさすがに酷というものだ。


じゃあ課長がこっそりつけたあだ名を、なぜこのわたくしめが知ってるかって?


それは私のデスクの横を通るとき、課長がそう呟いているからに過ぎない。


「しつこいなあ田中さんのアプローチ。うっとーしい。あれはハイエナだ女ハイエナ」


ってね。


あっと、坂崎課長と田中さんが帰ってきた!


「さかざきぃ、たなかぁのペア⤴︎⤴︎♡戻りましたあぁ〜ん♡」


田中さんがでっけー声で『ペア』の部分を強調して楽しそうに叫ぶ。アピールがすごい。


田中女史は頬を染めてぽわわんで、足も床から3センチほど浮き足だっているみたいだけど、坂崎課長はいたって冷静、いつもの鉄面皮を貫いている。


坂崎課長が、荷物をデスクに置いてから、私の方へさっさと移動してくる。


「小山田さん、これ今日の領収書。清算よろしくね」

「はい、承知しました」

「あとこれ契約書」

「お疲れ様でございます」


のやり取りの前にも、私のデスクの横。

小声で、「ペアアピール痛てえな、ハイエナめ」と、のたまってたから、ね。(ってか私ってば透明人間的扱い?? 自分、頭から悪口かぶってるぅ)


すげえな。悪の言葉が声に出ちゃうって、相当だよね。ってか、坂崎課長の心の声をはからずも拾ってしまう、私の耳がすごいんかな?


もしかして私なんかに聞かれていたとしても、こんな地味で道端に生えてるペンペン草程度のわたくしめなら、悪口垂れ流しても大丈夫かと、タカをくくっているのかもしれない。悪口言い放題、王様の耳はロバの耳〜の『穴』のような存在……(←低すぎる自己肯定感)


ま、いーけど。課長がすたすたと戻っていくのを確認し、領収書に目を落とす。すると……


あれれ?

なに?

目が。

目があ。

目があぁぁぁあ!


……。


目がおかしくなったのかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
小山田さんの語り口が クセになりつつあるσ(゜∀゜ )オレ 情報ガチャ これもジワる。 さぞかし大量の小ネタをお持ちでらっしゃるんだろうな、と、妄想しとります。 で、最後、ムスカ大佐になっとるぅう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ