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「ファイブレのライブ、行きたかったなあ」
俺はその夜、家でヤケ酒していた。2枚購入してねって言ったのに、どうして小山田さんは購入してくれなかったのだろうか。
もしかして俺、嫌われてるのか?
完全に?
『愛の成就ムック』をパラパラめくる。
『もし相手が冷たい態度をとってきたら……
その時は諦めましょう』
参考にもならん。
俺は本をぽいっとベッドの上に投げた。
嫌な脱力感に見舞われる。
すると、ティトティトと着信音。
「はい」
電話越しに、方言丸出しのでかい声が響く。
『あんた!! この前のふぁいぶれいんのライブ良かったやろ? 次のライブなんだけどな、母ちゃんまた孝子の入院で、かどやを手伝わにゃいけんくなったもんでな』
孝子さんは俺の叔母さんで、かどやは孝子さんが旦那さんと営んでいる食堂だ。
「え? また?」
デジャヴ。
「それで孝子さんは無事なの?」
『あんた、信じらんかもしれんけど、今度は、電車とぶつかっちまってなあ』
「ええ!? 大事故じゃん!! それで容体は? 大丈夫なの?」
『大丈夫大丈夫。孝子な、ヘアサロンに電車で行く途中にな、電車に駆け込み乗車して、そのまま車内にスライディングしちまってな。向こう側のドアにゴロゴロガツンってな。そんなわけでな、チケット要らん?』
孝子さん……。
それより!!
「いるいる!! 今度の市民会館のやつだよね!?」
『そーそー』
「欲しい!! じゃあチケット、」
途端にスマホがシュポっと鳴った。
『電子チケット送っといたでな』
プツンと通話が切れた。
「まじかー。俺の日頃の行いが良いから……神さまありがとう」
感動で胸がいっぱいだ。これで小山田さんと、ファイブレのライブが楽しめるぞ。
「次は変装しなくても良いよね」
すぐにLINEした。




